ここから本文です

日本勢の勝機は? 英高速鉄道「HS2」の全貌

7/29(土) 6:00配信

東洋経済オンライン

 ドイツやフランスをはじめとする欧州の主要国では大都市間を結ぶ手段として、高速列車が広く使われている。一方、鉄道発祥の国・イギリスでは高速鉄道網の開発が遅れており、ようやく2020年代後半になって国内の主要都市間を結ぶ列車が走る見込みだ。

この記事の写真を見る

 政府で高速鉄道建設の構想が出てから約10年余り。紆余曲折を経て、このほど敷設ルートが決定した。設計速度が時速400kmとされる新たな高速鉄道網とは、いったいどのようなものなのだろうか。

■新たな高速鉄道の名は「ハイスピード2」

 英国には「ハイスピード1(HS1)」という高速専用線がすでに開通している。ロンドン・セントパンクラス駅と英仏海峡(ドーバー海峡)をくぐる「ユーロトンネル」の入り口を結ぶ全長109kmの区間で、設計上の最高速度は時速300km。ロンドンとパリ、ブリュッセルなどを結ぶ国際特急「ユーロスター」をはじめ、ロンドンとイングランド南東部のケント州各地を結ぶ「サウスイースタンハイスピード」の列車が走っている。

 一方、現在計画が推し進められている高速鉄道は「ハイスピード2(HS2)」と呼ばれる。1期工事では2026年までに、ロンドン・ユーストン駅とイングランド中央部のバーミンガムの間を結ぶことになっている。その後、2033年開通を目指して2期工事が着手される。今月になって内定した敷設ルートは、1期工事の終点となるバーミンガムから北方向にY字状に分かれる。東側はマンチェスターへ、東側はリーズへと延びるほか、シェフィールドへの枝線も作られることなった。

 HS2を走る列車は高速専用線の上だけを行き来するわけではない。専用線の先端は在来線と接続し、列車は英国北部の各都市まで直行する計画となっている。英国では高速線も在来線も軌間が同じなので、在来線用の信号システムや集電装置などを搭載すれば高速車両の乗り入れ範囲は大幅に広がるわけだ。非電化区間も走れるようディーゼルエンジンを搭載したバージョンを造るとの計画も一部でささやかれている。

 HS2の1期工事で完成予定のロンドン・ユーストン-バーミンガム間は現在、西海岸本線を走る仏アルストム製の振子車両「ペンドリーノ」が82~85分で結んでいるが、HS2完成時は45分程度で走破する見込みである。しかし、2012年1月に国会で1期工事の計画が承認されて以来、反対派は「たかだか40分ほどの短縮のために、巨額なコストと重大な環境破壊を行ってまで造る価値はない」といった主張を展開している。また、英運輸省は「HS2敷設で保有する不動産に影響を受ける市民には、補償金として資産価値の110%分を支払う」としているが、建てたばかりの住宅団地が取り壊しの目に遭うことが決まったといったケースもあり、今後の用地取得がスムーズに行くかどうかは未知数だ。

1/4ページ

東洋経済オンラインの前後の記事