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ウインドサーフィン・新嶋莉奈 17歳「オリンピックを目指すのは“洗脳”に近いのかも(笑)」

7/29(土) 8:50配信

週刊SPA!

「練習以外の時間は、学校の友達とひたすら食べています。ホットケーキとか好きですね。今、パンケーキが流行っているじゃないですか。食べながら、ずっとしゃべっているかな。“彼氏、欲しいね~”とか。女子高だから、会話なんてそればっか! でも、この環境だと全然できないんですよねぇ。タイプですか? もうなんでもいい。……なんでもいいってことはないか(笑)。でも、恋愛とかしたことないから想像がつかないんです」

⇒【写真】新嶋莉奈

~もぎたて女子アスリート最前線 第28回~

 新嶋莉奈、17歳。2020年の東京オリンピック出場を目指すウインドサーフィンの女子選手だ。現在、高校3年生。恋人がほしいと笑いながら話す彼女に「ちょうどよかった。今回は美女アスリートの特集なので、女子力アピールをお願いします」と伝えると、「こう見えて意外に怖がりです。おばけとか無理ですから」と真顔で答えたあと、「ダメだ、こりゃ」と再び笑顔に戻った。

「高校は推薦なんですけど、スポーツ推薦とかじゃなくて普通に勉強して入りました。私、負けず嫌いなんですよね。ウインドサーフィンだけじゃなく、勉強でも人に抜かされるのが嫌なので。やるんだったら、中途半端にしたくはないんです。中3の夏休みにユースオリンピックが終わってからは、海に出るのをスッパリやめて、勉強一本に絞りました。その前は毎朝塾に行って、日中は海に出て、夜は10時までは2回目の塾という生活。しかも世界大会とかの遠征もありましたからね。さすがにあのときはウインドサーフィンをやめたくなったな」

◆オリンピック出るのが当然?

 現在は19歳以下のユースクラスに出場する新嶋。来年からはシニアクラスに切り替わるため、すでに今年からシニアの大会にも出るようにしている。「やっぱり全然違いますね。全体的に体力あるし」と競技レベルの高さに追いつくのに必死な様子だ。競技としてのウインドサーフィンは4つに種目が分かれているが、新嶋が取り組んでいるのはRSXと呼ばれるコースレース。オリンピックを目指すため、中学入学のタイミングでコースレースに転向したという。オリンピックに出場できるのは、各国男女1名のみ。非常に狭き門であることは間違いない。

「オリンピックを目指すようになったのは、言ってみれば洗脳に近いのかも(笑)。周りの人たちが“オリンピック出るでしょ?”ってさも当然のように言ってくるから、そういうものなのかって思い込んじゃったんですよ。まぁでも、やるからには一番上に行きたいですね。リオに出ていた先輩も東京を目指すし、結構ハードルは高いんですけど。先輩たちは就職して、アスリートとして毎日のように練習ができる。一方の私は学校があるじゃないですか。週6で学校だと、がっつり練習できるのは1日だけ。夏は7時くらいまで海に入れるけど、冬になると日が暮れるのが早いから、学校から帰るとほとんど練習できないのが実情で。来年4月からは大学に進むけど、最初の1年は休学して海外遠征を回ろうかなとも考えているんです」

 新嶋の父は黎明期から活躍しているウインドサーフィンの元プロ選手で、現在はスクール兼ショップの『セブンシーズ』を鎌倉で経営している。そんな環境で育った娘は、当然のように海が友達になっていく。ボディボードでの波乗りデビューは1歳半、最初にウインドサーフィンに乗ったのも4歳のときだという。「最初は、わちゃわちゃ遊んでいただけ。本気で練習していなかった」そうだが、それでも国内のジュニア大会では勝つことができた。ところが中2のとき海外の大会に初めて出ると、あまりのレベルの高さに啞然としてしまう。

「みんな同じ年くらいの選手なのに、乗り方が綺麗なんです。フォームからして全然違っていた。あとはコース取りの正確さですよね。ウインドサーフィンって、マークとマークの間を最短距離を進む必要はないんですよ。まず風があるところを探して、その風を利用して進んでいくスポーツなので。すごく簡単にいうと、海水の黒くなっている場所が風があるところ。池とか見ていても、風が吹くとザワザワって黒くなるものなんです。筋力がない人でも、風の読みが鋭い人はポーンと抜け出していく。頭を使わないと勝てない競技ですね。そこが面白さでもあり、難しいところでもあるんですけど」

◆戦略と風が理解できると面白い

 天候が毎日変わる中で、今日はどういうふうに進むのか? 船からチェックするコーチと二人三脚で戦略を組み立てていく。練習が終わると、コース取りの確認と細かい作戦の軌道修正。「自分としては、この風を利用したかったから右に行った。でも、ダメだった」などとミーティングで意見を交換し合う。戦略という点でいうと、風を読む力だけでなく、相手選手との駆け引きも重要になってくる。

「マッチレースになった場合、相手が嫌がるポジションに自分がいなくてはいけない。自分がやられて一番嫌なことを、相手に対してもするんです。だから基本、意地悪な人が強いんですね。私は……ノーコメントでお願いします(笑)。レースとはいっても単純なスピード勝負じゃないから、最初は何がなんだかわからないという人が多いと思うんですよ。“これ、どっちが勝ってるの?”って感じで。だけど今は、テレビ中継も上空からドローンで撮ったりしていますからね。戦略とか風が理解できると、ウインドサーフィンってすごく面白いですよ。“あっ、そっち行っちゃうんだ!”とか声が出ちゃう」

 遠いと感じていたオリンピック出場の道も、おぼろげながら見えてきた。先日、イタリアで行われたジュニアの世界大会では、最終的に決勝のメダルレースで敗れてしまったものの、予選段階では10レースして6位。ユースの大会でトップ3に入ることができれば、シニアでも10位以内に入れると言われており、世界で戦える自信がついた。また、166cmという身長も日本人女子選手としては大柄な部類に入り、体型としては極めて恵まれていると指摘される。

「海に出ていないときも、イメトレみたいな感じでウインドサーフィンのことを考えちゃうんですよ。他の人が全員、自分の後ろにいるっていう絵をイメージするんです。いつもやっちゃうのが、信号待ちからのスタートダッシュ。青になった瞬間にポーンと飛び出して、後ろに人がいるっていうのが快感で(笑)。ウインドサーフィンは、ずっと続けていきたいですね。たぶん子供ができるまでは続けるんじゃないかな。東京オリンピックのときは20歳だから、たぶん2024年のオリンピックも目指すことになると思う。その前に22歳で大学卒業したら、アスリートに理解ある企業に入って続けたいです」

【にいじま・りな】

1999年11月13日、神奈川県鎌倉市出身。現在高校3年生。セブンシーズ・鎌倉ジュニアユースウインドサーフィンクラブ所属。幼少の頃から海に親しみ、小1で現在のクラブに入部。全日本ジュニア選手権では小4から優勝5連覇を成し遂げる。中学入学とともにコースレースに転向。中2のとき、ポーランドで開催されたテクノ293ワールドカップのU15クラスで10位。翌年1月にはシンガポールで開催されたアジア選手権で4位入賞し、ユースオリンピックの日本代表枠を獲得する。最年少で出場した第2回ユースオリンピックは7位。2015年に江ノ島で行われたアジア選手権U17クラスで優勝を果たす。高校入学後はRSX級(オリンピック艇)に転向。JSAF次世代強化メンバー、JWAターゲット選手として東京オリンピック出場にむけ日々練習を重ねている。

取材・文/小野田 衛 企画・撮影/丸山剛史

日刊SPA!

最終更新:7/29(土) 8:50
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