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決算の「癖」を投資に生かす 稼ぐピーク、業種で違い

7/30(日) 7:47配信

NIKKEI STYLE

 企業の通信簿といわれる決算。3カ月ごとに年4回あり、3月期企業の第1四半期(1Q=4~6月期)決算発表が7月下旬から本格化する。通期では2年連続の過去最高益が見込まれており、1Qでは年間の利益計画のどこまで達成したかが焦点になる。稼ぐ時期のピークや、業績に影響しそうな最新のテーマなど業種別の「癖」をつかめば株式投資にも役立つ。
 今年の1Q決算は、総じて順調なスタートになりそうだ。日本経済新聞社のまとめによると、「ニッポン株式会社」は2018年3月期通期で前年に比べ4%増収、最終的なもうけを示す純利益は9%伸びる見通し。リストラから攻めに転じたソニーなどの電機、資源市況の回復を受ける総合商社で業績の好調な企業が目立つ。自動車は安全・環境分野を中心に研究開発コストが先行し、ホンダなどが減益を見込んでいる。

■「進捗率」に注目

 大半の企業は四半期ごとの利益予想を開示していない。1Qでは利益水準とともに、ポイントとなるのが「進捗率」だ。年間の利益計画に対して1Qでどれだけ達成したかを示している。決算は3カ月ごとに年4回あるため、1Qの進捗率は25%が目安となる。前年実績(16年4~6月)は全産業合計で23%だった。
 ただ、業種や個別企業によって稼ぐ時期には山谷がある(図A)。航空会社やホテルは夏休みシーズンが書き入れ時だったり、建設、機械は官公庁向けの引き渡しが年度末に集中したりするのが一例だ。電力・ガスは利用料金が石炭、液化天然ガス(LNG)などの燃料価格に連動している。資源市況の変動を反映するまで一定の期間があくため、年によって四半期ごとの利益にばらつきが出やすい。

 前年の1Qは、総じて医薬品や電機、食品などが順調に利益を積み上げた。
 医薬品の進捗率は39%だった。一般に1~3月に研究開発費が膨らみやすく、その分、年前半に収益が偏りやすいという。個別企業を見ると、武田薬品工業は血液がん治療薬が伸びたほか、特許切れ医薬品事業を譲渡するなどリストラ効果も重なった。アステラス製薬も主力の前立腺がん治療薬の販売が好調だった。今年も主力医薬品の販売増を見込むところが多い。
 食品では、ブランド力に強みを持つ企業で収益が上向いている。一例が森永乳業だ。前年は「健康志向」をテーマに高価格帯のヨーグルトの販売が伸びた。ニチレイは家庭の節約志向や「中食」需要で冷凍食品の好調ぶりが目立つ。

 今年の為替レートは1Qの3カ月間で平均1ドル=111円台と、前年の108円に比べ円安に振れた。自動車などの輸出企業には追い風だが、医薬品各社は研究開発費や販売管理費を外貨建てで支払うケースも多い。円安が進むと、食品各社は原材料の輸入価格がかさむ。好調な商品販売でコスト増をどこまで補えるか、1Qは販売動向を検証する機会になりそうだ。
 電機は前年1Qに通期実績の29%を達成した。今年も順調な滑り出しになりそうだ。ソニーは通期の純利益が3.5倍に増える見通し。前年に映画事業で1000億円超の減損損失を出した反動に加え、スマートフォン(スマホ)のカメラに使うCMOSセンサーなどエレクトロニクス事業が好調だ。日立製作所は発電、鉄道車両のインフラ事業が収益をけん引する。
 空運や建設など、1Qは出足が鈍いとされてきた業種にも変化の兆しがある。(1)訪日外国人(インバウンド)(2)働き方改革・人手不足(3)値上げなど、収益に影響を与えそうな「旬のテーマ」は多い(図B)。

 日本政府観光局によると、今年1~6月に日本を訪れた外国人客数は1375万と、前年同期に比べ17%増え過去最多を更新した。ANAホールディングスと日本航空は国際線旅客に加え、国内線で地方を訪れる外国人客が伸びているという。燃料価格の下落と相まって、1Qの進捗率は空運全体で前年の8%を上回る可能性がある。
 外国人は「爆買い」中心のモノ消費から、体験型のコト消費の人気が高まっている。3月期決算ではないが、収益の押し上げ効果はエイチ・アイ・エスや藤田観光といったレジャー関連にも広がりそうだ。
 働き方改革を商機に結びつける企業も増えている。統合基幹業務システム(ERP)を手がけるオービックは、システム投資で業務を効率化したい顧客企業のニーズを取り込んでいる。4~6月期は、本業のもうけを示す営業利益が過去最高になったもようだ。
 半面、建設会社は20年の東京五輪に向けた大型の開発案件が増えているものの、人手不足は一段と深刻になっている。人件費の高騰が収益を圧迫する可能性が指摘されている。
 化学や製紙、食品など幅広い業界では原材料の高騰も無視できない。個人消費の回復はまだら模様だが、今年から値上げに踏み切る企業が相次いでいる。

■PER日本15倍台

 こうした業種ごとの傾向を捉えれば、株式投資に役立つ。日経平均株価が2万円を回復した後も、日本株全般の割安感を指摘する声は多い。投資家の成長期待を示すPER(株価収益率)を見ると、東証1部は平均15倍台と、米国(19倍)などに比べて低い(図C)。「収益面からみて株価には上昇余地がある」(松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリスト)という。
 1Q決算後に通期の業績計画を見直す企業は少ないが、進捗率などを基に同じ業種の中でも銘柄の選別が進みそうだ。
(岸田幸子)
[日本経済新聞朝刊2017年7月22日付]

最終更新:7/30(日) 7:47
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