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34歳、再パイ活 サーからフォーへ!続・女もたけなわ その14 <サーからフォーへ!続・女もたけなわ>

7/31(月) 11:26配信

幻冬舎plus

瀧波 ユカリ(漫画家)

 「アラサー」時代に書いた女の「たけなわ期」にまつわるあれこれ。「アラフォー」になって再考してみました。サーからフォーへの峠を越えて、分かったことは……? 

34歳、再パイ活(サー篇)

 すっかり春めいて、久しぶりに薄手のカットソーを身にまとい、鏡の前に立った私は突然あるものの存在に気がついた。おっぱいだ。「あら、あなたそこにいたのね……」。冬の間ずっと厚着をしていたせいか、カットソーをささやかに持ち上げるおっぱいの存在感が、とても新鮮。そして愕然。あんなにおっぱいのことばかり考えていた私が、おっぱいのことを忘れていたなんて! 

 初めて自分のおっぱいへ関心を持ったのは、小学校高学年。私のおっぱいは、周囲と比べて発達するのが遅かった。クラスの大半が第二次性徴を迎え、すでにスポーツブラを装着している子もいるのに、私のはまだ小さい……というより、おっぱいと言えるべきものが見当たらない。折しも時代は、細川ふみえが大人気の巨乳ブーム。焦りを感じた私は密かに「おっぱい活動」(略してパイ活)を始めた。まずはリサーチ。同学年の女子の胸をチェックし、自分と同じくらい未発達な子がいたら「私より先に成長しないでくれ!」と念じた。リサーチポイントは二次元にも及び、「ちびまる子ちゃんの姉(小6)もぺったんこだから大丈夫」と自分を落ち着かせていた。

 中学になると、『non︲no』に載っていたバストアップ体操を始めた。仰向けに寝て両手を真横に広げ、ダンベル代わりの辞書を上げ下げしたり、胸の前で合掌して左右の手を押し付け合ったり。いずれも大胸筋を鍛えるポピュラーな体操だ。その効果があったのか無かったのかはわからないが、ようやくブラジャーが必要になるサイズまで成長。中学の終わり頃には人並み程度の大きさになった。

 コンプレックスとの戦いは終わったが、パイ活は続いた。女子の目を気にするお年頃から、男子の目を気にするお年頃へ。引き続き体操に励み、パッド入りの「天使のブラ」や体にぴったり張り付く「ピタT」を愛用し、少しでも胸が大きく見えるよう工夫や努力を重ねた。そしていつしか丁寧に詰め込むとDカップのブラが使えるまでになり、私は「ちょっと胸が大きめの女の子」というステイタスをやっとのことで獲得したのだった。

 ところが大学に入ると、私のパイ活は突如停止することとなる。「胸を大きく見せようとするの、みっともないよ」。女友達の一人に、ことあるごとに執拗にそんな批判をされたことが発端だった。自分のしていることは、ずいぶん下品で嫌味なことなのかもしれない……次第にそう思えてきた私はブラのパッドを抜いたり、安くてサポート力の乏しいブラを着けるようになった。そして自分のおっぱいのことも、おっぱいにかけた情熱や執着のことも、少しずつ忘れていった。

 それから約10年。出産を経て、本来の用途(授乳)を完遂した私のおっぱいは、すっかり単なる体のパーツとして表情を失っている。大きさや形も、全盛期とは比べるべくもない。以前は鎖骨の下から盛り上がるように膨らんでいたけれど、今はもっと「もったり」している。風船のようにパツパツとした張りも消え失せ、テニスの軟球みたいな柔らかさになった。さて、そんな胸の存在をふと思い出してしまった私は、今からどうしたらいいのだろう。巨乳ブームはとっくに去っているし、ボディコンやピタTを着ている人もいない。このまま思い出さなかったふりをして、主張するでも隠すでもなく、適当におっぱいと付き合ったっていい。でも、もう一度パイ活に励み、胸をフィーチャーしてもいい気も……そうしよう。再開発ならぬ、再パイ活だ! 

 そんなわけで、なるべく胸が大きく見えてボディラインもきれいに出る服が着たいけれど、その手のものは何故かギャル系のブランドばかり。胸をフィーチャーするために今からギャルになるわけにもいかない。それに、ピタッとした服は胸も目立つが腹も目立つ。まず腹を何とかしなければ……そうするとお菓子の食べ過ぎをやめないと……と、いろんな問題が見えてきちゃってさあ大変。女として至らない点と点がつながって、線になっていく恐ろしさを堪能している。

 そして今さらだけど大学時代の友人の批判は、自分もパイ活がしたいけど踏み出せない気持ちの裏返しだったのではって気がしてる。真相は闇の中だけど。私も、人に言われたからってやめることなかったのにな。だって若い頃のおっぱいは二度と、戻ってこないのだから……おっと、失ったものの数を数えてはいけない。30過ぎたら特にね! (「GINGER」2014年5月号)

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最終更新:7/31(月) 11:26
幻冬舎plus