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【インタビュー】「1試合が人生を左右する」酒井宏樹の後悔しないメンタル術

7/31(月) 19:20配信

footballista

INTERVIEW with
HIROKI SAKAI
酒井宏樹
(マルセイユ/日本代表)


4シーズンプレーしたドイツを離れ、当初は適応を不安視された新天地マルセイユで男は昨シーズン、チーム不動の、リーグ1屈指の右SBとして高評価を受けた。その成功の裏にあった心境の変化とは? 3月14日にクラブハウスで応じてくれたインタビュー。何気なく語る言葉の端々に感じられる“強さ”から、酒井宏樹が海外の地で培ってきた心の持ちよう、メンタルコントロール法を知ってほしい。


インタビュー・文 小川由紀子


試合中と試合前後のメンタル
負けたものはしょうがない。切り替え、じゃないですかね。この職業(苦笑)


──フランスで最もプレッシャーがきついクラブとされるマルセイユ。移籍話が出た時にはハリルホジッチ代表監督にも「相当きついぞ」と言われたそうですが、実際はいかがですか? メディアからの重圧も含めて。
「どうですかね……勝っていればみんなハッピーなんでしょうから。メディアの中にもクラブに誇りを持っている人が多いので、簡単に選手をけなすような記者も少ないですし、プレッシャーのかけ方をちゃんとわかった上で報道しているところはあると思います」


──言葉は時に凶器になりますからね。
「確かに、言葉は凄い。自分も若い頃はそうでした(言葉に傷ついた)。チームが負けて、それにプラスして自分も攻撃されると(精神的に)きますよね……」


──実際にピッチ上で何が起こっていたか、周りから見ただけではわからないこともたくさんあると思います。
「でも、見えている部分で結果を出せないとプロじゃないから。見えない部分で何をやっていたかなんて、あとで何を明かしても言い訳になってしまう。だからそんなこと言っても仕方がないんです。ただ僕はその分、負けた時の切り替えは早いですよ。負けたものはしょうがない。めちゃくちゃ悔しいけれど、次に負けないように切り替えないといけないので……切り替え、じゃないですかね。この職業(苦笑)」


──家に帰っても嫌な思いを引きずったりは?
「家の中ではサッカーの話はしないです。勝った時はしてもいいかなと思いますけど、あんまりネガティブな話を人に言ったところでストレス解消にはならないので、子供と遊んでいた方が断然いいです。なので家族がいることの利点は相当大きいと感じますね」


──そこでマインドをリセットできる?
「少しずつですね。完全にリセットできるのはやっぱり、練習場だったりサッカーをやっている時なので。あとは次の試合の勝利。仮に自分が家にいる時にチームが勝ってくれたとしても、自信を取り戻すことは全然できないですから。自分がピッチに立って、いいプレーをして、取り戻していくわけで」


──これまでのキャリアで辛い体験をした思い出は?
「いや、しょっちゅうですよ~。最近だとパリ(・サンジェルマン/以下PSG)戦(2月26日)。それこそ局面で見れば、選手側からすれば『1-5のゲームじゃなかった』と言える試合でしたけど、結果はホームで大敗で。1年後に『パリと去年どうだったっけ?』と振り返った時、内容なんて覚えている人はいないでしょう。結果がすべてなんです」


──試合中における選手のメンタルも興味深いです。マルセイユにも多少その傾向がある気がしますが、中には相手にリードされると気持ちが落ちてしまう人がいますよね。
「フランスはより多いんじゃないかと。ドイツには『最後まで戦う!』という精神が凄く浸透していたので。マルセイユはエリートが多いからこそ、逆にそうなのかもしれない。『次の試合で切り替えよう』と考える選手が多いというか。でも監督が代わってからは(注)、かなり厳しさが増したのでなくなりましたけどね」

(注)2016年10月20日、その3日前に発足した新経営陣の下、フランク・パシに代わってルディ・ガルシアが就任。リールやローマなどを率いてきた53歳のフランス人。


──試合中、チーム内で気持ちが落ちてきた時に頼りになるのは、やはりリーダーの存在だったり?
「あの観客の声援の中では声もあまり聞こえないので、実際はすぐ近くの選手同士で話し合うしかなかったりします。僕の場合も、まず周りの選手としゃべっていますね。絶対に勝てないと思うような展開になっても、『惰性でやるんじゃもったいない。俺らだけでも最後まで闘おう!』って声をかけています」


──ミスがあった時なども声をかけ合って?
「僕は基本的に、相手にネガティブなことは言わないようにしています。自分が言われると嫌なので。逆にいいプレーがあった時には常に言うようにしている。英語なのでちゃんと伝わっているかはわからないですけど。でも、フランス語の方が簡単な時もあるんですよ。『アレー!(Allez=行け)』とか『ビヤンジュエ!(bien joue=ナイスプレー)』とか。『ウェルダーン(well done)』と言われたりもしますけど、『ビヤンジュエ』の方が言いやすいじゃないですか(笑)」


──理不尽なジャッジを受けた時などは、メンタルのコントロールが難しくないですか?
「それは、しょうがないですね。今は転ぶ率(わざと転んでファウルを誘う)が相当高いから。みんなめちゃくちゃうまいですよね、転ぶのが。あれで勝敗が決することもあるので、DFは本当に頑張らなければならない。頑張るって何を? という話ですが、DFがそうした状況を招いてしまっていることは時にあると思います。『今のはPKじゃない』と言われるシーンだって、こっちがワンテンポ前に準備していれば普通にクリアできていたわけで、相手が転ぶようなシチュエーションを作らずに済んでいたという。正直、DFからしたら“ダイブ”は凄く嫌ですけどね。セコい! イエローじゃなくて一発レッドにしてほしいです!(笑)」


──試合中、悔しさを引きずってしまうことは?
「90分ってあっという間に過ぎてしまうので、考えるのは終わってからですね。あとでジワっと。で、悪い場面しか頭に残っていない。なので試合終了後になるべく大きな後悔をしないよう、1回ミスをした時は他で良いプレーをして挽回するしかないです」

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最終更新:7/31(月) 19:20
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