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ネットショッピング拡大の物価への影響

7/31(月) 9:29配信

NRI研究員の時事解説

<要旨>

MITのロベルト・カバロ准教授の調査・研究によれば、10ヵ国中日本では、オンラインの小売価格と実店舗の小売価格の差は最大であり、オンライン小売価格の実店舗小売価格に対する比率は-13%(10ヵ国平均は-4%)であった。双方の市場が同質ではなく分断化(Fragmentation)していることが、両者の価格差をもたらす重要な要因の一つと推測される。その背景には、ネット販売に不慣れ、あるいは決済などの面で不安を感じる中高年齢者の存在などもあるのかもしれない。しかし時間とともに他国並みに日本でのネット販売の普及率が高まっていけば、それは実店舗での小売価格を一段と押し下げる形で、価格差を他国並みに縮小させることになるのではないか。これは消費者物価統計で補足されていないオンライン販売価格の低価格が、消費者物価統計で補足されている実店舗での価格へと波及していくことを意味する。これによって、消費者物価はますます上昇しにくくなることも考えられるのである。

ネット販売拡大で個人消費や物価動向の判断は難しく

ネット販売の拡大は、個人消費や物価動向の判断を難しくさせる側面がある。消費者が実店舗ではなくネットを通じて商品の購入を拡大させれば、その分、百貨店、スーパーなど既存の業態での販売額は低下してしまう。ネット販売が統計で十分には補足されない中では、これは個人消費の動向を過小に評価することに繋がるだろう。他方、消費者物価統計にも、ネット販売での価格は十分に反映されていないと推察される。そのもとで、実店舗での小売販売価格は変化せず、ネット販売の小売価格が下落している場合には、物価の動向が過大評価されることになる。

10ヵ国でオンラインと実店舗の小売価格の差を調査

MIT(マサチューセッツ工科大学)のロベルト・カバロ准教授は、オンラインの小売価格と実店舗(オフライン)の小売価格の差を調査した論文(注1)を、最近、米有力経済学術誌の“The American Economic Review”に発表している。分析対象は10ヵ国、56の小売業者である。対象となるのはオンライン販売と実店舗(オフライン)販売の双方を行っている小売業者であり、同じ商品で両者の価格が調査されている。日本では、ビックカメラ、ケーズデンキ、ローソン、ヤマダ電機の4社が対象となっている。

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