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石炭火力増設の事業性にリスク――自然エネ財団が報告

7/31(月) 23:11配信

オルタナ

自然エネルギー財団(孫正義設立・会長)は7月20日、日本での石炭火力新増設のビジネスリスクに関する報告書を公表した。それによると、日本の電力需要はここ5年間で約10%減少しているため、火力発電の利用率は53%まで低下。しかし、今後日本では42基もの石炭火力発電所が計画されている。パリ協定後、世界的には脱炭素化が進んでいるのに対して、日本の石炭火力発電所の増設は需要予測に対しても過大であり、企業の脱炭素化の動きにも相反すると指摘する。(箕輪 弥生:オルタナ/Sustainable Brands Japan)

報告書では2016 年度の火力発電所の設備稼働時間の分析を行っている。それによると、設備利用率は2013 年度以降は下降に転じ、2016 年度には53%まで落ちている。今後も設備利用率を高い水準で保つことは困難だと推測する。

しかしながら、日本では2017年5月時点で42基(1860万kW)もの石炭火力発電所の増設が計画されている。この背景には、「エネルギー基本計画」(2014年4月改定)が、石炭火力発電を「安定供給性や経済性に優れた重要なベースロード電源」として位置づけたことにある。現状の石炭火力発電所の稼働率が低下していることからもわかるように、新規の石炭火力発電所の事業計画の前提となっている70%の設備利用率、40 年稼働という想定は実現可能性が乏しいと報告書は警告する。

一方で、「パリ協定」発効以降、世界では化石燃料に関わる企業への投資を引き上げる「ダイベストメント」が加速化するなど脱炭素化の動きが活発となっている。この動きに伴い、「企業の化石燃料への依存度は低下する」と同報告書の作成を行った同財団・大久保 ゆり上級研究員は予測する。「アップルやグーグル、GM、ユニリーバといった世界的企業約100社が再エネ100%を目指す宣言を出しています。これらの企業は日本にも支社やサプライチェーン企業を抱えており、グローバル企業の動向は日本企業にも影響を与えるはず」と説明する。

こういった動きの背景には、パリ協定が発効したことはもちろん、自然エネルギーのコストが世界的に劇的に低下していることも影響している。太陽光発電や風力発電などの発電コストは、いまや世界の多くの国で石炭火力発電よりも安価になってきている。

最新技術を使っても、既存ガス火力の約2 倍のCO2 を排出する石炭火力は世界的企業から敬遠されるエネルギー源だ。新増設の石炭火力計画が稼働すれば、それだけで1990 年比約 10%もの温室効果ガスが増えてしまうことになる。これまでの企業や家庭のエネルギー効率化の努力が無駄になってしまう数字だ。

大久保研究員は「世界第5位の二酸化炭素排出国である日本が石炭火力を国内や海外で増やしていくことは、地球温暖化の影響をより深刻にすることであり、国際的にも批判されている」と厳しい目を向ける。「劇的にコストが下がっている自然エネルギーを利用する海外企業との競争という面でも、日本企業は今の日本のエネルギー政策の現状にもっと危機感を持っていいのではないか」(大久保氏)と疑問を呈した。

「サステナブル・ブランド ジャパン」より転載

最終更新:7/31(月) 23:11
オルタナ

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