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マルティノス、横浜FMの進化続ける勤勉ドリブラー。キュラソー代表で掴んだ新鮮な感覚

7/31(月) 15:05配信

フットボールチャンネル

 横浜F・マリノスの大きな武器となっているのは、両サイドの強烈な2人のドリブラーだろう。その1人、来日2年目のマルティノスは日進月歩の成長を遂げている。この夏は久々のキュラソー代表復帰を果たし、CONCACAFゴールドカップで北中米カリブ海地域の強豪と対戦し、得難い経験を積んだ。日々意欲的に学びを求めるマルティノスの勢いはとどまるところを知らない。(取材・文:舩木渉)

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●信じて走った先制ゴール。冷静だったシュートの瞬間

 大雨が打ちつける中、マルティノスは味方を信じて走った。ドリブルで中央を割った齋藤学から、カウンターのスピードを殺さない絶妙なパスが出る。ひとつの迷いもないプレーがつながり、ゴールが生まれた。

 29日に行われた明治安田生命J1リーグ第19節、横浜F・マリノスは2-2で清水エスパルスと引き分けた。「自分の責任だと思うし、本当に迷惑かけている」と齋藤が語ったように背番号10のPK失敗が響き、マリノスにとって「勝ち点2」を失ったと言える後味の悪い試合となってしまった。

 中断明けの試合を勝利で飾れなかったのは悔やまれるが、ポジティブな収穫も多くあった。その中のひとつがマルティノスの成長である。キュラソー代表帰りのドリブラーは、自身の先制点をこう振り返る。

「学が何度か自分の方を見てくれていて、必ず自分にパスをくれるんじゃないかと考えていた。学がボールを持った時に、最初はダイレクトで自分のところに出すのかなと思ったら、頭のいい選手なので、瞬間的に彼は仕掛けてから自分のところにパスをしてくれたんだ。ああいう場面で自分のところにボールがきたので、あとは自分が仕掛けていってしっかり決めるだけだった」

 1本のパスとスピードで相手の守備を振り切ったマルティノスは一気にペナルティエリアへ侵入。2人のDFをフェイントで棒立ちにさせて、左足を一閃。しなやかな振りから繰り出されたカーブのかかったシュートは、GK六反勇治の手をかすめてゴールネットに吸い込まれた。

「最初は右足で打とうと思ったけど、相手がブロックにきたので切り返して中へ入っていった。その後自分の前にスペースを作ろうとして2回フェイントをかけたら、その瞬間、大きなギャップができて、シュートチャンスだと思った。シュートを打つ前のほんの一瞬、切り返した後に学が見えた。学に出そうと思ったけど、相手も来ていたし、狭いスペースだったので、もう一度フェイントをかけて、自分の前にスペースを作って、瞬間的に空いたので、そこでシュートを打った」

●結果にあらわれる成長の証。両サイドで相手の脅威に

 実際に映像を確認すると、ペナルティエリア内で切り返して左足に持ち替え、その後2回シュートフェイクをかけているのがわかる。さらにシュートを打つ瞬間にも、もう一度相手のタイミングを外すフェイントが入る。まさにマルティノスの技術の粋が詰まった一発だった。

 今季はこれでリーグ戦4ゴール4アシスト。シーズンのおよそ半分を消化した時点で昨年1年間の成績に並んだ。パフォーマンスや周囲との関係向上は明らかで、マリノスの大きな武器になっている。

 特に昨季以上に目立つのは、齋藤と左右のサイドを入れ替える場面だ。開幕当初は90分間の中で一度か二度だったポジションチェンジは、試合を重ねるごとに増え、清水戦では気づいたらマルティノスと齋藤が入れ替わっている、と感じるほど頻繁に互いの位置を変えていた。

 昨年左サイドで猛威を振るった齋藤は、徐々にそのパターンが読まれていき、相手に止められる回数が増えていた。そこでサイドの配置を入れ替え、相手の目先を変えることで攻撃パターンを増やした。これはマルティノスが常日頃から言っていることだが、「どちらのサイドにいても互いの持ち味を生かせる」という確信が日に日に高まっている。

 左サイドに左利きのマルティノスがいれば、スピードに乗ったタテ方向の突破から精度の高いクロスがペナルティエリア内に入る。右サイドの齋藤は自分で仕掛けてタテに突破することもできれば、ゴール前に入ってシュートを狙うこともできる。

 反対に右サイドにマルティノス、左サイドに齋藤という昨季と同じ形であれば、2人ともカットインしてシュートという形で、よりゴールを意識したプレーになる。マルティノスに関して言えば、右足のキック精度もかなり向上しているため、最近は右サイドから積極的にクロスを狙うようにもなった。

「試合の中ではいろいろな場面がある。例えばセットプレーの後はぐちゃぐちゃになっているので、お互いを見ながら学が右に行ったら自分が左へ、自分が右へ行ったら学が左へ行く。自然の流れでポジションを変えるし、試合の中で話しながら途中で変わったりもする。

今日は後半開始前に学が僕のところに来て『最初はどちらからやろうか?』と聞いてきたので、『どちらでもいいよ』と。そうしたら彼は『左に行く』というので『僕は右で』という感じだった。試合の中ではいろいろなことが起こるので、お互いに話し合うことが大事。自分たちが両サイドどちらでやっても、相手が怖がると思う。今度は学がきた、今度はマルティノスがきた…どうしよう守らなければ…と慌てる」

●「日本での結果が結びついた」2年ぶりのキュラソー代表復帰

 実はマルティノス、飄々として見えてかなりの努力家である。個人的に欧州の戦術アナリストをつけて、定期的にアドバイスを受けている。日々自身のレベルアップのために勤勉に取り組んでいる。しかし、改善すべき点も多い。まずは継続性を身につけるべきだろう。

 清水戦もマリノスの流れが悪くなるのに引きずられるように、70分以降は存在感をほとんど失ってしまった。2失点目の場面でも一度相手にかわされた後、すぐに諦めて追うのをやめてしまった。90分の中で継続したパフォーマンスを発揮するだけでなく、シーズン全体を見たときに試合ごとのムラを無くすことも必要だろう。

 だが、最大とも言える課題を解決するためのヒントを見つけてきたかもしれない。「ゴールドカップは素晴らしい経験だった」とマルティノスは語る。

 リーグ中断期間の直前に行われたJ1第18節のサンフレッチェ広島戦と、天皇杯3回戦のアスルクラロ沼津戦を欠場して、生まれ故郷のキュラソー代表に合流。北中米カリブ海地域の王者を決めるCONCACAFゴールドカップに参加していた。およそ2年ぶりだったキュラソー代表復帰の喜びは相当なものだったはずだ。

「自分にとって代表は特別なものだし、日本でやった結果が結びついて選ばれたと思う。去年からしっかりJリーグで、マリノスでやっている中でゴールを決めて、アシストをして、結果を残してきている。それを代表のスタッフがしっかり見てくれて、選んでくれたと思う。自分の国、キュラソー代表としてプレーできるのは誇らしいことだよ」

●代表で学んだエネルギーの使い方。経験をマリノスに還元できるか

 マルティノスは、背番号6をつけてグループステージ2試合に出場した。キュラソー代表は結局3戦全敗に終わって決勝トーナメント進出を逃したが、エルサルバドルやメキシコといった国々との対戦は、自らを日々アップデートしている痩身のウィンガーに新たな学びを与えたようだ。

「フットボールのスタイルが違って、ハイレベルで、ビッグプレイヤーがいて、知的だった。違うスタイルのフットボールを見ることはいつも楽しい。日本に来る前はオランダやハンガリー、ルーマニアでプレーして、代表としてもたくさんの国と戦ってきた。それぞれ異なるスタイルからはあらゆることを学べる。僕にとって大きな経験だった」

 ゴールドカップでは代表チームならではの難しさを味わい、そこで得た学びはマルティノスに欠けていた「継続性」という要素を改善するヒントになるかもしれない。

「リーグ戦は週末に向けてトレーニングをするけど、トーナメントは試合と試合の間がすごく短い。勝ち進むためにどういうサッカーをしなければいけないか頭を使いながら、どのようにエネルギーを使うか考えながら、とても賢く戦う必要がある。Jリーグでは『今週はマルティノスが最も多くスプリントしていた』と言われることもあるけれど、トーナメントだったらスプリントするのも気をつけなければいけない」

 常にフルスロットルで走り続けるのではなく、どこにエネルギーを注ぎ、どこで力を抜くのか。ゴールドカップのような短期決戦の大会でなく、リーグ戦の要所で参考になる部分はあるだろう。ゴールドカップでの経験を、マリノスにどう還元できるか。サイドを翔けるトリコロールの稲妻は、日々進化を続けている。

(取材・文:舩木渉)

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