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衝撃の貧困、20万人が10平米未満の部屋で生活、香港

7/31(月) 7:31配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

「あの日、私は家に帰って泣きました」。ベニー・ラム氏は香港の過酷な生活環境を撮影したある日のことをこう振り返る。

【写真ギャラリー】衝撃、金網で囲まれたケージ・ホームほか香港の1畳間生活 写真22点

 香港の旧市街では、アパートの空間をさらに分割した小さな部屋で多くの人が暮らしている。「コフィン・キュービクル(棺おけ部屋)」と呼ばれる、木の板で囲まれた約1.4平方メートルの小部屋だ。ラム氏は4年をかけて100以上の部屋を訪れていて、カメラ越しに見る光景に慣れてしまっていた。

 その日、撮影していたのは普通より少し大きいキュービクルだった。そして、住人にうっかり「大きな部屋ですね!」と言ってしまった。

「とても後悔しました」とラム氏は振り返る。「あのような生活は普通ではありません。いつのまにか感覚がまひしていました」

 香港には、ネオンきらめくショッピングモールがいくつもあり、物欲の旺盛な消費者が高級ブランド品や宝飾品、ハイテク製品を買い求めている。高層ビル群にはさまざまな企業が入居し、世界の金融センターを支えている。

 しかし、そうした華やかな風景の裏では、4万人の子供を含む約20万人が10平方メートル未満の部屋に暮らしている。

 香港の人口は750万に近付いており、開発可能な土地はほとんど残っていない。その結果、香港の地価は世界最高水準まで上がった。急騰する家賃を支払えない何万人もの人々に残された選択肢は、掘っ立て小屋、台所とトイレの区別がない小部屋、コフィン・キュービクル、ケージ・ホーム(籠の家)くらいだ。ケージ・ホームは約180センチ×75センチの小さな部屋で、金網で囲まれていることからこの名で呼ばれている。

「寝食すべての活動がこの小さな空間で行われています」とラム氏は説明する。アパートの所有者は約37平方メートルの部屋に20台の2段ベッドを置き、それぞれを板で囲んでコフィン・キュービクルをつくる。家賃は月額2000香港ドル(3万円弱)程度に設定されている。アパートの分割は違法だ。居住空間は立って入ることができないほど狭い。

 ラム氏は香港の繁栄の光が届かない場所にある、息の詰まるような住居に焦点を当てるため、「Trapped(捕らわれの身)」と題された写真シリーズを発表した。こうした住居とその住人を紹介することで、この社会的な不公正がより多くの人の目に留まることを願っている。

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