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日本のトレードは“後ろ向き”。印象改革には積極策を【小宮山悟の眼】

7/31(月) 10:25配信

ベースボールチャンネル

 ニューヨーク・ヤンキースとシカゴ・ホワイトソックスの間で大型トレードが成立した。ヤンキースは中継ぎロバートソンとスラッガーのフレイジャーを獲得。代わりに2016年と13年のドラフト1位を含む4選手を交換要員とした。メジャーリーグでは当たり前のトレードだが、日本のトレード文化は少し異なる。今回は日米間のトレードの違いについて話したい。

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■日本のトレードは後ろ向き

 まずヤンキースのトレードで興味深いのは、ドラフト1位で獲得した選手を放出したことだ。これは、日本のトレードではまずありえない。

 それは日本では、「トレード=低迷したチームの補強策」という考え方があるからだ。トレード文化の馴染みが薄いため、後ろ向きな印象を受けることが多い。トレードされた選手も「放出された」という認識だ。

 米国では、ペナントをとるために何が何でも補強したいというチームが有力選手に白羽の矢を立てる。だからブルペンが崩壊しているヤンキースのように、ロバートソンに白羽の矢を立て、ドラ1を放出するトレードが起こりうるのだ。

 そもそもMLBは、ドラフトの1巡目だからといってすぐにメジャーリーガーになれるわけではない。入団後は100%マイナーから始まる。選手への期待値によって違いはあるが、ルーキーリーグから始まって、1A、2A、3Aと上がっていく。

 3Aで1年ないし、ある程度は活躍できたというお墨付きをもらって、初めてスプリングトレーニングに招待される。つまり、日本のように入団して即戦力ではないため、ドラフトの順位がそこまで重視されることはないのだ。


■MLBのトレードは人事異動

 日本のトレードが米国のようにならないのは、選手は球団に所属しているという認識が強いからだ。

 米国の選手はMLBという組織の中で働いているという感覚を持っている。言わば、トレードは「人事異動」のようなものだ。ニューヨーク支店からロサンゼルス支店、マイアミ支店に行ってくれという辞令。この感覚だと選手は、トレードはやむなしと受け取れる。

 トレードされた選手のやる気も違ってくる。「勝つためにお前が必要」と言われてチームに加入するわけだから、張り切らない選手はいない。これが30球団の共通認識で、入れ替わり立ち替わり含めてMLBなのだ。

 FAについても同様のことが言える。米国では自動的にFAの権利が発生するが、日本は権利を取得して宣言する形となっている。実績のある限られた選手だけに許された権利だから、背負うものは重い。

 例えば、福岡ソフトバンクホークスが優勝を目指す上で、東北楽天ゴールデンイーグルスを倒すために必要な選手が他のチームにいるのなら、フロントが動くことがあってもいいと思う。しかし、現状では今の戦力で優勝できると思っている部分もあるし、1球団が動いたところで日本のトレードに対する考え方が変わることはない。トレードが頻繁に行われない限り、印象を改めるのは難しいだろう。


小宮山悟(こみやま・さとる)

1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。


氏原英明

ベースボールチャンネル編集部