ここから本文です

シリアでISISに反撃する初のLGBT外国人部隊

7/31(月) 18:49配信

ニューズウィーク日本版

ISIS支配下で迫害の標的にされてきたLGBTコミュニティーが、外国人兵士を中心にISISと戦う初めてのLGBT部隊をシリアで創設した

ISIS(自称イスラム国)による迫害に苦しんできたLGBT(同性愛者などの性的少数者)やその支持者たちが、シリアの戦場で反撃に出た。ISISの支配下で暮らすLGBTの人々はこれまで、建物の屋上から突き落とされたり、投石で処刑されたり残酷な仕打ちを受けてきた。ISISが犯行声明を出した米フロリダ州オーランドのLGBTが集まるナイトクラブで発生した銃乱射事件でも、多数の若者が犠牲になった。

シリア北部でクルド人と共にISISと戦う外国人義勇兵たちは7月24日、対ISIS戦線で初のLGBT部隊の創設を宣言した。その名も、「同性愛者の反乱・解放軍」(TQILA、テキーラ)だ。

TQILAは「国際自由軍」(IFB)の傘下に置ある。IFBは、ISISと戦うためにシリア北部に渡航した外国人戦闘員の寄せ集め部隊で、シリアの少数民族クルド人武装組織「人民防衛隊」(YPG)と協力関係にある。IFBは、シリア北部ラッカの奪還作戦が最終局面に入る2カ月前の、今年4月に設立されたばかりだ。

TQILAはツイッターに、TQILAのメンバーは「ジェンダーの壁を打ち破り、女性革命や広義のジェンダー革命の推進を目指す」という声明を発表。

全体の人数やLGBTの人数は明らかにされておらず、TQILAのヘバル・ロジラト報道官は安全上の理由で公表しない、と本誌に語った。

「仲間の多くはLGBTQ*コミュニティー出身だ」と、彼は言う。「今まさにラッカで戦っている」

TQILA は声明で、LGBT部隊創設の動機は「世界中のファシストや過激主義者がLGBTを『病的』『異常』『不自然』などと侮辱し、数えきれないほど多くの仲間が殺される恐ろしい光景を目の当たりにしたから」だとしている。

「ゲイの男たちがダーイシュ(ISISのアラビア名)によって建物の屋上から突き落とされ、投石で殺される光景を見過ごせなかった」

声明はこう締めくくる。「撃ち返せ!同性愛者がファシストを殺す!」。そのロゴマークには、ピンクの地の上に黒いAK47自動小銃が描かれている。

シャリーア(イスラム法)に基づくISISの裁判所では、同性愛は死刑に相当し、厳格で耐え難い刑罰に処せられる。

2016年6月にオーランドのナイトクラブ「パルス」で銃を乱射し49人を殺害したオマル・マティーン容疑者は、犯行直前に現場から緊急通報用911に電話し、ISISの指導者アブバクル・バグダディへの忠誠を誓った。その後ISISは傘下のメディア「アマック」を通じて犯行声明を発表。バグダディが「同性愛者が集まるナイトクラブを狙え」と呼び掛けた。シリアやイラクでは、同性愛の話題そのものがタブーだ。

ISISは2014年半ばにイラクで台頭して以降、同性愛の疑いのある男性に目隠しをし、大勢の「観客」の前で建物から突き落とすプロパガンダ写真や映像を大量に公開してきた。突き落とされても死ななければ、観客たちが投石して殺す。

ISISの支配地域で暮らしたLGBTの証言によれば、ISISはLGBTコミュニティーの人々を捕らえると、彼らの連絡先を調べ上げ、いもづる式に同性愛者を見つけ出そうとしたという。ISIS支配下の3年間で数十人のLGBTが殺害され、他にも大勢が避難した。

ラッカ奪還作戦でTQILAが実際にどれほど戦っているかは不明だ。もし彼らがISISに対する最後の一撃に貢献できれば、LGBTコミュニティーにとっては最高の勝利だ。その夢が実現したら、かつてISISの旗が立っていた場所に旗を立てる、とロジラトは言う。「TQILAの旗と、LGBTを象徴する虹色の旗だ」

*LGBTQ=レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クエスチョニング(性的志向が定まっていない人)


(翻訳:河原里香)

ジャック・ムーア

記事提供社からのご案内(外部サイト)

ニューズウィーク日本版

CCCメディアハウス

2017-11・28号
11/21発売

460円(税込)

他の日本のメディアにはない深い追求、
グローバルな視点。
「知とライフスタイル」のナビゲート雑誌。