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【テレビの開拓者たち / 名城ラリータ】「木村拓哉さんが僕をディレクターにしてくれた」

7/31(月) 10:00配信

ザテレビジョン

国民的人気バラエティーの「笑っていいとも!」(1982~2014年)や「SMAP×SMAP」(1996~2016年)をはじめ、「ココリコミラクルタイプ」(2001~2007年)、「もしもツアーズ」(2002年~)など、フジテレビ系のヒット番組に数多く携わってきた演出家の名城ラリータ氏。タモリ、SMAPといった大物芸能人たちと仕事をする中で、バラエティー作りの面白さに目覚めたという彼の演出法や編集スタイルとは? ディレクターになるきっかけを与えてくれた木村拓哉とのエピソードや、今お笑いファンが最も注目する番組の一つ「全力!脱力タイムズ」(2015年~フジ系)の制作秘話を交えながら、笑いを生み出す演出家としての矜持や、テレビマンとしての今後の夢を語ってくれた。

名城ラリータ氏は現在「冗談手帖」(BSフジ)の演出も担当。放送作家・鈴木おさむが若手芸人に“売れるためのアドバイス”を施す新趣向のお笑い番組

■ 「笑っていいとも!」は現場にいるだけでワクワクするような番組でした

――名城さんは、もともとバラエティー番組が好きだったんですか?

「今でも強烈に印象に残っているのが、小学生の頃に見た『夢で逢えたら』(1988~1991年フジ系)のオープニング。確か、サザンオールスターズの『女神達への情歌 (報道されないY型の彼方へ)』がテーマ曲だったのかな。毎週ドキドキしながら見てました。

あと、僕は沖縄出身なんですけど、同時期に『お笑いポーポー』(1991~1993年RBCテレビ)という伝説的なお笑いコント番組が放送されていたんですよ。全編方言でやっている感じの沖縄ローカル番組。笑いのレベルとしてはどうだったのか…何とも言えませんけど(笑)、大好きだったんです。当時は、コントとは何かということも分かってなかったですけど、夢中で見てましたね」

――ということは、この業界に入られたときから、お笑い志望だったわけですか?

「そういう原体験がありますから、面白いものは好きでしたけど、どちらかというとバラエティー志向ではなく、ドラマっぽい感じの笑いというか、笑いの“作品”に携わりたいなと思っていたんです。だから、最初にADとして『笑っていいとも!』に参加したときは、『なんだ、バラエティーか…』って。今考えたら、何てことを思っていたんでしょうか(笑)。で、いざ始まってみたら、現場にいるだけでワクワクするような番組だったんですよ」

――どんなところにワクワクしたんでしょうか?

「『いいとも!』は生放送ですから、お昼の12時に始まって、必ず12時58分に終わりますよね。絶対に時間内に収めないといけない。だから、『番組を成立させないと』という意識で、いつも時間と闘っていたんです。それは新鮮な体験で、すごく楽しかったですね。結局、『いいとも!』のADは2年ぐらい務めたのかな」

――当時のタモリさんの印象は?

「タモリさんって、とにかく『何でも好きなようにやりなよ』って感じなんです。打ち合わせに行っても、『はい、はい、はい』で終わっちゃう(笑)。かと思えば、瞬間、瞬間で面白いと思ったことを選択して実行する方だから、とんでもない行動に出たりするんですよ、生放送なのに」

――例えば、どんなことを?

「僕はちょうどDAIGOさんがレギュラーメンバーになったときの担当だったんですけど、ちょうど人気が出てきた時期だったこともあって、スタッフとしては、彼にいろんなものを背負わせようとしたんですね。いわば、DAIGOをどうやって“いいとも風”に加工するかを考えたわけです。ところが、本番中のタモリさんはホントに自由で(笑)。スタッフのコンセプトを、その場の感性でどんどん壊してくるんです。しかも、そんなタモリさんに助太刀するかのように、爆笑問題の太田(光)さんまで悪ノリして大暴れ、という(笑)。結果、台本とは全く違う流れを作ってしまう。でもそのときに僕は、改めてバラエティーってすごいなと思ったんですよね」

■ その人にフィットした笑いが一番面白い

――ADからディレクターになられたのはいつごろですか?

「『いいとも!』の次に、『SMAP×SMAP』のチーフADを1年ぐらいやって、その後ディレクターになりました。チーフADのころにお世話になっていた先輩の女性ディレクターが異動になったときに、木村拓哉さんが『これからはラリータとやりたい』と言ってくださったんです。木村さんは、とても気さくで話しやすい方なんですが、コントを作るときは真剣そのもの。僕らスタッフが考えたコンセプトを、自分なりに膨らませながら、真面目に一生懸命取り組んでくださるんです。その姿勢を間近で見ることができて、非常に勉強になりましたね。その意味では、木村さんが僕をディレクターにしてくれたと言っても過言ではないと思っています」

――名城さんが番組を作る際、一番に心掛けていることは?

「笑いに主軸を置いた番組においては、その演者さんに合った笑いの作り方をする、というのが僕の信条です。最近の視聴者の方々は、番組を見ているというより、“人”を見ているような気がするんですね。だから、その演者さんを面白く輝かせるためには、どんなやり方がベストなのか。例えば、木村さんだったら『かっこいい』という世間のイメージを逆手に取って、それをコントの“振り”に使ったり。やっぱり、その人にフィットした笑いが一番面白いと思うんですよ」

――そうなると、出演者とのコミュニケーションも重要になってきますね。

「ええ、それは大事ですね。どんな若手の芸人さんでも、間違いなく、僕らよりは多く舞台に立っている。僕らが一つの番組にかける時間って、収録がだいたい月に2回ぐらいで、あとは会議とか編集ばっかり。もちろん、それはそれでテクニックが必要なんですけど、僕らがそんな作業をしている間も、芸人さんは人の前に出て、大勢の人を笑わせているわけですよね。笑いのスキルという意味では、そんな人たちに僕らが敵うはずがない。ですから、どんな芸人さんでも、『この人は自分よりも経験豊富なんだ』という敬意を持って接しています。年齢は関係ないですね。

あと、実は演出って、打ち合わせでしゃべっているときから始まっていたりもするんです。場を盛り上げて気持ち良く乗せて本番に向かってもらうのも演出だし、僕らがしっかりと方向性を示すのも演出。ちなみに、『オモクリ監督 ~O-Creator's TV show~』(2014~2015年フジ系)でご一緒したロバートの秋山(竜次)さんは、僕らスタッフに何でもはっきりと言ってほしいタイプ。こっちがどう思っているのかを伝えないと不安になるみたいです(笑)。ともあれ、いろんなコミュニケーションの形をうまく使い分けることが大切なんだと思います」

■ 今だから作れるものがまだまだいっぱいあるはず

――放送中の「全力!脱力タイムズ」では、くりぃむしちゅーの有田哲平さんとタッグを組んでいますね。

「有田さんからも日々、いろんなことを教わっています。有田さんがすごいのは、必ずヒットが打てる人なんですよ。みんなで番組について考えているときでも、すごく面白いアイデアが出てくる。それを具現化するのが僕らの仕事なので、大変は大変なんですけど(笑)、その発想力や瞬発力は本当にすごいなと」

――その上で、有田さんとはどのようなコミュニケーションを?

「報道番組という設定で面白く見せるにはどうすればいいのか、というのがこの番組の基本コンセプトなんですが、それを踏まえて毎回、僕らがテーマとキャスティングを決めて、それを有田さんに伝えています。そのときに有田さんから、今回のゲストの役者さんは、こういう風にボケるより、こっちのボケ方のほうが面白いかも、といったアドバイスをいただいたり」

――ほかに、この番組ならではの工夫点はありますか。

「この番組では、実はゲストの芸人さんにはちゃんとした台本を渡していないんです。偽の台本を渡してるんですよ。だからその分、芸人さんが無理せずに立ち回れる環境を作るように心掛けています。じゃないと、芸人さんから嫌われちゃうので(笑)。

あとは、編集にもけっこう神経を使ってますね。例えば、解説委員の方が、女優さんの話はしっかり聞くのに、芸人さんの話には全く耳を貸さない、というシーンがよく出てくるんですけど(笑)、僕としては、視聴者の皆さんに、芸人さんがツッコむよりも先に、その何とも言えない空気を感じ取ってほしいんです(笑)。だから、そのためにあえて編集で“間”を作るようにしています。今の時代は、間を空けずにすぐツッコんだほうが見やすいし、分かりやすい。それは重々承知してるんですけど、できればこの番組は、“ながら見”ではなく、“前のめり”で見ていただきたいんです。

テレビを作る立場としては、“前のめり”で見てもらおうなんて、間違った考え方なのかもしれませんね。クイズ番組だって、問題が出たあとにすぐ答えが分かるような、“ながら見”できる構成のほうが受けるでしょうし。でも、こんな時代だからこそ、こういう作り方をする番組が一つぐらいあってもいいのかなと思うんです」

――では、『脱力タイムズ』の今後の展望は?

「今お話ししたように、“ながら見”がしにくい番組だからこその悩みなんですけど、『脱力タイムズ』って、途中から見られたら困ることがいっぱいあるんですよ(笑)。僕らとしては、冒頭からネタを振って、伏線を張って、という番組の細かい仕掛けを楽しんでほしい、という思いはもちろんありますけど、とは言いながら、どこから見ようが、それは視聴者の方の自由ですから。だから今後は、どうやったら面白さが伝わるのか、さらに工夫が必要だと思っています。

でも、そういう意味では今、これまでになかった新しいタイプのコントを作るチャンスなのかもしれない、と僕は考えていて。確かに、ストーリー性のある長尺のコントは作りにくい時代ですけど、そこで、短くて楽しめるコントを作るのか、それとも『脱力タイムズ』みたいに、あえて間を作って勝負するのか。今だからこそ作れるものがまだまだいっぱいあるんじゃないかなと思うんです。僕らテレビマンにとっては、むしろラッキーな時代なのかもしれませんね」

最終更新:7/31(月) 10:00
ザテレビジョン

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