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『巨人の星』はインドでも虐待アニメ――今、法律のウラとオモテで起きていること

8/1(火) 15:02配信

サイゾー

――虐待を受けた「わたしたち」に残ったものとは? よじれてしまった家族への想いを胸に、果たして、そこに再生の道はあるのだろうか。元・被虐待児=サバイバーである筆者が、自身の体験やサバイバーたちへの取材を元に「児童虐待のリアル」を内側からレポートする。

あなたは本当に「虐待の定義」を答えられるだろうか

 2012年、スポ根アニメの草分けである『巨人の星』(原作・梶原一騎、作画・川崎のぼる)がインド版アニメとしてリメイク放送された。製作当初、インド側のスタッフから「大リーグボール養成ギプスは、児童虐待に当たる」ということで拒否されたらしい。確かに筋力強化のためとはいえ、現実の小学生に拘束具を使っていたら、やはりやり過ぎだろう。だがトレーニングに苦痛はつきもの。道具を使わないにせよ、どこまでが虐待かという線引きはなかなか難しい。

 今やすっかりメジャーになってしまった「虐待」というキーワード。しかし、そもそも児童虐待とは、どんな行為を指すのだろうか?

「“親”が子どもに“暴力を振るう”こと」。

 でも、これだけでは不正解。言葉で脅したり、食事を与えなかったりするなど、直接手を挙げない行為も存在するからだ。では、法律での扱いはどうなっているのだろう。虐待対応の基盤となる「児童虐待の防止等に関する法律」(通称:児童虐待防止法)では、次のように定められている。

――保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。

“次に掲げる行為”には、直接的な暴力以外にも、わいせつ行為や育児放棄などさまざまな内容が記されている。つまりは「保護者が子どもに耐えがたい苦痛を負わせる」こととも言えるが、実はこれでも実態とは遠くかけ離れている。サバイバーたちに話を聞いていくと、「加害者=保護者」ではないケースも多いからだ。

 例えば、「高校生になっても、年の離れた兄から毎日グーで殴られていました」という40代女性や、「両親が離婚して父に引き取られたが、その実家で親戚一同から暴行にあっていた」という女の子もいる。

『法律家が書いた子どもを虐待から守る本』(中央経済社)の著者であり、子どもの虐待根絶を目指すNPO法人「Think Kids」の代表理事も務める後藤啓二弁護士は、児童虐待防止法上の虐待における“加害者の定義の狭さ”の弊害を指摘する。

「法律の定義では、同居して面倒を見るなどしていない限り、祖父母や親の愛人、親戚や兄弟姉妹などは対象外です。2011年に姫路市で起きた姫路市虐待重体事件では、児童相談所が法律を限定的に解釈し、“虐待行為が疑われていた母親の交際相手”について事情を聴かないままにし、この男による更なる虐待行為を防げませんでした」

 野放しになった母親の愛人、その顛末はどうなったのだろうか?

「結局、子どもを重体に陥らせた後に、警察がこの男を逮捕しました。しかし、児童相談所が細かい文言にこだわらず適切に対応すれば、防ぐことができたはずです。児童相談所のこのような消極的な対応により虐待と認知されない案件がまだまだあると思いますので、行為者の定義をもっと広げる必要があります」

 これらの発言からもわかるとおり、現在の日本の法律では、虐待を一言で定義することは非常に困難なのだ。こうして法の網目からこぼれおちる虐待や、そこから生き抜いてきたサバイバーがいる。ああ、なんてつかみどころがないんだろう。

 つかみどころがないからこそ、わたしたちは隣の家から子どもの泣き声が聞こえたときにどう行動していいかうろたえてしまうし、「自分が虐待者になる可能性」に怯えるのかもしれない。虐待の経験がある人も、またそうでない人も、得体の知れない迷路の中で迷うことがあるんじゃないかと思うのだ。

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最終更新:8/1(火) 15:02
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