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スマートフォンよりリアルな漫画の世界──プラダ 2018年春夏コレクション

8/1(火) 12:12配信

GQ JAPAN

ミウッチャ・プラダは、ファッションデザイナーとしてだけではなく、キュレーターとしても秀逸である。2018年春夏は台湾出身の気鋭のアーティスト、ジェームス・ジーンをフィーチャーしている。

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エントランスを抜けるとそこは雪国、ではなく漫画の世界だった。ミラノのプラダ本社のショースペースは、内装をシーズンテーマに合わせて完全に作り変えることで知られている。今シーズンの主役は、ジェームス・ジーンのイラスト。四方の壁は、コミックのページのように黒線の“コマ”で区切られていて、目からビームを発射する猿や、人間の目や手、機関車などが描かれている。コミックの世界に紛れ込んでしまったような不思議な空間である。

今回、ミウッチャ・プラダが掲げた主題は「コミックと現実世界の共存」。人間が手書きで作り上げた物語(=漫画)は、スマートフォンに支配されている現実の人間社会よりリアリティがある、ということなのだろうか? じっさいジーンの作品は、壁面と同じように服にも投影されているが、なんら違和感なく馴染んでいた。

全体的な雰囲気は、いつもよりユースカルチャーの匂いが強く若々しい。アイテムは50年代から80年代までのものが、テーマと共鳴するように共存している。50年代風のボーリングシャツがあれば、60年代初冬のアメリカを連想させるポインテッド・トウのUチップシューズ(甲にはパーフォレションによって穴が開けてある)もあり、クラシックな自転車競技用のユニフォームもあれば、ミウッチャがボイラースーツと呼ぶ労働者のユニフォーム的なものもある。だから、何年代とか何々系とかでカテゴライズするのは不可能である。

スタイリングも挑戦的だ。シャツやブルゾンの襟を立てた着こなしは、80年代のバブル期の日本の大学生のような雰囲気。ボイラースーツの上にクラシックな仕立てのカシミヤコートを羽織った着こなしは、違和感があって当然のはずなのに、不思議と溶け込んでいる。

今シーズンのミラノのメンズ・ファッションウィークは、会期が3日間に短縮された(例年は4日)。グッチ、ボッテガ・ヴェネタ、エトロなどのビッグメゾンが、メンズとウィメンズを合同でウィメンズのファッションウィーク中に見せる流れが加速しているのと、めぼしい新人が現れていないのが主な理由だ。そんななかで、ここ数年は男女を混ぜて見せていたにもかかわらず、プラダは敢えてメンズのみのショーを行った。衰えを知らない若々しい感性とともに、「ミラノのメンズは私が盛り上げる」というミウッチャの気概を感じたコレクションだった。

Kaijiro Masuda

最終更新:8/1(火) 12:12
GQ JAPAN

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