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災害派遣に不向き「AAV7」

8/1(火) 8:43配信

Japan In-depth

【まとめ】 ・水陸両用装甲車、通称「AAV7」は災害派遣に不向き。 ・運搬が難しく、踏破性能が低いので、島嶼防衛にも向かない。 ・戦闘と災害救助のバランスを取ったコストパフォーマンスの高い装備の調達を行うべき。

防衛省は島嶼防衛に必要であると水陸両用装甲車、AAV7を導入した。そのときこの車輌は災害派遣にも有用であると、その必要性をアピールした。だがAAV7は島嶼防衛にも災害派遣にも向かない。災害派遣に使える装備は実は充実しておらず、災害派遣は現場のガンバリズムに頼っているのが現状だ。

7月九州北部では豪雨に見舞われ、豪雨被害の死者は35人、行方不明者は6人(7月26日現在)、となっている。今回の被災現場には消防の汎地形車輌、レッドサラマンダーが投入された。

これはシンガポールの総合軍事メーカー、STK社が開発した二連結の装軌式の水陸両用車輌で、前後の車体の連結部分が回転し、また幅広のゴム製履帯を有しており極めて低い接地圧を実現している。

またニ連結方式のために起伏の激しい場所でも確実に、前方ないし後方のどちらかの履帯が接地する構造になっている。このため極めて高い不整地走行能力を有しており、沼沢地や雪原でも活動が可能だ。

サラマンダーの原型は装甲車であるブロンコだが、これはBAEシステムズ社傘下のヘッグランド社の同様の車輌Bv 206S、BvS 10などを参考に開発され、当初は軍用の装甲車両として開発された。BvS 10はバイキングの名称で、英海兵隊で採用され、英軍のアフガンにも投入用された。その他スウェーデン、オランダ、フランスなどの多数の軍隊でも採用されている。ブロンコもまた英海兵隊で採用されている。

このような水害の際にはレッドサラマンダーのような不整地走行能力が高い水陸両用車輌が非常に有用な装備である。ご案内のように陸自が採用した水陸両用装甲車、AAV7は大災害にも有用だと納税者にアピールされてきたが本当だろうか。

AAV7は最大25名の兵員の搭乗が可能で、海上を最大時速13キロで移動できる。

確かにAAV7は東日本大震災のような津波の後では、海からのアプローチは可能だ。だが、それならば海自はビーチングが可能なLST戦車揚陸艇などを調達した方が余程多くのモノが搭載できる。

ところがこのような揚陸艇を海自は殆ど持っていない。昭和62年、平成元年に進水した輸送艇1号、2号(基準排水量420トン)の2隻があるだけだ。揚陸の主力はおおすみ級輸送艦に搭載されているエアクッション艇であるLCACが6隻だけだ。LCACは調達・維持費が高い割には使い勝手が悪い装備だ。揚陸できるのは砂浜だけ、しかも後進ができないので、方向転換するためにはかなり広い砂浜が必要であり、揚陸地点が限定される。揚陸作戦も勿論だが、このようなビーチングが可能な揚陸艇は災害派遣に極めて有用だ。海自のようにほぼLCACしか持っていない海軍は世界に存在しない。

AAV7は上陸後そのまま活動できる利点はあるが、戦車が搭載できるLSTほど搭載量が多くはない。しかも戦闘重量26.5トン、全長8.16メートル、全幅3.27メートル、全高3.3メートルと図体が大きいので、狭い国内では使い勝手が悪い。また履帯の幅は53センチであり、エンジン出力を車体重量で割ったパワー・ウエイトレシオは、15.83hp/t、接地圧は59kg/m、登坂力は60パーセントで路外走行能力が低い。しかも図体が大きいで起伏が多い場所では車体底部がつかえて立ち往生しやすい。

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最終更新:8/2(水) 10:17
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