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埼玉愛犬家殺人事件解明されなかった真実   深笛義也

8/1(火) 12:17配信

創

同じ確定死刑囚の夫は今年3月に病死

 死刑囚の風間博子さんが、出版社と著者を名誉毀損で訴えている。
 風間さんの名を聞いて、ピンとくる読者は少ないだろう。1993年に起きた埼玉愛犬家殺人事件で起訴され、2009年に最高裁で死刑判決が下された、確定死刑囚だ。
 風間さんが訴えているのは、昨年12月に出版された『仁義の報復 元ヤクザの親分が語る埼玉愛犬家殺人事件の真実』の著者の高田燿山氏と、発行元の竹書房だ。
 埼玉愛犬家殺人事件の犠牲者は、4人。そのうちの1人は、暴力団の高田組の組長代行だった。その親分格に当たるのが高田氏である。同事件では、風間さんの元夫の関根元氏も起訴され確定死刑囚となった。高田氏は事件当時、自分の子分を殺したのが関根氏だということを独自に突き止め報復を試みたが警察に止められた、といった内容が同書には書かれている。
 関根氏は本年3月27日、東京拘置所内で多臓器不全によって、75歳の生涯を閉じた。死の直前まで面会を続けていた、彼の弁護人であった村木一郎氏は、私に伝えてくれた。
「関根さんはまだ本を読める状態でしたので、差し入れました。東京拘置所の病舎で何もすることのない関根さんはすぐに読み終えて、内容の杜撰さに笑っていたのが印象的でした」
 心臓に水が溜まる「心タンポナーゼ」を患い関根氏は治療を受けていたのだ。殺害を行ったと自ら認めている関根氏が、自分のことを書いた著書を笑うというのは、相変わらずの不貞不貞しさだが、「杜撰」という点は、この事件を徹底的に調べた私も同感だ。
 たとえば、こんな記述がある。
「『関根の自宅の庭には死体が埋まっている』というのは、以前からまことしやかに噂されていた。狭い街であり、話には面白おかしく尾ひれもつくものであろうが、やはり火のないところに煙は立たないものだ」
 その噂が事実なら、捜査当局が遺骨を掘り起こしているはずだ。また、遺体を焼却した場合もあるとして、こう書かれている。
「コールタールを入れて高温で焼けば、ドラム缶自体も激しく損傷する。何度もドラム缶を買い換えていれば、『真夏なのに、いつも臭い焚き火をしている』と、近所で変な評判にならないはずはない」
 肉を焼けば匂いがすることを、関根氏は知っていた。だから、遺体の肉はサイコロステーキほどに細かく解体して川に流している。骨だけを粉になるまで、廃油を注いだドラム缶で焼いたのだ。
 関根氏が「ボディを透明にする」と語っていた通り、遺体をほとんど消滅させたのが、この事件の本質である。その記述が不正確であるのだから、他も推して知るべしである。
「真実」と銘打っていたとしても虚偽を書くことそのものは、違法にはならない。筆者の信用が落ちるだけだ。

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最終更新:8/16(水) 13:42

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