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会社員が誤解しがちな「フリーランス」の働き方とその実態

8/1(火) 6:40配信

@DIME

 1か月ほど前、人事雑誌の企画「フリーランス」についての記事を数本書いた。担当編集者やその上司である部長や、取材相手の10人前後は全員が会社員だった。フリーランスである私は、この12人ほどがフリーランスのことを誤解しているように思った。それは、「不勉強」といえるのかもしれない。フリーランスがあたかも「自由気ままな身」であり、「経験や才能で生きる自由業」ととらえているようだった。それに近いことを語る人が、12人のうち、10人近かった。今回は、会社員が陥るかもしれないこの大きな誤解について、私の考えを紹介したい。

■フリーランスの生活は厳しい

 私が彼らの回答で最も驚いたには、フリーランスを「自由の象徴」としてとらえていることだった。会社員たちは、取材時にこんな意味合いのことを語っていた。「フリーランスは会社に行くこともなく、場所も時間も自分の判断で決めることができる。仕事の内容や取引先なども、自らの意志で選ぶ」。

 フリーランスを12年間している私は、言葉を失った。フリーランスのことをあまりにも知らなさすぎるからだ。厳しい現実を知らなさすぎる。確かに、ある調査の結果を見ると、フリーランスの人は「仕事をする場所や時間の自由度がある」「自分の好きな仕事ができる」といったことを大きな理由にして会社などを離れ、生きていることがわかっている。この調査は、中小企業庁委託「小規模事業者の事業活動の実態把握調査~フリーランス事業者調査編」(2015年)を意味する。

 しかし、これは、「調査に答えた人の数を集計した結果」である。そのことは、「仕事(取引先)を選ぶことができる」人の数を意味するものではない。そもそも、果たして「仕事(取引先)を選ぶことができる」人は、フリーランスの中でいったいどのくらいの数であるのか、それは本当に「選んだ」とまで言い切れるのかどうか。実は、そんな調査は、私が調べつくしてもない。おそらく、今回、私が接した会社員や編集者もまず知らないはずだ。それでもなおも、フリーランスを「自由の象徴」とみる。

■年収300万円以下を抜け出すことは難しい

 私の経験でいえば、仕事を本当に自分の意志で選ぶためには、フリーランスとして年収が少なくとも600万円(月に額面で50万円)を超えないと、しかも、その状態が丸2年間ほどは継続しないと難しい。600万円以下のレベルの人は、仕事を「選ぶ」レベルの実力や実績、キャリアはあまりないはずなのだ。私は、この12年間でフリーのライターやデザイナー、カメラマン、編集者などを70~80人以上と接点があるが、600万円以上の収入を3年以上継続している人は5~6人しかいないと思われる。おそらく、平均年収は300万円前後のはずなのだ。

 実は、年収300万円が日本のフリーランスの平均年収の1つのモデルになるものだ。前述の中小企業庁委託「小規模事業者の事業活動の実態把握調査~フリーランス事業者調査編」(2015年)では、調査対象のフリーランスの6割が「年収は300万円以下」と答えている。預貯金は、6割が「300万円以下」と回答する。しかも、「直近3年で、売上が横ばい」と答えたのは5割、「売上が減った」という回答は3割。あわせて、8割が「横ばい・減った」となっている。

 ここからは私の考えだが、売上がこれほどに伸び悩むのだから、多くのフリーランスは年収300万円以下を抜け出すことをできていないはずなのだ。この収入では、首都圏で家族を養って生きていくことは、生活上の相当な工夫をしない限り、難しい。だからこそ、アルバイトなどをして本業の収入を補っている人がいる。それでもなおも収入が足りない場合があり、次々と廃業し、会社員に戻っているのだ。これが、知られざるフリーランスの1つの断面である。

■目の前の現実から逃げている

 ところが、今回の取材で接した会社員や編集者は、この厳しい現実をかたくなに受け入れようとしない。中には、「学生時代の友人はフリーランスをしていて、年収1200万円前後」などと話す人もいた。友人がそのように話していたとしても、それが事実とは言い切れない。源泉徴収のような根拠があるならば、ある程度は信用できるかもしれない。そのような明確なものがないと、フリーランスの収入を立証することはまずできない。仮に「年収1200万円前後」が事実であったとしても、それはフリーランス全体の中でわずか数パーセント以下のはずだ。半数以上が、300万円以下と答えているのだ。

 では、なぜ、私が取材で接した会社員や編集者は、このような極めて珍しい人のケースを堂々と持ち出すのだろうか。「フリーランスの実態を知らないから」と言えばそれまでだが、私が思うに、彼らは「夢」を語っているのだと思う。現実離れした、空想に近い話だ。

 現在の会社員としての扱い(昇進・昇格、所属部署、担当の仕事、収入、社内などの評価、同世代との出世争いなど)に何らかの不平や不満があるのではないだろうか。その現実から目をそらしたがいがために、逃げたいがために、事実であるかどうかも定かではないレアなケースを持ち出したりするのだと私は思う。実際、私が接した会社員や編集者12人ほどのうち、8~9人が現在の職場に不満をもっているようだった。「会社を辞めたら、もっと活躍できる」と明言した人もいた。だが、なぜか、辞めようとしない。

 フリーランスの生き方は、ある面では確かに「自由」ではあるのかもしれない。しかし、失ったものも少なくない。多くの会社員が、手にしているはずの生活をしようとしてもできない人がこの世界には多数いる。会社員に戻ろうとしてもできない人もいる。会社員はこのような影の部分にも目を向けるとなく、安易に退職し、フリーランスになると、やがて取り返しのつかない人生になるかもしれない。それでもなおも、フリーランスになりたい人こそが選ぶべき選択肢ではないか。

文/吉田典史

@DIME編集部

最終更新:8/1(火) 6:40
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