ここから本文です

柴崎岳、リーガ1部ヘタフェ適応のカギ。定位置確保へ、期待抱かせたスタートの1週間【現地記者の目】

8/1(火) 12:28配信

フットボールチャンネル

 2016/17シーズンはリーガ2部のテネリフェに在籍し、2017/18シーズンからはヘタフェでプレーする柴崎岳。今季から1部に返り咲いたマドリード近郊のクラブに適応するためのキーポイントは何になるだろうか。クラブを取り巻く環境、チームの構成などからスペイン・アス紙のヘタフェ担当記者が考察する。(取材・文:ホセ・アントニオ・デ・ラ・ロサ【ヘタフェ/アス】、翻訳:フットボールチャンネル編集部、協力:江間慎一郎)

【動画】やはり危険な技だった! キャプ翼必殺シュート挑戦

●かつてはレアルやアトレティコを応援する人が多かったベッドタウン

 柴崎岳は、ヘタフェが行ったプレシーズン最初の親善試合でデビューを飾った。先発での出場ではなく、ハーフタイム後に出場して45分間のプレーだった。セグンダBのアルコジャーノと1-1のドローに終わり、全体的には低調な一戦だったが、中盤でプレーした日本人は正確なプレーを披露していた。

 それほどプレーに絡む機会は多くなかったが、よく働く姿勢を見せ、パチェコとともにCKキッカーも務めて組み立てにも携わっていた。素晴らしい1日ではなかったとはいえ、まだ結論を下す時ではない。時間はこれから十分にある。

 柴崎岳が世界最高のリーグのひとつに挑戦するにあたって、そのデビューの場所として選んだチームを見渡してみよう。ヘタフェはマドリードの南に位置し、スペインの首都のベッドタウンのひとつとして約18万人の人口を有する。

 マドリードからわずか15kmほどの距離で、労働者層が主に居住している。このことが、ヘタフェというチームとそのサポーターに様々な特異性をもたらしている。

 ヘタフェが初めてトップリーグに昇格した2004年以前には、この町の住民の多くは通常レアル・マドリーかアトレティコを一番に応援しており、ヘタフェは2番目だった。近年ではそれが変化しており、周辺を取り巻く社会集団が成長することでクラブは独自性を獲得している。

 こういった側面は、柴崎が適応するにあたってプラスの要素となるかもしれない。スペインと欧州の頂点を目指して戦う2つのビッグクラブの存在は、その周辺のクラブをしばしば日陰に追いやっている。

●メディアのプレッシャーは少なく、非常に家族的な雰囲気

 ヘタフェに対し、メディアからのプレッシャーはほぼ皆無に近い。非常に家族的なクラブであり、トップリーグのクラブとしてはスタッフ数も少ない。ここで過ごした選手たちの誰もが、落ち着いて仕事ができる環境であることを強調している。

 その一例として、ヘタフェの選手たちは毎朝スタジアムから練習場まで200メートルの距離を歩いて通っている。人々に紛れて通りを歩いて行く姿は、プリメーラのほとんどのクラブではあり得ないものだ。レアルやアトレティコは言うまでもない。

 アンヘル・トーレスがやって来るまでは、クラブは経済的に困窮していた。今から16年前、当時のヘタフェ市長であったペドロ・カストロは親しい友人であるトーレスに対し、クラブ消滅を回避するため会長を務めてくれるよう依頼した。

 叩き上げの建築事業家であり、レアル・マドリーのソシオでもあり、すでにヘタフェの役員も務めていたトーレスは、これに応じて自身の会社でヘタフェを全面買収した。

 現在では慎ましくも安定したクラブであり、経済的な問題は抱えていない。会長就任から3年間でヘタフェをセミプロからプリメーラ昇格にまで導いたのは全くの予想外であり、奇跡的とも言うべき結果だった。

 ヘタフェは12シーズン連続でプリメーラに残り、その後降格を味わったが1年で再びトップリーグに返り咲いた。その初期には近隣のクラブや、友好関係にあるバレンシアから若いタレントを獲得。彼らの多くはレンタルで加入し、コリセウム(ヘタフェのホームスタジアム)で選手として開花することができた(アルビオル、デ・ラ・レー、パレホ、ガビなど……)。

 その後は特定の選手に依存しないで済むよう、経験豊富な選手たちを獲得してきた。ヘタフェ・クラブ・デ・フットボルという現在の名称ではまだ誕生から34年しか経っていないクラブだが、今では「ヘタ」は自分たちよりもはるかに格式あるクラブと付き合うことができている。昇格を果たした後の目標は残留でしかあり得ないが、近年の経験を通して、ヘタフェは降格候補の筆頭に挙げられるようなクラブではなくなっている。

●12月時点では断念も、以前から望まれていた柴崎の獲得

 柴崎の獲得は、以前から望まれていたことであった。クラブの前スポーツディレクターであるトニ・ムニョスはすでに彼について非常に良い選手だという情報を得ていた。だがクラブ・ワールドカップでの傑出したパフォーマンスや、ヘタフェが12月時点で置かれていたチーム状況は、獲得の断念へと繋がった。

 それでもヘタフェは彼を追い続け、プリメーラ昇格を決めて獲得のチャンスが訪れると、新たなスポーツディレクターであるラモン・プラネスが先頭に立って全力で彼を獲りにいった。

 12月の時点では、彼を獲得することで生まれたであろうメディアの喧騒は不都合なものだったが、今は全く正反対だ。プリメーラ復帰を果たしたヘタフェには、レアル・マドリーとの決勝で2ゴールを奪った日本人選手のような華がふさわしい。陽の当たらないセグンダで過ごした短い時期を終え、再び国際的に注目を受ける状態へと戻ることができる。

 だが、それが彼を獲得した一番の理由ではないことは間違いない。チームを昇格へ導き、引き続き指揮を執るホセ・ボルダラス監督は、ボールを自在に操る彼のプレーや彼のキックに魅せられている。監督もクラブも、柴崎がプレーの組み立ての中で重要な役割を果たし、チームの戦いにスピードを与える存在となることを確信している。

 理想的なポジションがどこであるかについては、少々迷いもある。中盤のセンターで技術を発揮できる選手ではあるが、ボルダラスはそのエリアにはよりフィジカルの強いタイプを好んでいる。

 アルコジャーノという格下相手には柴崎をそのポジションで試したが、彼がまずやるべきことはチームに馴染み、守備面の仕事をこなすことだ。先発メンバーに名を連ねるためにはそれが欠かせない。

●最も適応の見込みがあるポジションはトップ下か

 このポジションでプレーするためには、ラセンと争うことになる。アルジェリア代表として前回のワールドカップに出場し、高いクオリティーを持っているとはいえ、キャリア最高の時期はすでに過ぎた選手だ。シーズンが開幕する前には、クラブが他にも新たな中盤の選手を獲得することは間違いない。

 ボルダラスのシステムの中で、柴崎により適する見込みがあるポジションはトップ下だ。ポルティージョとの争いは熾烈なものとなるだろう。柴崎と並んでチーム内で最も高い技術を持った選手だ。テネリフェのマルティがやっていたように、ボルダラスが柴崎をサイドに起用する可能性は低そうだ。

 リーガ開幕まではあと3週間。柴崎岳はこの期間中にチームに適応し、プリメーラでの戦いという挑戦に臨む準備ができていることを示さなければならない。スペインで最も美しく近代的なスタジアムだと言えるサン・マメス(ヘタフェの開幕戦の相手であるアスレティック・ビルバオのホームスタジアム)での戦いは8月20日に待ち受けている。

 柴崎の最初の1週間は期待を感じさせるものであり、まずまずのデビューを飾ることもできた。世界最高のリーグのひとつで戦う初めてのシーズンに重要な選手となることができるかどうか、ここからチーム内での彼の立ち位置を決めていくのはピッチ上でのパフォーマンスだ。次のチャンスは水曜日、アルコジャーノと同じくセグンダBのアトレティコ・バレアレスとの親善試合が予定されている。

(取材・文:ホセ・アントニオ・デ・ラ・ロサ【ヘタフェ/アス】、翻訳:フットボールチャンネル編集部、協力:江間慎一郎)

フットボールチャンネル

記事提供社からのご案内(外部サイト)