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消費者物価の上昇を妨げる携帯電話関連値下げ

8/1(火) 8:29配信

NRI研究員の時事解説

<要旨>

2017年年初から、大手キャリアの携帯電話関連価格(通信費と端末機価格)の下落がより顕著になり、消費者物価の前年比上昇率を0.3%程度も押し下げたとみられる。背景にあるのは、格安業者との競争激化、大手キャリア間の競争激化、及び通信費抑制を目指す政府の方針の影響などである。この点は、政府が日本銀行の2%の物価目標達成を助けることを必ずしも優先的には考えてない証左とも言えるのではないか。当面はなお消費者物価の前年比上昇率の押し下げ寄与が拡大する余地があろう。

携帯電話関連が消費者物価を0.3%程度押し下げ

2017年年初から大手キャリアの携帯電話関連価格(通信費と端末機価格)の下落がより顕著になり、消費者物価の前年比上昇率を合計で0.3%程度も押し下げたとみられる。その背景にあるのは、格安業者との競争激化、大手キャリア間の競争激化、及び通信費抑制を目指す政府の方針の影響などである。

携帯通信料については、2016年からNTTドコモを中心に3大キャリア(NTTドコモ、au、ソフトバンク)が低容量の低料金プランを導入したが、2017年に入ってからは、NTTドコモが低料金プランの値下げを実施している。携帯電話端末機についても、年初からNTTドコモが大幅な値下げに踏み切った。

サービス業の中でも、需給ひっ迫からむしろ価格に上昇圧力が掛かっている、建設業、飲食業、運輸業などがある一方、小売業と並んで通信業では値下げ圧力が高まる、という2極化傾向が顕著に見られるのである。

格安業者との競争が携帯電話通信費に値下げ圧力

携帯電話市場では長らく3大キャリアの寡占が続いたが、近年は格安業者(MVNO;仮想移動体通信事業者)のシェアが拡大している(推定1割程度)。格安業者は、自前の通信回線を持つ通信キャリアから回線を借り受け、自社ブランドで通信サービスを提供している。格安業者は、通信回線設置のための巨額な設備投資を実施しないことや、顧客向け店舗などを持たないことなどから、3大キャリアよりも安い通信料金を提供できる。さらに、格安業者が通信キャリアから通信回線を借りる際の料金は、総務省の業界向け指針の影響から低下を続けており、これが格安業者の提供する通信サービスのさらなる値下げを可能にしている。

ところで近年では、スマートフォンの普及に伴って動画サイトやアプリの利用が進み、データ通信量が増加している。その結果、家計の「携帯電話代」は加速的に増加しているのである。総務省の家計調査統計によれば、2016年の「携帯電話代」は世帯当たりの平均で年間9.5万円程度に達している。「携帯電話代」支出をできるだけ抑制したいという消費者のニーズのもと、安い通信サービスを提供する格安業者がシェアを伸ばしており、それへの対応から3大キャリアが通信費の値下げを余儀なくされているのが現状である。

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