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刑法改正により、男性のレイプ被害も対象となった強制性交罪。ただし教師のわいせつ行為には適用されず

8/1(火) 8:50配信

HARBOR BUSINESS Online

 性犯罪に関する刑法が改正され、7月13日から施行開始された。なかでも「強姦罪」は「強制性交等罪」へと名称が変更され、これまでの膣性交だけでなく、肛門性交、口腔性交も対象となり、男性も被害者に含まれることになった。

 刑法改正はこれまで戦後の日本国憲法制定に伴う「姦通罪」の廃止と、’03年に発覚した「スーパーフリー事件」をきっかけに「集団強姦罪」が創設されるなどがあった。しかし「強姦罪」の構成要件が改められるのは初めてだ。これは刑法が制定されて以来、110年ぶりの見直しとなる。

「女性と人権全国ネットワーク」共同代表の佐藤かおり氏は「以前から被害者の声があり、支援団体も要望していました。性暴力の被害にあっても、なかなか捕まえてもらえない現状があった。突然、刑法が改正されたわけではありません」と話す。

 改正のきっかけは’14年9月、松島みどり法務大臣(当時)の就任会見だ。松島氏は「女性の心身を傷つけ、人生を狂わせる恐れのある強姦が、物を奪う強盗よりも罪が軽い。刑法を改正したい」と述べ、その上で性犯罪厳罰化のための検討会の設置を指示した。同年10月からは法務省の「性犯罪の罰則に関する検討会」で議論が始まり、’17年6月、改正刑法が成立した。

 条文は次のとおり。

〈13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交、口腔性交をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、

同様とする〉

 これまでは「姦淫」、つまり、膣性交だけが対象だったが改正によって肛門性交と口腔性交が加わり、男性も被害対象となった。

「これによって、性別にかかわらず同意のない性交自体が性暴力であると明文化したことになる」。

◆強制性の有無や時効など課題は残る

 これまでの強姦罪では女性だけが被害者だったが、改正刑法では性別を問わなくない。そのため、男性被害者に対しても被害者相談支援体制が求められる。

 ただ、「暴行又は脅迫を用いて」(暴行脅迫要件)という文言が残った点については課題が残る。これまでも「同意のない性交は罪」が前提だったが、何をもって不同意とするのかの基準が、暴行脅迫要件とされている。しかし性暴力の場面では、恐怖心から体が固まってしまったり、上司と部下など関係性によってはきっぱり拒否できない場合がある。暴行脅迫要件が残ったことで、「はっきりとした抵抗」を示す必要が生じると言われているのだ。

「法務省は性暴力被害当事者の声をしっかり聞いていない。国会での審議の際も、共謀罪より閣議決定が先だったのに、審議が十分ではなかった。きょうこの瞬間にも被害に遭っている人がいるのです」

 また「監護者わいせつ及び監護者性交等罪」が新設されたことで、親権者という関係性を利用した性犯罪も処罰できるようになった。この場合は暴行脅迫要件はない。

 だが、「監護者」は親子間以外の教師と教え子、職場での上司と部下という関係には適用されない。学校や職場などでの性暴力をどうするのかが課題だ。

 そして支援団体等は、公訴時効の撤廃や緩和なども要求してきた。子ども時代に受けた性被害を大人になってから訴えることができるというものだが、今回の改正では論点に上がらなかった。

「性虐待にあった子どもたちは自分がされている行為が躾なのか、遊びなのかわからないまま成長する。被害と認識するまで、そして心理的に回復するには時間がかかり、それだけ人生の時間を奪っていることになるのです」(同)

 ほかにも、道具や手指を使った場合は適用されず「強制わいせつ罪」となる。また、「集団強姦罪」は厳罰化に伴い削除された。

 ただ、今後も性犯罪の規定は議論が続く。附則に3年後の見直し条項が入ったからだ。

「重要なのは運用面。警察では研修をしっかりしないといけない。これまで被害届が受理されず、『相談』と処理されたケースもある。判決前からふるいにかけられることがないようにしてほしい。(ストーカー対策のように)性暴力に特化した部署を作るべきです」

 一人でも多くの被害者を救うためにも、確実な運用が望まれる。

<佐藤かおり氏>

女性と人権ネットワーク共同代表。パープル・ユニオン執行委員長。性暴力禁止法をつくろうネットワーク運営委員。NPO法人全国女性シェルターネット事務局長。

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