ここから本文です

「カオス状態」のホワイトハウス、スカラムッチ広報部長は10日でクビ - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

8/1(火) 15:40配信

ニューズウィーク日本版

<21日にスカラムッチが広報部長に就任すると、スパイサーとプリーバスが辞任。そしてバノンを罵倒した挙句に、31日にはスカラムッチ自身が解任される。トランプ政権のゴタゴタはまだまだ続く>

ホワイトハウスの混乱が止まりません。まず、7月21日にアンソニー・スカラムッチ氏が「広報部長」に就任すると、自分の上司にこの人が来るのはイヤだという理由でショーン・スパイサー報道官が辞任しました。

新しく就任したスカラムッチ広報部長は、さらにスパイサーに近いと言われるプリーバス首席補佐官への批判を開始しました。何とも異例な話ですが、どうやらこの時点では、プリーバスとスカラムッチの力関係は逆転していたようで、結局のところプリーバスは辞任に追い込まれました。

一方で、スカラムッチ広報部長は、プリーバスとは犬猿の仲だったという主任分析官のスティーブ・バノンについても、全く別の容赦のない批判を浴びせていました。とてもご紹介できるような表現ではない、卑猥な言い方での非難であり、これはバノンとの間にも相当な確執があったことを示唆しています。

この時点でのスカラムッチ広報部長は「自分はホワイトハウスからの情報漏れ(リーク)」を絶対に許さない」とした一方で、大統領がツイートを使って世論に直接語りかけるスタイルは「これを中心にしていく」などとしていたのです。

【参考記事】トランプ政権、就任後半年間の意外な高評価

一方で、首席補佐官の後任にはジョン・ケリー国土保安長官が横滑りしてきました。このケリーという人は、海兵隊の叩き上げで、反テロ戦争の現場で戦ってきた人物です。さらに全米を驚かせたのは、何と7月31日午後(東部時間)になって「スカラムッチは解任された」というニュースが駆け巡ったのです。

とにかく、各メディアは一斉に「ホワイトハウスはカオス状態」であると騒ぎ立てています。また、スカラムッチの解任劇を受けてケイト・ハドソン主演のラブコメ「10日で男を上手にフル方法(原題は "How to Lose a Guy in 10 Days")」に引っ掛けて、「10日でクビになる方法」というパロディのポスターも早速作られる始末です。テレビではお笑い番組も含めてスカラムッチに「ムーチ」というニックネームを付けて大騒ぎをしています。

それでは、ホワイトハウスは今後、指揮命令系統を立て直すことができるのでしょうか?

例えば補佐官の中にはジャレッド&イバンカ・クシュナー夫妻(大統領の娘夫婦)がいるわけですが、発表によれば両名もケリーにレポートする、つまりケリーの部下ということになるそうです。つまり、以降イバンカとジャレッドは、ケリー首席補佐官を飛び越して大統領と勝手に物事を決めるのはダメというわけです

ですが、ケリーが就任にあたってこの点を警戒したということ自体で、既にケリーがこの両人をコントロールできていない印象も与えるわけで、不安は残ります。スカラムッチ解任を受けて会見したサラ・ハッカビー・サンダース広報官(スパイサーの辞任に伴って副報道官から昇格)は、ケリー新首席補佐官は、厳格なマネジメントでホワイトハウスに秩序を確立するだろうと言っていましたが、本当に組織としてキチンと動けるのか、まだ良くわからないのです。



スカラムッチの解任理由ですが、CNNのグロリア・ボーガーが「ホワイトハウスの情報筋」の話として伝えたところによると(ということは、「リーク」は止まっていないわけですが)、「ホワイトハウスに放言家は大統領1人でたくさん」なので、「大統領以上に言いたい放題のスカラムッチは不要とみなされた」というのです。

確かにプリーバスやバノンに対するスカラムッチの非難は、本当に活字にできないような下品なもので、サンダース報道官によれば「この職責にある人物としては不適当」と言われても仕方がないのです。ですが、いくら匿名とはいえ「放言家は大統領1人でたくさん」という発言が漏れてくるというのは、やはり異常な状況と言わざるを得ません。

一方で、そのトランプ大統領の放言は、いまだに止まる気配がないばかりか徐々にエスカレートしてきています。ここ2週間の間にも大統領は「軍隊ではトランスジェンダーを採用しない」という発言をしていますが、この件については軍から事実上否定されています。

【参考記事】就任半年のトランプ政権、顕著になる「指導力」の不在

また「警察は被疑者の取り調べでもっと締め上げていい」という発言もあったのですが、全国の警察の現場から「自分たちは被疑者への丁寧な対応を心がけているのに、警察の権威を失墜させる気か?」などという反発が出ています。

問題は、発言の多くが怒りを買っているということではなく、「発言と政策のズレ」が決定的に拡大している、つまり、誰も大統領の言うことは「話半分」か「ほら話」にして聞き流すという状態に近いわけで、これは深刻な状況です。こうした状況を新任のケリー首席補佐官が抑えられるのかは、大きな課題です。

北朝鮮のミサイル危機が続くなか、ホワイトハウスがこんな状態なのは信じがたいのですが、当の大統領本人は「株価は好調。失業率も低下。ホワイトハウスのカオスなんてまったくない」などという、呑気なツイートをしているのですから困ったものです。

冷泉彰彦

記事提供社からのご案内(外部サイト)

ニューズウィーク日本版

CCCメディアハウス

2017-10・24号
10/17発売

460円(税込)

他の日本のメディアにはない深い追求、
グローバルな視点。
「知とライフスタイル」のナビゲート雑誌。

ニューズウィーク日本版の前後の記事