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「絶対君主の父から逃れたかった」大日本プロレス・関本大介が幼少期から抱いてきた“劣等感”の正体とは?

8/1(火) 15:50配信

週刊SPA!

「深読みするのがプロレス」と言われる。ならば深読みしたい。

 7月17日、大日本プロレス両国国技館大会。BJW認定タッグ選手権試合で、アブドーラ・小林&伊東竜二組は、関本大介&岡林裕二組を破り、新王者に輝いた。関本はこの試合、“負けてもいい”と思っていたのではないかと、私は思った。関本大介自伝『劣等感』(ワニブックス)を読んだら、そう思えて仕方なかった。

⇒【画像】自伝『劣等感』

 関本が大日本プロレスに入門したとき、先に寮にいたのが小林と伊東。同じ釜の飯を食い、苦楽をともにしてきた仲間だ。

 関本より4か月早く大日本プロレスに入門した伊東は、関本に、包丁の握り方から掃除の仕方、会場でのセコンド業務まで、プロレスラーとしての基礎を教えた。デスマッチの試合で思うような成績を残せなかった関本は、小林とタッグチーム「マッスル&ファットです。」を組んだことで、レスラーとして持ち直すことが出来た。

 “負けてもいい”ということはあり得ないのかもしれない。しかし、入門当時から世話になってきた先輩2人と戦うことに対し、複雑な思いはあったのではと思った。両国国技館という特別なリングの上で、関本大介は一体、なにを思ったのだろうか。

◆全力で戦うことが礼儀

――大日本プロレス3度目の両国国技館大会。いかがでしたか。

関本大介(以下、関本):岡林選手とタッグで守ってきたベルトを奪われてしまったので、それは悔しいです。ただ、小林さんと伊東さんはデスマッチを得意とする選手なので、普段戦う機会が少ないんですよ。そういう相手と両国国技館という舞台で、しかもタイトルマッチで戦えたので、その点ではすごく刺激的でした。

――ストロングBJのルールで試合が行われたことについて、どうですか。

関本:向こうが「ストロングスタイルで」という気概があったので、それは受けなければ男ではないと思いました。でも結局、我々の得意分野であるスタイルで負けてしまった。結果がすべてですから、鍛え直してリスタートを切るしかないですね。

――自伝『劣等感』には、小林選手、伊東選手への敬意が綴られています。試合中もそういった思いはありますか。

関本:試合中はないです。リスペクトは常にありますけど、そこで恐縮してしまっては試合がつまらなくなってしまう。サイクアウトって言うんですかね。リングに立つと自分が自分でなくなるような感覚があります。二重人格じゃないですけど。

――ファンの深読みなのですが、「負けてもいい」というような複雑な思いがあったのではと。

関本:それはないですね。全力で戦うことが、対戦相手に対する礼儀です。それは小林さん、伊東さんも分かっていることだと思います。たぶん、プロレスラーはみんなそうじゃないですかね。

――2人に、特別な思い入れは?

関本:思い入れというか……なんでしょうね。小林さんとは、一緒に大人のお店に行ったりしました(笑)。伊東さんとはそういうお店に行ったことはないですね、真面目な方ですから。僕たちはバカなので、そういうところに行って、ヒャーヒャー喜んでました。

――自伝の第3章「救世主」は伊東選手のお話です。「オレ、デスマッチやるわ」という言葉にグッときました。伊東選手がデスマッチをやると言ったとき、どう思いましたか。

関本:「ま、まじで……?」という感じでしたね。ホントにやるんすか!? やっちゃうんすか!? みたいな。そのときはまだ、デスマッチとストロングは分かれていなかったんですけど、伊東さんも僕も、若手の一人として普通に試合をしていたので。デスマッチに対する恐怖心は、当時からありました。やっぱり怖いですよ、血だらけになりますから。だから伊東さんがやると言ったときは、本当に驚きました。

――小林選手、伊東選手よりも先に自伝を出版したことについて、どう感じていますか。

関本:後ろめたい気持ちはあります。大日本の先輩であり、人生の先輩ですから。でも、僕の自伝ではあるんですが、小林さん、伊東さんを含め、大日本プロレスの本でもあると思うので、出版できてよかったです。

◆なにかに怯えて生きてきた

――『劣等感』というタイトルの意味は?

関本:僕は劣等感の塊というか、ずっと劣等生なんです。中学から入った明徳義塾でもそうですし、幼少の頃から、お父さんが絶対君主ですごく怖かったので、なにかに怯えて生きてきたんですよ。今ではそうやって育ててもらったことに感謝してますけど、当時は早く父親から逃れたいという気持ちでいっぱいでした。

――虐待を受けたわけではない……?

関本:虐待というのは、その人によって物差しが違うから、一概に「これが虐待」って決められないと思うんです。野球をやらされてたんですが、お父さんはたぶん、僕の体を鍛えるために、今で言う虐待的なことをやっていたんだと思います。例えば足上げ腹筋って、足が下についたらダメじゃないですか。お父さんは「下ろすなよ、下ろしたら熱いぞ」って、ライターの火を構えてるんです。それを今やれば、虐待と捉えられると思うんですけど、当時はそういう鍛え方でした。

――実際に、足に火がついてしまったことは?

関本:ありますよ。でも結局ライターの火なんて、落ちたら風圧で消えますよね。火も弱いし、風でなびくから、親父のほうが「熱い」ってなって(笑)。それが面白くて、でも笑ったら怒られるから、こらえていたら逆に腹筋が鍛えられるっていう。意味の分からない鍛え方をしてましたね。

関本:他にも、ティーバッティングとか、走らされたりとか。毎日毎日、素振りを200回も300回もやらされたり、朝起きてランニングを3~4kmもやらされたら、さすがに嫌になりますよ。体力的にしんどいというより、精神的にしんどかったです。「今日もやるんだ……」というのが毎日なので。

――お父さんに対して、恨みはない?

関本:まったくないです。感謝しかない。今は仲が良いですし、ほんとに感謝しかないです。

――どんな部分で感謝していますか。

関本:お父さんが厳しくしてくれたから、つらいことがあっても耐えられるというか。少し痛いところがあったりしても、我慢できるようになりました。あとは腹が立たなくなりましたね。今やってることは将来に繋がることなんだと分かったときに、腹が立たなくなりました。文句を言ってやらないより、「はい、分かりました」って言ってやったほうが、自分のためになる。そう思えるようになったのは、お父さんのお陰だと思います。

――リングの上であんなに強いのに、劣等感があるというのは意外です。

関本:あれは仮の姿です。サイクアウトした自分ですよね。自分が自分でない感覚。人によく、「リングに立つと普段と全然違うよね」って言われるんですよ。僕は一緒だと思ってるんですけど、やっぱりサイクアウトするんでしょうね。やらなくちゃいけないっていう衝動には駆られます。

――どうすれば劣等感を克服できると思いますか。

関本:僕は克服してないですから(笑)。まあ、そうですね、筋トレをやればいいんですよ。筋トレをやれば、劣等感は薄れると思います。だって、筋肉がパンプして、鏡の自分を見てうっとりしてるんですよ。ナルシストでしょ。人間なんてみんなナルシストですけど。最終的になにが一番大事かって言ったら、自分が一番大事なんですよね。みんな自分の命を守るために生きてると思います。

――筋トレをすることで、ナルシストな自分と向き合える?

関本:そうですね。鏡に映る自分と向き合える。でもその鏡を見て、満足しちゃダメなんですよね。優越感には浸りますけど、満足はしない。満足したら、そこで終わっちゃうので。

◆大日本プロレスの連帯感

――自伝出版にあたり、大日本のレスラーのみなさんが、Twitterで告知ツイートをたくさんしています。本当に仲が良いんだなと思います。

関本:チームとしての連帯感は、他の団体より全然強いと思います。たぶん、巡業のとき、みんなでリングを作って、みんなで売店に立って、みんなでリングを片付けて、みんなで掃除をして、みんなで移動して、っていうのを続けているから。大日本以外にも全国を周っている団体はあるんですけど、リング屋さんにお願いしている場合も多いと思います。

関本:ある会場の方に、「リングの撤収が速いのは、新日本の次に大日本」と言われたんですよ。新日本さんはリング屋さんがいるので、自前では大日本なんですかね。キャリア、所属に関わらずやりますから、連帯感が強いのはそれが大きいと思いますよ。

――他団体の選手やフリーの選手もお手伝いしていますよね。

関本:他団体、フリーの選手も、大日本のメンバーだという意識があるような気がします。僕も仲間だと思ってますし。準備とか片付けをしているときは、ですよ。リング上では敵です。

――所属でない鈴木秀樹選手が、『劣等感』の宣伝をかなりしてくれています。サムライTV出演時だったり、ツイートだったり。なぜでしょう?

関本:いじられてるんですよ(笑)。

――今年3月に、関本選手からBJW認定世界ストロングヘビー級王座のベルトを奪った人です。鈴木選手をどう評価していますか。

関本:身長と体格、ポテンシャルもそうですし、思想もそうですけど、「ザ・レスラー」です。どこにも所属していないし、レスラーな生き方ですよね。

――8月19日(土)、名古屋国際会議場で、鈴木選手は橋本大地選手を相手に防衛戦を行います。

関本:出来れば橋本選手ではなく、自分がベルトを取り返したいですね。チャンスをもらえるなら。

――今年4月に取材をさせていただいたとき(明徳義塾で懲役6年!? 元高校球児・関本大介がトップレスラーになるまで【最強レスラー数珠つなぎvol.9】)、「鈴木選手のようなテクニックを、自分は持っていない」とおっしゃいました。プロレスにおいて、テクニックは必要ですか?

関本:技術がすべてを凌駕するときもありますし、体力がすべてを凌駕するときもありますし、ハートがすべてを凌駕するときもあります。時と場合によっても、選手によっても違う。それがプロレスのいいところだと思います。

――関本選手は、なにが一番自信がありますか。

関本:自信はないです。劣等感の塊なので。強いて言うなら、気持ちですね。メンタルが強いか弱いかで言ったら、決して強くはないです。劣等感を感じているような人間なので。ただ、リングに上がるとサイクアウトできるので、強くなるというか、普段の自分でなくなります。

――今後の目標は?

関本:漠然としてますけど、「大日本プロレスを世界一の団体にする」ということを掲げていますので、少しでもその旗を支えられるような人間になることですね。

――自伝をどんな人に読んでもらいたいですか。

関本:プロレスを好きな人には絶対、読んでもらいたいです。あとは、「関本大介ってだれ?」という疑問を持っている人にも読んでもらいたいですし、「大日本プロレスってどういう団体?」という人や、「プロレスってなに?」という人にも。読めばきっと、いろんな疑問がなくなると思います。

――ありがとうございました。

 今年4月にインタビューをしたとき、「饒舌で、巧みな言葉を持っているレスラーとは違うかもしれない」と書いた。しかし、違った。関本は言葉を持っているレスラーだ。今回の取材を通して、また、自伝を読んでそう思った。内に深く、熱い思いを秘めている。関本大介自伝『劣等感』は、なにかに劣等感を抱いているすべての人に、「関本がこうなんだから、自分も頑張れる」と思わせてくれる一冊だ。

【PROFILE】関本大介(せきもと・だいすけ)

大日本プロレス所属。1981年2月9日、大阪府大阪市鶴見区生まれ。中学高校と明徳義塾に通い、野球部に所属。高校卒業後、大日本プロレスに入団。1999年8月10日、対伊東竜二戦でデビュー。デスマッチデビュー戦は、対マッドマン・ポンド「蛍光灯100本デスマッチ」。ストロングBJの象徴として、大日本プロレスのみならず、全日本プロレス、DDTプロレスリングなど、他団体でも活躍している。175cm、120kg。Twitter:@sekimotodaisuke

<取材・文・撮影/尾崎ムギ子>

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最終更新:8/1(火) 15:50
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