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【MLB】若い世代のファンを取り込み娯楽性を高めたいコミッショナー側に 逆行していく近代のチーム戦略事情

8/2(水) 11:50配信

週刊ベースボールONLINE

 
 前回は、ロブ・マンフレッドMLBコミッショナーが、現在の本塁打、三振、四球に偏る野球を変え、打って走ってとアクションの多い、球技に戻すため、大改革もいとわないという話を書いた。しかしながら、よほど大胆な手を打たないと、変わらないだろう。

 というのはこの3つを重視すれば勝てるのが現在のMLBの野球だからだ。今年本塁打数が155本(現地時間7月18日現在)と一番多いアストロズは、63勝31敗とダントツのトップでア・リーグ西地区を独走中なのだ。144本で2位のブリュワーズは大方の予想を覆し、ナ・リーグ中地区首位、141本で3位のナショナルズはナ・リーグ東地区独走である。

 リリーフ投手陣の奪三振数が一番多いのもアストロズで407個、3番目は356個のドジャースでナ・リーグトップの勝数65勝29敗である。四球についていえば、そのドジャースが393個で1番多く獲得し、2番がヤンキース、3番カブスと上位7球団は優勝争いに絡んでいる。

 パワーヒッターを並べ本塁打を量産し、パワーピッチャーのリリーフ投手を次々に投入し、反撃を断ち切るのが、現在勝てる一番良い方法なのだ。以前は本塁打に頼るチームは、打線のつながりが悪く、好投手相手だと点が取れないと言われた。しかし守備シフトが効いてゴロではヒットにならず、飛ぶボールで本塁打が出やすい分、打者は意図的に上に打ち上げる。今季の本塁打総数は、2000年の最多記録(5693本)を確実に抜く見込みだ。

 投手側でも、昨年MLB全体でブルペンが1万5893イニングを投げたが、今年はそれを500イニング以上上回るペース。チームはドラフトでもパワーピッチャーを好み、1イニング専門の投手を育てる。使う球種は2つでよく、2巡目、3巡目を抑える投球術を身につけなくてもいい。200イニング以上を投げる先発エースを育成するより、はるかに効率がいい。今年はメジャー全体でリリーバーは9回あたり9.02三振を奪っている。これも最多記録である。

 こうしてコミッショナーが嘆く、若い世代に好まれない、アクションの少ない、本塁打か三振の、投手交代の多い試合になってしまう。しかしながら30球団は勝つために必死で戦っているわけで、こうなるのも仕方がない。

それにしても、現在言われているように20秒のピッチクロックを導入し、捕手やコーチがマウンドに行く回数を減らせば、本当にメジャーの野球は打って、走って、多彩なアクションが楽しめるアップテンポなゲームになるのだろうか。

 ヒットエンドランや盗塁など、足を絡めた細かい戦術も野球の醍醐味だが、そういった要素もメジャーでは消えつつある。走者が二塁や三塁にいても、打者のスイングは同じで、三振か本塁打かだ。それが本当に変わるのか?

 未来をにらみ娯楽性を高めたいコミッショナーと、勝つために戦略を練るチーム、そして生き残るために日々必死でプレーする選手たち。三者三様、立場は微妙に異なる。彼らによって未来のMLBの野球がどう変わるのか、予測はとても難しいのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images

週刊ベースボール

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