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医療や介護に大切な「わがまま」の実現をお手伝いすること

8/2(水) 7:00配信

NEWS ポストセブン

 子どもへのしつけは、「わがまま」を我慢するよう覚えさせることも含まれている。そして、高齢者は人に迷惑をかけたくないと、極端に自分の「わがまま」を我慢する。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、医療や介護とは「わがまま」の実現をお手伝いすることだと考える理由はなぜか、について解説する。

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 今月初旬、『「わがまま」のつながり方』(中央法規出版)を上梓した。超高齢社会の切り札として期待される「地域包括ケア」について書いた本だ。

 団塊の世代がすべて後期高齢者となる2025年、必要な介護が受けられない「介護難民」が、全国で約43万人、首都圏ではその3割の約13万人発生すると予測されている。

 これに対応するには、特別養護老人ホームなどの施設介護の路線ではコストがかかりすぎる。そこで国は、介護が必要になっても安心して最後まで地域で暮らせるように、中学校区に一つの目安で「地域包括ケアシステム」をつくるようすすめている。

 膨れ上がる医療費や介護費を抑制したいという、国の下心は見え見えだ。ぼくは、そのお先棒を担ぐつもりはまったくない。だが、地域医療に取り組んできた立場から、医療や介護が「病院・施設」から「地域」へと出て、「暮らし」のなかに溶け込んでいくことは、一つのチャンスだと思っている。

 では、地域包括ケアシステムとは何か。一言でいうなら、「わがままをかなえるネットワーク」である。

 元気で若い世代の読者にはピンとこないかもしれないが、医療や介護とは、病気を治したり、食事介助や入浴介助をすることだけではない。その人が望むこと、つまり「わがまま」の実現をお手伝いすることがいちばん大切なところだ。

 認知症になっても、人に喜ばれる仕事をしたい。月に一回は、酒を飲みに行きたい。風俗に行きたい。車いすでも、自由に旅行を楽しみたい。最期は、自宅で苦痛なく眠るように逝きたい。だれにでも、そんな「わがまま」があるだろう。

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