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サガン鳥栖、右肩上がりのスポンサー収入。2つの分岐点、現社長就任とCygames社との契約

8/2(水) 12:06配信

フットボールチャンネル

 2016年度におけるJリーグの全53クラブの経営情報が出そろった。3月期決算の3クラブのそれが7月下旬に開示されたなかで、先行発表された5月下旬から顕著だった傾向がさらに鮮明になった。営業収益(売上高)のなかで入場料収入が微増となっている一方で、広告料収入が大きな伸びを示している。J1ではトップの伸び率となる前年度比35.6%増の16億3100万円を計上して、Jリーグ全体のけん引役にもなっているサガン鳥栖の舞台裏を追った。(取材・文:藤江直人)

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●広告料収入の増加。特筆すべきサガン鳥栖の推移

 2016年度におけるJクラブの収支決算が出そろった。3月期決算の柏レイソル、ジュビロ磐田、Y.S.C.C.横浜のクラブ経営情報が7月下旬に開示されたことに伴うもので、1月期決算の50クラブの経営情報が先行発表された5月下旬の段階を含めて、Jクラブ全体で顕著な傾向が見られる。

 それは営業収益の二本柱のひとつ、広告料収入が大きく伸びていることだ。J3が創設された2014年度以降の平均値は8億2745万円、8億7115万円、9億1132万円と推移。もうひとつの柱・入場料収入が3億2157万円、3億3654万円、3億4528万円と微増なのとは対照的な軌跡を描いている。

 J1に限定すれば2016年度の平均は17億円で、前年度の15億2700万円から約1億7300万円増。Jリーグ・経営本部の青影宜典クラブ経営戦略部長(兼クラブライセンスマネージャー)は、広告料収入を大きく伸ばしたクラブとして名古屋グランパスとサガン鳥栖をあげている。

 なかでもサガンの広告料収入は2014年度の7億8900万円から12億300万円、そして16億3100万円と右肩上がりで推移。鳥栖市の人口が全53クラブのホームタウンのなかで最も少ない約7万2000人であることを考えれば、特筆すべき数字と言っていい。

 サガンの歴史を紐解いてみると、クラブ経営面において2つのターニングポイントを迎えていることがわかる。まずは2011年5月。サガンを運営する株式会社サガン・ドリームスの代表取締役社長に、非常勤役員だった竹原稔氏が就任したことだ。

 竹原社長のもとで初めて迎えた、2012年1月期の広告料収入は2億5300万円だった。当時はJ2だったとはいえ、6年間で約6.45倍の規模にまで急成長させた理由を、同社長は「選択と集中」と説明してくれたことがある。

「クラブの能力的に数多くのことはできないので、今年はこれと選択した売り上げに対して徹底かつ集中的に取り組む。そうした努力をシンプルに積み重ねてきただけなんです」

●サガン鳥栖とCygames社の接点はどこに

 竹原社長は兵庫県伊丹市の出身で、現在は56歳。大阪・北陽高校ではサッカー部に所属し、インターハイを制した経験ももつ。その後に佐賀県へ移り、36歳になる年の1996年に株式会社ナチュラルライフを設立。九州だけでなく北陸、関西、そして関東で「らいふ薬局」を展開している。

 見知らぬ土地で裸一貫の状況から事業を立ち上げ、佐賀県から各地へ展開していくには計り知れないほど多くの苦労を強いられたはずだ。タフな軌跡はサガンの社長業にも反映され、「竹原さんのお金の集め方はすごい」と感心するJクラブの実行委員(代表取締役)も少なくない。

「実は大学を卒業していなくて。頭が悪くてダメ組で、中退してしまったので。Jリーグでは珍しい、高卒の社長になりますね」

 苦笑いしながら謙遜する竹原社長が「一社だけではできませんけれども、それでも大きかったですね」と振り返るのが2015年7月、スマートフォンゲーム大手『株式会社Cygames(サイゲームス)』と結んだスポンサー契約だ。これが2つ目のターニングポイントとなる。

 2011年5月に設立されたCygames社は資本・業務提携先であるDeNAの『Mobage(モバゲー)』へ『神撃のバハムート』『グランブルーファンタジー』などの人気アプリを開発・供給。昨年6月にリリースされた『Shadowverse(シャドウバース)』は、いまでは世界150ヶ国以上でサービスが展開されている。

 昨年末には約133億円もの当期純利益を計上した急成長企業は、実は東京都渋谷区を本社としている。サガンとの接点はどこにあったのか。Cygames社の渡邊耕一・代表取締役社長が佐賀県伊万里市の出身であることが縁になったと、竹原社長が説明してくれたことがある。

「毎年帰省されるたびに『佐賀に元気がない』と感じられていたようなので。実際、佐賀県のなかでも、もっと小さな田舎へ行くとさらに元気がなくなるような状況でしたからね。その意味では、何とか佐賀を元気にできるものはないかと。

 サガン鳥栖というサッカークラブを通じてならば、いろいろな意味で子どもたちにも夢を与えられるのではないかと考えられて、お付き合いを始めさせていただきました」

●経営危機は過去の話。いまや地方クラブの“雄”に

 Cygames社とスポンサー契約を結んだこともあり、広告料収入を大きく伸ばしたサガンは2016年1月期の決算で300万円の黒字に転換させる。3期連続の単年度赤字を回避するととともに、今年1月期にも900万円の黒字を計上している。

 もちろん、現状に満足しているわけではない。営業費用(支出)の大半を占める2016年度のチーム人件費は14億7600万円と、前年度の11億500万円から3億7100万円も増えている。J1のなかでは3億8400万円増のFC東京に次ぐ数字だ。

 今シーズンも2年目を迎えたイタリア人のマッシモ・フィッカデンティ監督のもと、GK権田修一(前SKホルン)やFW小野裕二(前シント・トロイデン)、DF小林祐三(前横浜F・マリノス)、FW趙東建(前水原三星)らを補強。開幕後にカリアリから期限付き移籍で加入した、コロンビア代表FWビクトル・イバルボは7月から完全移籍に切り替えられた。

 こうした“攻め”の経営の背景には、補強によってチームの成績を向上させることで、伸び悩み気味の入場料収入を上向かせる狙いがある。実際、2016年度の入場料収入は5億5300万円で、前年度の5億7600万円から微減となっている。

 今シーズンは平均観客数1万7000人という目標を掲げている。9試合を終えた現時点では1万3742人と昨シーズンの1万2636人は上回っているものの、目標には届いていない。現在は勝ち点27の10位。白星を重ね、順位を上げていくことが観客動員増にもつながる。

 サガンの営業収益(売上高)を見ると、2014年度の18億8500万円から24億8900万円、27億6600万円と順調に推移。竹原社長によれば、来年1月の次期決算では、J1の上位で戦うための目安に据えてきた営業収益30億円に到達する見込みだという。

「目標を目指して、みんな頑張っていますからね。これからは、やはり勝つということが必要になってくるので、(どこかで)タイトルは取らないといけないと思っています」

 経営危機に直面したのは、もはや過去の話。いまでは地方クラブの“雄”としてお手本にもなっているサガンは、営業とピッチにおけるそれぞれのフィールドでこれからも泥臭く戦っていく。

(取材・文:藤江直人)

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