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なぜ「サラリーマン社長」に会社の成長は期待できないか

8/2(水) 17:41配信

日経BizGate

自分の任期をつつがなく過ごせばいい

 世界に目を向けると、成長企業はフェイスブックもアマゾンもグーグルも、オーナーやオーナーの一族が経営しています。インドなどでも、企業経営者は、ほとんどが会社のオーナーです。

 ところが、日本では大企業のトップはたいていが“サラリーマン社長“です。ひと昔前までは日本企業もほとんどがオーナー経営だったのですが、いつのまにか多数決によって民主的プロセスで決まるサラリーマン社長がオーナーを排除してしまいました。

 そして、社会の中にそれを問題視する雰囲気はありません。どちらかというと“サラリーマン社長“が普通で、「オーナー経営=ワンマン経営」というネガティブなイメージすらあるようです。実際、トヨタ自動車は、経営陣に豊田家が残っていますが、そのことを指して「変な会社だ」という人もいます。

 しかし私は、サラリーマン経営者がトップに就いている企業に対しては、成長を期待しにくいと思っています。問題がある、という意味で「ヤバい会社」が多いのです。

 サラリーマン経営者の問題は、まず短期志向で企業を経営しがちなことです。

 豊田家ならトヨタ自動車の経営を10~30年単位で、もしかしたら100年先まで考えているでしょう。しかし、サラリーマン経営者の場合、自分が就任している間をつつがなく乗り切れればよいという思考が優先してしまいがちです。

 このため、サラリーマン経営者は四半期の業績にこだわり、長期的な視野が欠落しやすくなります。

 たとえば、将来を見据えての先行投資を行うといった場合、今期末で交代予定の社長と、任期が決まっていない社長とでは、判断が違ってくることが予想されます。目先の業績を上げたいなら、設備投資をするより、事業の選択と集中によって効率化を図ろうと考えるのが自然だからです。

 またサラリーマン経営者は、経営に関する決定事項は書類を固め、「みんなで決めた」という形をつくって自分ひとりが叩かれないように根回しすることも少なくありません。

 「マーフィーの法則」に「食べられないものも細かく砕けば食べられる」というものがありますが、これを企業経営に当てはめれば、「間違った意思決定も責任を分散すれば通せる」ということになってしまうのです。決定プロセスや決定項目を細分化すると、結局、責任を負う人はいなくなり、サラリーマン経営者は安泰というわけです。

 このようなやり方は、『失敗の本質――日本軍の組織論的研究』(中公文庫)にも載っています。日本が戦争に負けた後、A級戦犯にインタビューしたところ、誰もが日本は負けると思っていたという話があります。みんなが負けると確信しながら突き進んでしまった理由は、まさに「意思決定の分散の結果」だといえるのではないでしょうか。

 “民主的プロセス“で選ばれた経営者は、「敵をつくらない」「人から叩かれない」、いわゆる「いい人」であることが多いという特徴があります。「いい人」が「軋轢(あつれき)を生まないように」と全方位に配慮してコメントすれば、内容が無難で総花的なものになることは避けられません。大企業の場合、赤字の部署でも黒字の部署でも同じように配慮されて、経営上、革新的なものが生み出されにくい土壌ができてしまうのです。

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最終更新:8/2(水) 21:29
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