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山の神・柏原竜二が語る引退の真相。「駅伝に逃げてはいけないと...」

8/2(水) 8:03配信

webスポルティーバ

柏原竜二が語った「引退とその先」(前編)

 3月31日をもって、5年間在籍した富士通の陸上競技部を引退した柏原竜二。6月1日には、同社のアメリカンフットボール部・富士通フロンティアーズのマネージャーを務めていることが発表され、意外な第2の人生を歩みだしたことが大きな話題を呼んだ。

【写真】3代目・山の神は「ケニア人」みたいになった

 柏原には引退後すぐに取材を申し込んだが、「もう少し待ってほしい」との返答があり、7月に入ってからのインタビューとなった。柏原はその理由について「(引退から)時間を置かないと、勢いで話をしてしまいそうな気がして......。そこで一斉に取材を受けてしまうと、『意に沿わない形で報道されることもあるだろうな』と思いましたし、ちょっと時間を空けてからでも声をかけてくれる方々に話をしたいという考えもあって、この時期になってしまいました」と笑顔で明かした。

 この数ヵ月で自らの引退を冷静に振り返った柏原は、今年でまだ28歳という“早すぎる“決断について話しはじめた。度重なるケガに悩まされていたとはいえ、30歳を超えても第一線で活躍するランナーも多く、まだ再起のチャンスはあったように思える。しかし、競技生活に終止符を打つことについては、最初から納得していたという。

「周囲からは、かなり悩んでから引退を決断したと勘違いされがちですが、『昨季の1年でケガをしたら、結果が出なかったらやめよう』という想いでやっていたので、ズルズルと競技生活への未練を引っ張ることはなかったですね。自分の中では、東京五輪を目指すことよりも、引退後の人生のほうに気持ちが向いていたんです。今は、競技者としての経験を会社にどう還元するか、日々考えています」

 東洋大学時代に、箱根駅伝の5区で圧倒的な強さを見せ、“2代目・山の神“として大きな注目を集めた柏原。駅伝以外でも、2008年に出場した世界ジュニアの1万mで7位、2009年にはユニバーシアードの1万mで8位に入るなど、将来を嘱望されて2012年に富士通に入社した。

 だが、社会人1年目こそ5000mで13分46秒29の自己新を出したものの、1万mの28分20秒99、ハーフマラソンの1時間03分16秒という、大学時代に記録したベストタイムは更新できずに終わる。そこには、マラソンへのこだわりが影響していた。

「1年目は1万mも28分21秒58で走れたんですが、その時はすでにマラソン挑戦を意識していました。大学2年の時に出したベストタイムは、ユニバーシアード出場を確実に決めるために前半を14分06秒で入ったんですけど、富士通に入ってからは27分台を目標に13分50秒くらいで入るようにしていました。その結果、後半でガクっと落ちて記録が伸びなかったことは、自分のやり方が間違っていたと言わざるを得ません。ただ、1万mなどで記録を出すことに、あまりこだわってはいませんでした」

 マラソンを意識してレースに臨むようになってからも、柏原がフォームを変えることはなかった。大学時代も起伏のあるところで練習を積み、結果につなげてきた自負があったからだ。「山も平地でも走りの感覚は同じ。そこで走り方を変えていたら、トラックにもロードにもつながらなかった」という信念から、富士通に入ってからも「自分の動きをどうよくするか」を考えて練習に取り組んでいたという。

 ただ、入社当初は、「まだメンタルをやられていた時期だった」と振り返る。箱根駅伝で名を上げた柏原は、競技とは別のところでの“戦い“を強いられていた。

「僕が箱根に出たころは、ちょうどSNSが流行りはじめた時期で、そこまでネットリテラシーが確立されていませんでしたからね。普通に生活をしているだけなのに、『柏原が何を買っていた』『柏原が何を食べていた』と書かれたり、時には、盗撮されたりしたこともありました。そのうちに他人が怖くなり、練習にも集中できなくなってきて......。ひとりで走りづらくなっただけじゃなく、電車にも乗りたくないという状態になっていました」

 そんななかでも、柏原は社会人2年目の秋に照準を合わせ、初マラソンに向けて準備を進めた。1年目の2月に出場した青梅マラソン(30kmレース)では、1km3分ペースを意識して30kmを1時間31分49秒で走り、3位に入る。アップダウンの多いコースで、25kmから動きが止まって「最後はヘロヘロになった」が、「平地でのレースになれば余裕ができるだろう」という計算ができたという。だがその後、オーバーワークが原因でアキレス腱を痛めたことで、走りの感覚が狂い始める。

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