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量子コンピューティングでテック大手に対抗する極小企業、Rigettiの挑戦

8/2(水) 18:50配信

WIRED.jp

グーグルやIBMが激しい競争を繰り広げる量子コンピューティング産業に、社員数わずか80名の小さな企業「Rigetti」が参入した。お金も時間もかかるこの産業に小さな企業が参入するのは不利なことのように思えるかもしれないが、Rigettiは先手を打つことで大手企業とも対抗できているのだという。

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米カリフォルニア州フリーモントにあるRigetti Computingの事務所裏、倉庫スペースのラクロワ(炭酸水)のストックの山から数メートル離れたところに、スチームパンクのイラストが現実になったような機械が鎮座している。

鉄製の筐体の中にはボルト、ハンドル、円形のポートが詰まっている。しかしこのモンスターマシンの動力は石炭ではなく電気で、そこから出てくる湯気は水ではなくアルミの蒸気だ。この機械は超電導エレクトロニクスを実現するものなのである。Rigettiではこの機械や何百万ドル相当の機械類をガラスで覆われたクリーンルームに配置し、量子物理学を応用した新種の超強力コンピューターをつくろうとしている。

同じことを目指す会社はほかにもあるが、Rigettiはそのなかでも特に規模が小さい。Rigettiの競合相手はグーグル、マイクロソフト、IBM、インテルが進めるプロジェクトだ。サンフランシスコ湾岸のスタートアップ企業はどこも、自社はとてつもなく難しいことに取り組んでいると必ず言ってくる。

しかし、Rigettiほど困難な課題に取り組んでいるスタートアップはない。量子コンピューティングの研究をしているのだ。ヴェンチャーキャピタルから投資を受けるスタートアップ企業はビジネスの構築という難題に取り組んでいる。しかしこの会社は最も技術的に厄介な課題をクリアしてビジネスを構築しなければならない。

従業員80名のRigettiは、量子コンピューターを開発するためにおよそ7,000万ドルの資金を調達した。データを微細なスケールで見ることでのみわかる物理現象で記号化することで、いわば演算能力に「クオンタムリープ」を起こせるはずだと彼らは見込んでいる。

「この分野の産業は非常に規模が大きくなりそうで、世界の大企業はどこも、このテクノロジーを利用する方策を考えるよう迫られるようになるでしょう」と、創業者のチャド・リゲッティは語る。物理学の博士号をもち、38歳になるこの大柄な男は、エール大学とIBMで量子ハードウェアの研究員を務めたのち、2013年に自分の会社を設立した。Dropboxのようなソフトウェアスタートアップの支援で世に知られるインキュベーター、Y Combinatorから同社は支援を受けている。

既存のコンピューターでは不可能な作業を、まともに実行できる量子コンピューターを提供できそうな企業はまだない。しかし、グーグルは5年以内にこのテクノロジーを商用化すると確約している。IBMは自社のラボにある試作の半導体を使って開発者や研究者が遊べるよう、将来の商用サーヴィスへ向けたウォーミングアップを目的としたクラウドプラットフォームを提供している。数年間ほとんど沈黙を保ったのち、Rigettiも現在競争に参入しようとしている。

Rigettiは火曜日にForestという自社のクラウドプラットフォームの運用を開始した。Forestを利用すると開発者はシミュレーション上の量子コンピューター向けにコードを書けるようになり、提携企業のなかにはRigettiがすでにつくり上げた量子コンピューターにアクセスが可能なところもある。Rigettiは『WIRED』にフリーモントの新工場をほんの少し見せてくれた。Fab-1という大仰なニックネームの付いたこの工場では、バークレー本社での実験で使用する半導体の製造が始まったばかりだ。

Rigettiの創業者は量子情報理論とシリコンヴァレー的なビジネス用語を流暢に操れるという点で珍しい存在だが、競合する大企業より小さい会社だからこそ有利なのだという。「この長期的な目標をスタートアップ企業ならではのスピード感と透明性を活かして追求しています」とリゲッティはいう。「その要素は大企業的な文化にはないものです」。

スピードを求められるのは確かだ。グーグルの取り組みは新規事業の立ち上げだが、Rigettiにはこの道しかない。

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最終更新:8/2(水) 18:50
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