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【サッカー】「試合に出ていた奴だけの悔しさにしたくない」 関東第一、指揮官がこぼした涙の訳

8/2(水) 23:26配信

THE ANSWER

持ち味の攻撃力を発揮するも…3年連続で市立船橋に敗戦

 印象的な言葉だった。試合に負けたチームの監督がこう言った。

「試合に出ていた奴だけの悔しさには、したくない」

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 37歳の若き指揮官は、選手と同じように、自分自身も試合に向かう気持ちや、選手に接する気持ちを整理して試合に臨んでいる。そして、試合が終わればチームの反省だけでなく、自分自身の反省もする。選手を非難する気持ちはない。

 だから、3年連続で同じ相手に負けた悔しさは、苦笑いで腹に押し込むことができた。ただ、チームを束ねる者として敗戦を振り返ると、その場にはいない選手を想う気持ちがこみ上げてきた。

 全国高校総体(インターハイ)は2日、男子サッカー準々決勝で関東第一(東京)は1-2で前回王者の市立船橋(千葉)に敗れた。

 10番を背負う攻撃の中心、MF篠原友哉(3年)は負傷明けで本調子ではなくベンチスタート。それでも前半にMF村井柊斗(3年)がクロスバー直撃の惜しいランニングボレーシュートを放つなど、持ち味である攻撃力は発揮していた。

「勝ちたかった。せっかく、ここまで先輩がつないできているチームだから…」

 後半の立ち上がり、立て続けに右サイドを破られて連続失点を喫したが、サイドチェンジを受けたFW重田快(3年)がドリブルで守備網に風穴を空けると、篠原の代役を務めたMF佐藤誠也(1年)が右足でカーブを描く鮮やかなシュートをゴール右上に突き刺して1点差に追い上げた。しかし、その後も3度の決定機を作るなど猛反撃を仕掛けたが、わずかに一歩及ばなかった。

 間違いなく、善戦した。しかし、その評価が胸のどこかを突いた。

 小野貴裕監督は「たぶん、去年の……。ああ、何か、上手く言えないな……」と言葉を選ぶうちに表情をゆがませ、目元を潤ませた。

「ここでもう少し勝てると、去年の先輩の負けとかも、唯一、市立船橋に負けた(だけな)んだって言ってあげられるんでしょうけど。こうやって後輩が頑張れると、先輩の負けも評価してもらえるのかなと思う。先輩のためには、何とか勝ってあげたかったですよね。昨年は選手権も(全国大会に)行けたし、インターハイも市立船橋に負けただけ。それが2回戦だったけど……」

 指揮官は、懸命に言葉を続ける。

「ここでもっと(試合を)やれたら、去年の選手も(2回戦敗退程度の力ではなく)もっと評価されるし、今年の選手ももっとできるようになるし、これから来る選手ももっと自信を持って来れる。チームのためには、勝ちたかった。(選手が)すごくよくやってくれているのが分かるから……。せっかく、ここまで先輩がつないできているチームだから。先輩が全国に出ていなければ、3年連続で市立船橋と戦うこともなかった」

伝統と想いは引き継がれるからこそ…善戦だから悔しい

 この大会で王者を倒して勝ち上がり、「関東第一は強い」――そんな印象を与えることで、敗れた先輩たちもレベルの高いチームで切磋琢磨した選手として見てもらえるようにしたかった。

 高校サッカーは、同じ選手が3年しか在籍せず、次々に入れ替わって行く。しかし、伝統はチームの中にも外にも残り、指導スタッフは想いを引き継いでいく。勝つことが、チームに関わる全ての者の評価を高めることにつながるということを考えると、善戦だったからこそ、悔しい。

「試合に出ていた奴だけの悔しさには、したくない」

 若い指揮官がわずかに見せた涙には、いくつもの悔しさが込められていた。

平野貴也●文 text by Takaya Hirano

最終更新:8/3(木) 18:14
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