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「モデル3」発売のテスラ、急激な増産は実現可能か

8/2(水) 8:00配信

Forbes JAPAN

本当に大変なのは、ここから先だ──。新型「モデル3」の納入を7月28日に開始した米電気自動車(EV)メーカーのテスラは今後、大量生産を実現しなくてはならない。



同社のイーロン・マスク最高経営者(CEO)は報道陣の前で、同社が少なくとも向こう6か月の「生産地獄」を経験すると述べた。そして、その後に行った従業員を前にしたスピーチの中では、この期間を9か月に延長した。同社が当初計画しているモデル3の生産台数は、恐ろしく少ない。8月は100台の予定だ。

自動車業界の動向を25年にわたって追い続けてきた筆者はこれまで、自動車メーカーの経営陣が生産に関してマスクが用いたような「飛躍的な生産数の増加」「Sカーブ(型の増産計画)」といった表現を聞いたことがない。

マスクが独自のやり方で物事を進めることを、われわれは皆よく知っている。だが、自動車部品の供給は過去25年間、無駄のない、「必要数ぴったりの」在庫を保つ習慣を身に付けてきた。そうすることで、急激な増産とその後の生産量の維持を可能にしてきたのだ。

こうした増産計画を図で示すなら、生産量はマスクが言うような「S字」ではなく「ルート(根号)」の一部のようになるはずだ。そして、世界中のどの大手自動車メーカーも、後者の図を描くような形で生産数を引き上げている。なぜかと言えば、それが最もコスト面で無駄がないからだ。

テスラを除いた各国の自動車メーカーは、いずれも自動車業界の低迷による打撃を何度も経験している。そのため、(必要になったときに)できる限り迅速に生産台数を最大限に引き上げることが可能な体制の維持は、各社にとっての必須事項となっている。

つまり、マスクの計画は本格生産を開始するにあたって最も資金面で無駄が多いということだ。そして、テスラの将来の財務状況にとって、これはカチカチと音を立てる時限爆弾だ。

テスラは今年第2四半期(4~6月)の決算を8月2日の取引終了後に発表する予定だ。その中で明らかにされる同社のレガシーモデル、「モデルS」と「モデルX」の販売台数は、アナリスト予想を下回ると見込まれている。

モデルSの需要は、すでにピークに達したと考えられる。それはマスクが主張するように、潜在購入者がモデル3の発売を待っていたからかもしれない。だが、既存の両モデルはいずれも、営業活動によるキャッシュフローを全く生み出していない。

モデル3は今後、他に資金を頼らない存在になるか、あるいは外部からの資本調達を可能にするものにならなくてはいけないということだ。そして、この点において時間は最も重要な要素となる。

さらに、テスラにとっては現金保有額も重要な数字だ。今年3月末時点では40億ドルとされており、この額が6月末時点でどう変わっていたのか、非常に興味深いところだ。マスクは今年1月からモデル3の発売までに20億ドルを費やしたことを明らかにしている。第2四半期中には資金調達を行っていないことから、テスラは同期の決算でキャッシュフローのマイナスを報告すると考えるのが妥当といえるだろう。

モデルSの売り上げが伸び悩むなか、モデル3の生産に必要な資金は投資家に頼らざるを得ないはずだ。先ごろテスラの最高財務責任者(CFO)に復帰したディーパック・アフジャはウォール街に対し、今年末まで、そして来年中にテスラが必要とするキャッシュフローを明確に示さなければならない。資金繰りに空いた穴の大きさと、それを埋めることに対する経営陣の切迫感が、テスラの今後の株価を大きく左右することになるだろう。

Jim Collins

最終更新:8/2(水) 8:00
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