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月に大量の水が存在か? 最新の研究が導く、月世界旅行と月ビジネスの夢

8/2(水) 8:50配信

HARBOR BUSINESS Online

 カラカラに乾いた世界のように見える月に、実は大量の水が存在するかもしれない――。こんな研究結果が7月24日(現地時間)、米国のブラウン大学の研究者らによって発表された。

⇒【写真】月に大量の水が含まれている分析結果

 月に水があるのか、あったとしてどれくらいの量があるのか、という謎をめぐっては、これまでさまざまな研究や観測が行われてきたが、まだ結論は出ていない。今回の研究も、あくまで水が大量に存在している可能性を示しているだけであり、本当に水が大量にあるかどうかを、今の段階で断言することはできない。

 しかし、もし本当に水があることがわかれば、月への旅行や移住といった夢のような計画の実現を大きく後押しする、大きな可能性を秘めている。

◆月の水をめぐる謎

 夜空に、ときには昼空にも浮かぶ月。ちょっとした望遠鏡で見れば、その表面にはクレーターと呼ばれる無数のでこぼこと、そして「海」と呼ばれる大きな平原が広がっている様子がわかる。

 月の海とは、かつて月では火山活動が起きており、地中から吹き出したマグマがクレーターを埋めてできた、”海のように見える”平原のことを指す。そのため、地球の海のように水を湛えているわけではないどころか、どこにも水は見えない。

 では、月には水はないのだろうか? 1960年代から70年代にかけて、米ソの無人の探査機が送られたり、さらにはアポロ計画で宇宙飛行士が月を訪れたりし、実際に月の岩石を地球に持ち帰って分析が行われたが、その結果わかったのは、月は見た目通り、水のないカラカラに乾燥した世界だということだった。

 ところが1990年代以降、新しい探査機による観測から、地中や内部に水があるのではないか、という結果が出始めた。一方で、月の中で最も水(氷)がありそうと考えられている月の南極地域などを観測しても、それらしいものは見つからなかった。

 さらに2009年、米国航空宇宙局(NASA)はロケットを月面に激突させて、舞い上がった月の砂埃の中を探査機が飛行してその砂埃を分析する、というダイナミックな観測を実施。その結果、水の存在をうかがわせる痕跡は見つかったものの、しかしはっきりと示す“証拠”は見つからなかった。

 こうした経緯から、専門家の間では水があると考える人、ないと考える人に分かれ、双方にそれなりに説得力のある根拠があるという、はっきりとしない(ただし科学的にはとてもおもしろく研究しがいのある)状況が続いている。

◆今回のブラウン大学の研究結果は何が新しいのか?

 そんな中、今回ブラウン大学は新たに、月に水が、それも豊富にあると考えられる研究結果を発表した。

 もともとブラウン大学は、月の水の研究については長年の実績がある。2008年には、かつて「アポロ15」と「アポロ17」ミッションで回収された月の石を、再度詳しく分析したところ、そこに含まれる火山ガラス粒子(火山が噴火する際にマグマの中にできるガラスの粒子)の中に、水が含まれていることを発見。さらに2011年には、その水の量が、地球上にある玄武岩という種類の石と同じくらいであることがわかっている。

 ここで重要なのは、アポロ計画で回収された種類の月の石が、はたして月の全体の中でどれくらいの割合を占めるのか、ということだった。たとえば、同じ種類の石が月の全体に広がっているのなら、月には豊富に水があると言えるかもしれない。しかし、もしたまたま水が多い地域から回収されたものだったとしたら、月の大部分はやはりカラカラの乾いた世界で、水はほとんどない、という可能性もある。

 そこで今回、ブラウン大学とハワイ大学の研究者らは、インドが2008年に打ち上げた月探査機「チャンドラヤーン1」が観測した月面のデータと、アポロ15、17で回収された石の分析データを組み合わせ、月の火山性堆積物に含まれる水の量を正確に検出できる方法を考案。それを用いて分析したところ、かつて火山活動によってできたと考えられる場所(アポロ15、17が着陸した場所を含む)の、それも広い範囲に、大量の水が含まれていることを示す結果が得られたという。

◆月に水があると何ができる?

 もしブラウン大学の研究結果のとおり、月に大量の水があれば、人類の宇宙進出にとって大きく役立つ可能性がある。

 現在、米国を中心に、月への探査機打ち上げや有人飛行、そして人類の移住を目指している企業がいくつも出始めている。その筆頭は「ムーン・エクスプレス」と「アストロボティック」という米国企業で、両社は無人の月着陸機の開発を進めており、数年以内に打ち上げることを目指している。

 さらに、Amazon.comの創業者ジェフ・ベゾス氏が立ち上げた宇宙企業「ブルー・オリジン」も、月への有人飛行と街の建設を構想しており、詳細はまだ明らかになっていないものの、そのためのロケットや宇宙船の開発も進めているという。

 彼らの計画は、単に月に行きたいという夢を叶えるためではなく、月にものを運んだり、人が生活できるようにして経済圏を広げたりと、月を舞台にビジネスを展開することを目的としている。

 そして、この計画にとって大きな鍵を握るのが、月の水の存在である。

 いうまでもなく、人が生きていくためには水が欠かせない。将来人類が月に移り住もうとした際、月に水がなければ、地球から持っていかなければならない。しかし大量の重い水を、地球から月へ運ぶのは大変で、コストもかかる。また、水を再生して使いまわす技術はあるので、常に運び続けなければならないというわけではないものの、それでも使える水の量は限られるため、常に水不足のような状態の生活を強いられる。

 しかし、もし月に水が大量にあれば“現地調達”できる上に、お風呂でもシャワーでも、文字どおり湯水のように使うことができる。また、水は電気分解すれば水素と酸素になるため、人が生きるのに必要な空気にできるし、さらにロケットの燃料にもできる。水があるのかないのか、あるならどれだけの量があるのかということは、月に住めるかどうかを左右する、とても大きな問題である。

 また、今回の研究結果のもうひとつ大きなところは、月の赤道付近など、比較的行きやすい場所に水が存在する可能性がある点である。

 これまで水がある可能性が最も高いと考えられていたのは、月の南極付近だった。ここにはシャックルトン・クレーターと呼ばれる巨大なクレーターがあり、その底の部分には太陽の光が半永久的に当たらず、水が氷の状態で眠っていると考えられている(ただし、これまでの探査機による観測では、少なくとも見える形では確認されていない)。

 しかし、もし月の大地の広い範囲に水が存在しているのなら、南極以外にも住める可能性が出てくる。とくに地球からロケットで行く場合、月の南極よりも赤道付近のほうが行きやすいため、探査や有人飛行、移住が、より実施しやすくなる可能性が出てくる。

◆月の水の存在と利用に、“水を差す”課題

 ただし、今回の研究結果は、あくまで水が大量に存在している可能性を示しているだけであり、本当に水が大量にあるかどうかを断言することはできない(当然、研究チームも断言していない)。そのため今後、さらに詳細な観測や探査が待たれる。

 さらに科学的には、もし水があったとしても、それがどのようにして月にもたらされたのか、という謎も残っている。

 また、月探査や移住における水の利用という観点から見ると、仮に水があったとしても、それが簡単に取り出せるのか、そして利用できるのかという問題がある。

 アポロで回収された月の石のガラス粒子には、水はわずか0.05%しか含まれていない。もちろん、このガラス粒子を含んだ火山性堆積物は大量にあるため、水の全体量はとても多いと考えられるが、それを利用するためには、地面を掘って、ガラス粒子を大量にかき集め、そこから水を取り出して……という大きな手間が必要になるだろう。そのための装置や機械を造ったり、それらを打ち上げたりするコストもかかる。少なくとも地球のように、川や海から水をすくって利用する、というようなことはできない。

 しかし、どのような形であれ、少なくとも地球から持ち込むよりは楽ではあることは間違いない。月に大量の水が眠っているかもしれないということは、明日、明後日の人類を変えるものではないかもしれないが、月への旅行や移住といった、10年後、100年後の未来を考えたときに、その実現を後押しする、大きな後ろ盾になるかもしれない。

<文/鳥嶋真也>

とりしま・しんや●宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。近著に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)。

Webサイト: http://kosmograd.info/

Twitter: @Kosmograd_Info(https://twitter.com/Kosmograd_Info)

【参考】

・Scientists spy new evidence of water in the Moon’s interior | News from Brown(https://news.brown.edu/articles/2017/07/moonwater)

・Brown-Led Team Finds Evidence of Water in Moon’s Interior | News from Brown(https://news.brown.edu/articles/2008/07/moon08)

・Scientists detect Earth-equivalent amount of water in the moon | News from Brown(https://news.brown.edu/articles/2011/05/moonwater)

・Astrobotic and United Launch Alliance Announce Mission to the Moon | Astrobotic(https://www.astrobotic.com/2017/7/26/astrobotic-and-united-launch-alliance-announce-mission-to-the-moon)

・Moon Express releases details of its lunar lander missions – SpaceNews.com(http://spacenews.com/moon-express-releases-details-of-its-lunar-lander-missions/)

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