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「旧科技庁のドン」が血税ばらまく「中国詣で」

8/3(木) 0:55配信

月刊FACTA

「旧科技庁のドン」が血税ばらまく「中国詣で」

習近平が称賛する「さくらサイエンスプラン」をご存じか。中国の行政官を物見遊山ツアーにご招待。黒幕は、あの沖村憲樹。

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「沖村先生の『さくらサイエンスプラン』を、私は『中国ノーベル賞ドリームプラン』と呼んでいる。なぜなら、沖村先生には、来日した青少年の中から中国人ノーベル賞受賞者を出すという夢があるからだ」

「沖村先生と中国には並々ならぬストーリーがあるはずだ」

これは、中国経済情報専門紙「中国経済新聞」(2017年5月20日号)に掲載された「沖村憲樹氏の『国境なき科学の絆』」と題する特集記事。執筆者は中国国家教育部出身の徐静波編集長だ。徐氏が「中国人のノーベル賞受賞を夢見る男」と呼ぶのは、元科学技術庁ナンバー2(科学審議官)の沖村憲樹(かずき)氏(77)のことである。

本誌は、今年3月号の「旧科技庁天下りのドン『沖村』」という特集記事で、沖村氏が中央大学法学部時代の後輩の高村正彦自民党副総裁らを後ろ盾に、文部科学省内の旧科学技術庁ルートの天下り人事を差配している実態を暴露した。

安倍政権は文科省(旧文部省と旧科技庁を統合)の天下りにメスを入れたが、手を付けたのは旧文部省ルートのみ。天下り先が大学などに限られる旧文部省と比べ、天下り先が豊富で国からの補助金も多い旧科技庁ルートは調べた形跡すらない。

本誌報道を踏まえ、「沖村問題」は国会でも取りあげられたが、官邸の見て見ぬふりを良いことに、沖村氏は「80歳まで一線でやる」と宣言し、文科官僚の天下り先の斡旋を性懲りもなく続けている。

沖村氏は、旧科技庁ルート最大の天下り先の国立研究開発法人「科学技術振興機構」(JST)顧問。沖村氏は、政府補助金が年間1千億円以上の巨大法人JST理事長を務め、退任後もJSTに自分のためにさまざまな機関やポストを新設して、約20年もJSTに居座る一方、電話1本で旧科技庁ルートの天下り人事を決めてきた。

「安倍政権が現役官僚による天下りの斡旋を法律で禁じたため、現役は、政官界に力を持つ実力OBの沖村氏に頼った。沖村氏は大きな声で“あいつはあそこに入れろ”“こいつは辞めさせろ”と電話でよく話している。天下り仲介により沖村氏は文科省やOBに貸しを作り、見返りに天下り団体の予算増やポスト作り、影響力拡大に利用している」

沖村氏と文科省の「持ちつ持たれつの関係」を文科省関係者はそう説明する。

■際立つ中国政府からの厚遇

懲りない御仁には追撃あるのみ。今回は沖村氏と中国の「並々ならぬストーリー」を辿りながら、沖村氏の予算獲得の舞台裏や、半ば利権化している沖村氏の事業の実態を検証する。

「習近平体制下で初めての日本人に対する授賞であり、この賞が創設されて以来、初めての研究者以外への授賞であります」

昨年3月、東京で行われた「中国国際科学技術協力賞」受賞祝賀会で沖村氏はそう言って胸を張った。祝賀会には高村副総裁や有馬朗人元文部相・科技庁長官(元東大総長)らが出席、安倍首相も祝電を寄せた。

沖村氏が昨年1月に受賞した中国国際科学技術協力賞は中国の科学技術部門の最高賞。人民大会堂で行われた授賞式には、習近平国家主席、李克強首相が出席。沖村氏は習主席と握手し、李首相から賞状を受け取った。日本の官僚出身者で同賞を受賞したのは沖村氏だけ。授賞式の後、日本の中国大使館でも沖村氏のための盛大な受賞祝賀会が行われた。沖村氏に対する中国政府の厚遇ぶりは際立っている。

沖村氏は祝賀会の挨拶で「程永華駐日大使にご推薦いただき、中国科学技術部、国務院、中国の国家指導者が判断」したと、受賞の経緯を得々と話した。

沖村氏が中国との関係を深めたのは1999年の科技庁退官後のこと。退官した年にJSTの前身の科学技術振興事業団専務理事に天下った沖村氏は、JST理事長時代(03―07年)に日中の科学技術交流に着手、JST北京事務所とJST中国総合研究交流センター(初代センター長は沖村氏、現在は有馬氏)を立ち上げた。

14年には、中国総合研究交流センターの中に、中国人を主な対象にした「日本・アジア青少年サイエンス交流事業(「さくらサイエンスプラン」=以下「さくら」)推進室を立ち上げ、自ら室長に就任している。

「さくら」の目的は、40歳以下のアジアの青少年を1週間程度、日本に招待し、日本の科学技術を体験してもらうこと。一般公募コース、高校生コースなどがあり、昨年度までの3年間で1万2690人を受け入れている。

この「さくら」が沖村氏の「中国国際科学技術協力賞」受賞の主な理由である。

■予算獲得に政界要人と折衝

「さくらが習近平らに評価された理由は、主な対象が中国人だから。沖村氏が中国に傾斜したきっかけは身内に中国引揚者がいるかららしい」(関係者)

沖村氏には「日中戦争で迷惑をかけた」という中国への負い目があるという。中国関係のイベントで沖村氏は「5千年の歴史のある中国には、さんざんお世話になったにもかかわらず、先の戦争で日本は大変なご迷惑をおかけした」と謝罪することが多い。私的な会合では、昭和天皇の戦争責任に言及することもあるようだ。

沖村氏の中国傾斜は、「さくら」の当初プランが、中国人のみを対象にしていたことに端的に示されている。関係者の話を総合すると、沖村氏は13年6月、「毎年1万人の中国人を日本に招く」との計画を立て、14年度の予算獲得を目指した。

当時は尖閣諸島の領有権問題を巡る日中対立や首相の靖国参拝問題もあり、沖村氏のプランは政府・自民党の理解を得られず、13年8月の14年度予算概算要求の締め切り時点では予算がつかなかった。

「第一次安倍政権で安倍首相は中国と『戦略的互恵関係』を築くことを決めた。だが沖村氏が持ってきた中国人だけに便宜供与するプランは、右翼の反発が必至だった」と文科省関係者は話す。

だが14年度予算が最終決着する年末には、まだ時間があった。沖村氏は巻き返しを図った。年末に向けて政官界の要人との折衝を繰り返したのだ。

最初のターゲットは安倍政権の重鎮の麻生太郎副総理兼財務相だった。沖村氏は、麻生氏と懇意の有馬センター長とともに麻生氏を訪問。「予算が認められず苦労している」と沖村氏が嘆くと、麻生氏は自らが関わった「JETプログラム」(語学指導等を行う外国青年招致事業)を持ち出し「同じように苦労した」と同情し、会合は大いに盛り上がったという。

沖村氏は大学の後輩の高村副総裁にも「予算化に力を貸してほしい」と助力を要請。高村氏は、沖村氏の勧めで政界入りした経緯があり、予算化に尽力した。

さらに財務省関係者などによると、沖村氏は当時の金融庁の畑中龍太郎長官(現・駐コロンビア大使)にも接触を図っていたという。

その一方、沖村氏は、有馬氏とともに下村博文文科相(当時)を訪問。各省庁の予算に目を光らせる財務省トップの麻生氏のお墨付きを得たためか、安倍首相の側近で、中国への警戒感の強い下村氏も予算化を了承した。

「下村氏としても、高村副総裁らがバックにいるプランをむげに潰すわけにいかなかった。下村氏は“中国のみなら認められないがアジア諸国も加えるならいいでしょう”と、アジア諸国を加えることを条件に渋々承諾した」(文科省関係者)

こうして14年度、初めて「さくら」に約8億1千万円の予算がついた。

「さくら」は、13年にインドネシア訪問中の安倍首相が発表したアジア・大洋州諸国地域の青年交流事業「JENESYS2.0」と完全にバッティングしていた。首相肝入りのJENESYSも中国を含むアジアの青年を日本に招待する事業だからだ。ところが、本来なら予算化が難しかった「さくら」の予算は15年度約12億円、16年度15億円、17年度18億円と毎年増加。17年度予算の折衝では沖村氏は「高村副総裁室から財務省幹部に電話で交渉していた」(関係者)という。沖村氏は並々ならぬ政治力の持ち主らしい。

■中国出張では「しょっちゅう宴会」

麻生氏らの尽力については自民党機関紙『自由民主』(17年7月4日号)で沖村氏も、こう認めている。

「事業の立ち上げには、当時の下村博文文部科学大臣と有馬朗人元東京大学総長のご支援を頂き、麻生太郎副総理と高村正彦自由民主党副総裁のご指導を頂きました」

なお「さくら」の予算が増えた15、16年度の文科省の事務次官は旧科技庁出身の土屋定之氏、文部科学審議官は旧科技庁出身の戸谷一夫氏(現・文科省事務次官)。2人は前・官房長の佐野太氏(旧科技庁出身)同様、「沖村派」の中核メンバーである。

沖村氏が進める「さくら」の実態を見よう。昨年度「さくら」が招いた外国人は35カ国、5519人。このうち中国が1808人で突出して多く、以下、タイ544人、インド536人、ベトナム382人など。

中国偏重は沖村氏の訪問先にも現れている。「さくら」の対象国は35。ところが沖村氏が「毎年足しげく通っているのは中国だけ」(関係者)。中国以外の国は、予算獲得の方便か、付け足しなのだろう。

沖村氏の中国詣でで気になるのが中国訪問中の「車代」と「飲食費」。本誌の情報公開請求に対しJSTが開示した資料(14―17年度中に沖村氏がセンターの女性幹部と2人で訪中したものが対象)を見ても、車代と飲食費の記載が見当たらないのだ。

資料によると、沖村氏の日程は午前、午後1カ所ずつか、1日1カ所で基本的にスカスカ。夜の日程の記載はない。

「沖村氏は大の酒好きで、中国科学技術部(日本の文科省に相当)や地方政府の幹部らとしょっちゅう宴会している。飲食費などの明細がない理由は、飲み食いも移動も中国持ちだからでしょう」(関係者)

開示資料には「中国科学技術部の車で移動」という記載が目立つ。一般的には、これを「顎足付き」と呼ぶ。

一方、「さくら」の事業で、とくに目を引くのが中国政府の行政官の招待だ。16年度は中国の行政官を60人受け入れている。行政官全体の受け入れ人数は103人。その約6割を中国が占め、2位のスリランカは12人、他の国は4人以下だ。

なお「17年度は畑中氏が大使を務めるコロンビアからも行政官を数名受け入れているが、公表していない」(関係者)という。

青少年の交流事業になぜ中国の行政官を招待するのか。沖村氏は、その目的を「若手行政官を招聘し、日本の高度な行政を勉強してもらい、日本の行政官との交流を図ること」(『自由民主』)と説明している。

■招聘プログラムにクルージングも

だが、立派なお題目と異なり、招聘の実態が単なる物見遊山に過ぎないことが、本誌が入手した今年の中国行政官招聘プログラム案(6月26日時点)で明らかになった。

プログラム案によると、日程は8月29―9月2日の5日間。初日は北京から昼過ぎに羽田着。JST訪問後、「鮨乃家」で歓迎会。宿泊は期間中、ホテルサンルートパティオ大森。2日目は午前中にJAXA筑波宇宙センターの「一般見学コース」を見学。筑波大学訪問後、夜は人気回転寿司チェーン「くら寿司つくば研究学園店」で食事。3日目は観光コースの日本科学未来館を見学後、レインボーブリッジが見渡せる「焼肉ガルーバお台場」で昼食。東京ビッグサイトでイノベーションジャパンの展示会を見学後、「JST交流会」という宴会。

4日目も午前中に同じ展示会を見学後、昼食を兼ねて東京ビッグサイトから浅草まで「東京クルーズ乗船」。さらに「体感型アトラクションゾーン」をうたう千葉工業大学東京スカイツリーキャンパスを約1時間探索し、夜は落語を鑑賞できる「江戸味楽茶屋そらまち亭」で宴会。5日目は皇居と国会議事堂を見学し、名古屋名物「みそかつ」で有名な「矢場とん東京銀座店」で昼食後、北京へ。

寿司や海鮮料理、焼肉をがっつり食べて、東京湾のクルージングや皇居見学までついているのだから至れり尽くせり。これのどこが「日本の高度な行政の勉強」なのか。

なお行政官の招待はJSTから、沖村氏の息のかかった公益社団法人「科学技術国際交流センター」にも外注されている。JSTだけに集中すると、中国との癒着が目立ち過ぎるかららしいが、費用はいずれもJST予算=国民の税金で賄われていることを忘れてはならない。

中国側の窓口は中国科学技術部など。爆買いツアーが下火になったとはいえ、行政官にも日本側丸抱えの旅行は人気の的。関係者によると「中国科学技術部などとコネのある地方政府の幹部や有力者の子弟でないと訪日メンバーに入れない」というから一種の利権と化しているようだ。

本誌の取材に対しJST広報は、沖村氏が当時の畑中長官に「さくら」について説明したことを認めたが、コロンビアからの受け入れは「高校生と大学生」として、行政官については認めていない。

顰蹙を買う「さくら」のことを、文科省内ではひそかに「さくら散るプラン」と呼んでいる。

ファクタ出版

最終更新:8/3(木) 0:55
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