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Art 六本木開館10周年記念展『神の宝の玉手箱』

8/3(木) 20:05配信

中央公論

アニメばかりがクールジャパンではない

 十六世紀半ばから十七世紀前半にかけて、オランダ東インド会社を通してヨーロッパに積み出された日本の漆器は、中国の陶磁器をチャイナと呼ぶのに対して、ジャパンと呼ばれ、ヨーロッパの貴族たちの垂涎の的となった。それほどまでヨーロッパで評判だった漆工芸作品が、現在の日本ではあまり人気がない。それは、日常生活において擬似漆器のほうが取り扱いも便利で、本物の漆製品が高価なものとして敬遠されているためでもある。
 ここらで一度、本物の漆の魅力を覗いてみてはいかがだろうか。アニメばかりがクールジャパンではないのだ。そんな気になった方にお薦めしたいのが本展である。
 本展はサントリー美術館所蔵の国宝《浮線綾螺鈿蒔絵手箱》の修理後初公開を契機に企画され、著名神社に奉納された手箱を、それにまつわる服飾や調度などの神宝類と併せて公開するものだ。
 例えば出雲大社に伝わる国宝《秋野鹿蒔絵手箱》は、黒漆から浮かび上がる金蒔絵や螺鈿で表された秋草や小鳥、鹿の姿などが可愛らしい。丸みを帯びた角を持つ手箱のふくよかな器形は、鎌倉時代の好みを伝えている。
 本展の最後には明治から現代に至る名工が模造してきた名品手箱が紹介される。通常、複製や模造という表示があると通過してしまうだろうが、名品の形だけでなく技法までが忠実に模造されていることを知ると熟覧の価値がある。室瀬和美の《梅蒔絵手箱》などカワイイの一言に尽きる。

7月17日(月・祝)までサントリー美術館

安村敏信 萬美術屋

最終更新:8/3(木) 20:05
中央公論

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