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ベテランの「点取り虫営業」変えた大事件! キリン首位奪還も、社長は再び修羅場

8/3(木) 12:14配信

NIKKEI STYLE

――若手社員がビール「一番搾り」の営業で1日120軒の顧客訪問を達成、大阪支社の空気が変わり始めた。

 キリンビールの布施孝之社長の「仕事人秘録」。第10回はビール首位奪還を果たした時期の大阪支社での奮闘を振り返ります。
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 営業スタイルを変えるには起点となるXデーが必要です。私は「一番搾り」のリニューアル直前の2009年2月のある日に、そのXデーを設定しました。そしてその日、入社2年目の若手社員に120軒の顧客訪問を指示したのです。

 若手社員はその目標を3つも上回り達成してくれました。ベテラン社員たちに衝撃が走りました。何せ1日に7~8軒も回れば十分というのがあたり前だった時代です。そのあたり前を自分の息子のような若手が覆し120軒訪問を達成したわけですから、ベテラン社員たちものんびりしていられなくなりました。

 私が来る前の大阪支社には「点取り虫営業」がまん延していました。「ビールならこれだけ」「ワインはここまで」と設けられた目標を達成すれば自分の仕事は終わり。合格点さえとってしまえば、それでいいというわけです。

 入社2年目の若手の120軒訪問はそんな沈滞した支社のムードを変えてくれました。チーム全体が「自分もやろう」「やれる」という意識に変わっていったのです。

 こうなるとプラスの循環が始まります。力を入れた「一番搾り」は注文が増えるのは当然です。しかし、「一番搾り」の営業で顧客との接点を増やしているうちにワインや焼酎も自然とそれにつれて売れていく。顧客との関係が強く、近くなっていく分、他の注文もどんどん増えていくのです。社員のモチベーションもあがっていきました。

――大阪支社は09年、会社のシェアアップに大きく貢献したことで「キリンビール大賞」を受賞する。

 「そんなことできない」「とても無理だ」――。年末近くになるとこんな言葉を吐く社員はもういなくなりました。みんなやる気に満ちていました。そしてとうとうキリンビールはこの年、アサヒビールを抜き、9年ぶりに首位を奪還します。長いトンネルを抜け、光が差し込んできました。

 光が差したのは大阪支社も同じでした。これまでの問題支社はその汚名を返上し、優秀な支社に変身しました。そしてキリンビール大賞を受賞しました。

 その年のパーティーで定年を前にしたある社員が行ったスピーチは今でも忘れられません。その社員はこう言ったのです。「まさかこの年齢になってこんなに素晴らしい仕事ができるとは。定年後の残りの人生を誇りをもって生きられます」

 「良い支社になった」。しみじみそう思いました。私も少しリーダーの仕事が分かってきたような気がしました。しかしここでまたもや辞令です。行き先はグループ会社の小岩井乳業。「乳事業など全然、分からないのに何をしろというのだろう」。そこで待っていたのはまたもや修羅場でした。
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[日経産業新聞2016年8月5日付の記事を一部再構成]

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最終更新:8/3(木) 12:14
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