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昔は良かった? 照明がなければ人は長く眠れるのか

8/3(木) 12:02配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

人工照明もテレビもスマホもなかった頃の方が人はよく眠れていた?

 現代人は安眠できていない、寝足りていない、と漠然と信じている人が多い。社会が近代化される以前、人工照明やテレビもなく、ひっそりと長い夜を過ごした昔の方がよく眠れていたのではないかと。

【フォトギャラリー】昔ながらの暮らしを守るハッザ族

 たしかに、人工照明(ブルーライト)の影響で体内時計が遅れ気味になり、夜型生活が進行しているのは事実である。過去50年間で就床時刻は1時間以上遅くなる一方で、朝はギリギリまで寝ているためこれ以上遅らせることはできず、結果的に日本人の平日の睡眠時間は正味1時間短くなった。日本人の睡眠時間が世界で最も短いのはご承知の通りである。

 また、不眠症や睡眠時無呼吸症候群のような睡眠障害は増加傾向にあるし、交代勤務(夜勤)や時差ぼけなども24時間社会の中で常態化している。

 加えて、ストレスや長時間労働による不眠や睡眠不足の問題がある。

 つい最近も、新国立競技場の建設工事に従事していた若い現場監督が過重労働が原因と思われる自殺で亡くなるという悲劇があった。工期の遅れを取り戻すために長時間労働や深夜勤務が続き、ある報道によれば、自殺直前の1カ月で、徹夜が3回もあり、夜22時以前に仕事が終わったのは5日だけだったという。

 では、近代化される以前の人々の睡眠はどうだったのだろうか。ストレスや疾病はどの時代にもあったにせよ、人工照明や夜勤など人間の生理現象に反する環境要因から解放されれば、もっと長く、質の良い睡眠を取れるようになるのだろうか。そのような疑問をもった睡眠研究者たちがいる。

結果は「予想よりも短かった」

 米国カリフォルニア大学の研究者を中心としたグループは、タンザニア北部に住むハッザ族、ナミビアのカラハリ砂漠に住むサン人、そして、ボリビアの先住民チマネ族など世界各地の狩猟採集民族の睡眠習慣を調査した結果を報告している。

 ちなみに、私が子どもの頃にはサン人はブッシュマンと呼ばれていた。現在では侮蔑的かつ性差別表現だとして使われなくなったが、明るい太陽の下、日中は狩猟や食物の採取、夜はぐっすりと休んでいるイメージがある。

 これら3部族の居住区域では電気やガスなどの社会インフラが十分に整備されていないため、人工照明は使えない。日没後にはたき火程度の明るさしか得られず、当然ながらテレビやインターネットなど睡眠時間帯に食い込むような娯楽もない。ハッザ族の生活の様子についてはナショジオで以前紹介している(「ハッザ族 太古の暮らしを守る」) のでご覧いただきたい。

 季節や緯度によっても違うが、これらの地域では概ね日没が18時~19時、日の出が6時~7時で、いわゆる夜は12時間前後である。さて、彼らの睡眠時間はどうだっただろうか。夜長をぐっすり眠って過ごしていたのだろうか。結果から言えば「予想よりも短かった」のである。

 12時間も闇夜で生活しているにもかかわらず、睡眠時間は平均で6.4時間(6時間24分)しかなかった。3つの部族間での違いもほとんどなかったとのこと。

 調査対象者の平均年齢は36.5歳であったが、先進国の調査では同年代における睡眠時間は約7時間である。つまり30分以上短かった。ちなみに、ここでの睡眠時間とは正味の眠れている時間のことで、寝床にいる時間ではない。

 彼らの寝つく時刻は早く、日没から3時間後の21時過ぎであった。そして、明け方5時頃、日の出近くになって目を覚ます。寝床にいる時間は8時間前後で、かなりの早寝早起き生活である。すっかり夜型生活に染まった現代人でも、人工照明がなく太陽光のみの環境下で生活させられると体内時計の時刻が早まり、睡眠時間帯が早まることが実験でも明らかになっている。

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