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患者のために奔走した日野原重明さんの意思を継ぐ人々

8/4(金) 7:00配信

NEWS ポストセブン

 聖路加国際病院(東京都中央区)の名誉院長だった日野原重明さん(享年105)が7月18日に逝去した。胃ろうや経管栄養などの延命治療を拒否し、自宅で家族が見守るなかでの大往生だった。

 死の間際まで現役を貫いた日野原さんの想いは、後人にしっかりと受け継がれる──。約20年前から親交がある諏訪中央病院名誉院長の鎌田實さん(69才)の脳裏には、盟友のさまざまな姿が浮かぶ。

 2005年、2人で宮崎県で講演を行った際、当時93才の日野原さんは重いかばんを両手に持ちながら「ぼくは階段を上らないとダメなんだ」と言ってエスカレーターをヒョイヒョイと駆け上がった。

 昨年4月の佐賀県での講演では、「鎌田くんの話を聞きたいんだ」と用意したベッドに寝そべって鎌田さんの講演を聴いていたが、その最中にいびきをかいて眠りこんだ。そこまでして話を聴こうとする好奇心に鎌田さんは驚いたという。

 ある時、日野原さんは鎌田さんにこう言った。

「鎌田くん、『ラ』じゃないとダメなんですよ」

 どういうことか。

「例えば患者に『おはようございます』と言う時、ドレミファの『ド』の音程で言うと、静かで暗い感じになる一方、『ラ』の音程だと明るい感じがして、鬱屈したホスピス患者の心持ちがふっと軽くなることがある。要は患者の容体によって声の高さを変えてコミュニケーションするわけです。“先生は患者のためにこんなことまで考えていたのか”と驚きました」(鎌田さん)

 鎌田さんが名誉院長を務める諏訪中央病院は、周囲を八ヶ岳連峰などの山々に囲まれている。中庭にはボランティアが手がけるハーブガーデンがあり、医師と患者、スタッフにボランティアまでが「いい天気ですね」「気持ちがいいですね」と互いに声をかけあう。日野原さんの教えの通り、患者とのコミュニケーションと心の通い合いを大事にする病院である。

「日野原先生から学んだのは、患者を中心とする医療です。現代医療は臓器という“部分”にこだわり、患者を“丸ごとの人間”として見ようとしません。患者の人生や考え方をしっかりと聞き、医療従事者と患者が信頼関係を結びながら、その先の治療方針を共同作業で決めていくことがいかに大事か。それを日野原先生は常に語っていました」(鎌田さん)

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