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IMFが日本の労働市場改革を提案

8/4(金) 8:58配信

NRI研究員の時事解説

<要旨>

国際通貨基金(IMF)は、労働市場の構造改革を通じて賃金引き上げに繋げる政策を日本に提案している。IMFは、日本の労働市場が正規雇用と非正規雇用の間でニ分されていることが、生産性上昇を阻む一因であるとの認識があり、これを双方向から次第に解消させていくことを提案している。しかし正規雇用の流動化は、企業の新規雇用意欲を高める一方、短期的には正規雇用の賃金に下落圧力をかける可能性もあることから、現状では受け入られにくい面もある。ところで、2%の物価安定目標の達成が依然見通せない中、その大きな理由でもある賃金上昇率を高めるため、日本銀行が物価上昇率ではなく賃金上昇率に目標を持つべきだとの意見もある。しかし、これは日本銀行の使命を超えているという点で問題であるだけでなく、そもそも目標は金融政策を通じてコントロール可能なものでなければならない、という原則に照らしてもおかしいものである。

IMFは労働市場改革を日本に提案

国際通貨基金(IMF)が対日協議(注1)を受けて公表した報告書(注2)では、労働市場の構造改革を通じて賃金引き上げに繋げる政策が、日本に対して提案されている。単純に、賃上げを企業に求める議論が国内で広がる中、労働市場の構造改革を通じた賃金引上げを主張する見解は、傾聴に値しよう。

同報告書では、日本の労働市場が正規雇用と非正規雇用の間でニ分されていることが、生産性上昇を阻む一因であるとの認識が示されている。雇用形態が固定化する中で、安定した雇用を維持できる正規社員では生産性向上の誘因が高まらない一方、非正規社員は技術を習得する十分な機会が与えられないといった問題が生じる。さらに、長時間労働という文化が定着していることが、高学歴の女性の活躍を阻んでいる点も指摘されている。

賃金が上がらない背景

また、労働需給が逼迫する中でも賃金上昇率が高まりにくい背景として、日本独特の労働市場、労働慣行の問題点が挙げられている。具体的には、終身雇用制、同業種間での労働者の移動率の低さ、賃金よりも雇用を重視する労働者の志向、年功序列の賃金体系、である。

そのうえで、政府が進める「働き方改革」は、労働生産性向上と賃金引き上げを目指すものとして、評価している。具体的には、(1)残業の抑制はワーク・ライフ・バランスを改善させ、企業の文化を長時間労働から生産性向上に向けさせる、(2)最低賃金の引き上げと、生産性を向上させた企業への補助金は、中小企業の価格支配力を高める。(2)「同一労働同一賃金」のガイドラインは、非正規社員の正規社員化を促すことで、勤労意欲が高まり、労働生産性向上に繋がる、(3)補助金や情報提供の強化を通じて、企業間の労働者の移動を促すことは、経済効率の向上につながる、(4)非熟練外国人労働者の活用は、特定業種での深刻な人手不足を緩和する、等の評価であると思われる。

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