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2100年、酷暑でアジアの一部が居住不能に、15億人に影響

8/4(金) 19:35配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

大移住の時代がやってくるのか、最新研究

 このまま地球温暖化が進行すると、南アジアの一部は人が生きていけないほどの暑さに見舞われるという研究結果が発表された。最も深刻な影響を受けるのはインド北部、バングラデシュ、パキスタン南部。世界人口の5分の1に相当する15億人が暮らす地域だ。南アジアで最も貧しい地域のひとつでもあり、多くの人が何時間も屋外での厳しい農作業に従事し、自給自足に近い生活を送っている。

【写真】南アジア、ガンジス川と人々の暮らし 写真17点

「彼らは気候変動の影響を受けやすい状況にあります」と、今回の研究を行った米マサチューセッツ工科大学(MIT)の環境工学教授エルフェイス・エルタヒール氏は話す。

 オンライン科学誌「Science Advances」に8月2日付で発表された論文によると、このまま炭素排出量を抑制しなかった場合、数十年以内に命の危険を伴う熱波が発生し、一帯の食料供給の大部分を担う肥沃なインダス川、ガンジス川流域が壊滅的な被害を受けかねないという。

 ただし、2015年のパリ協定で誓約した通りに炭素排出量を削減すれば、リスクを大幅に減らすことができる。「この地域で暮らす人々の命は、炭素排出量を削減できるかどうかにかかっています。これは抽象概念などではありません」とエルタヒール氏は話す。

人が生きていけない暑さとは

 南アジアはすでに世界で最も暑い地域の一つだが、エルタヒール氏らは最先端の気候モデルを使用し、南アジアの将来の温度と湿度を予測した。米海洋大気局(NOAA)国立気象局のヒート・インデックスによると、気温34.4℃、湿度80%の場合、体感温度は約54℃となる。何らかの方法で体を冷やさなければ極めて危険とされる温度だ。

 人が生きるか死ぬかに関わる暑さの指標は、気温と湿度を組み合わせた「湿球温度」で表すことができる。湿球温度が35℃(たとえば気温約38℃、湿度85%)に達すると、人体に備わる冷却機構だけでは数時間しか生きられない。今のところ、この条件を満たす気候は非常に珍しい(35℃より低い湿球温度でも命取りになることはある)。

 インドでは現在、人口の約2%が32℃に近い湿球温度にさらされることが時折ある。論文によれば、このまま炭素排出量を削減しなかった場合、2100年までにこの割合が約70%に上昇するという。さらに、約2%の人は、生存の限界である湿球温度35℃にさらされるようになる。

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