ここから本文です

甲子園よりも大切なこと。胸熱くなる高校球児たちの「それぞれの夏物語」

8/4(金) 12:01配信

webスポルティーバ

■6年間の不登校を乗り越え、チームに欠かせない存在に

 最後の夏、出場機会はなかった。それでも小鹿野高校(埼玉)の控え選手・木村太次郎(きむら・だいじろう)はこれまでにない充実感を抱いて、高校野球生活を終えた。

■「九州の快腕」「宮城のドクター0」…地方大会で消えた凄い投手たち

 木村は小学校4年の時から中学3年まで不登校だった。それでも「高校は絶対に行きたい」と両親に話すとともに、「自分のことを誰も知らないところに行きたい」と願った。

 そこで母の智子さんが全国津々浦々の学校を探したなかで、偶然見つけたのが埼玉県秩父郡の山奥にある小鹿野高校だった。縁もゆかりもない人口1万2千人弱の小鹿野町。だが「廃校の危機にあった町の唯一の高校に、早稲田大とプリンスホテル(現在廃部)でそれぞれ日本一に輝いた名将・石山建一氏が外部コーチとしてやってきた」という記事を見つけ、そこには「山村留学制度を使って、野球部員の募集も行なっている」とも書いてあった。

 小さい頃から大の西武ファンだった太次郎に勧めると、進学を決断した。それでも6年間にわたり通学をしていなかったため、父の善紀さんは「初日や2日目に帰ってくるかもしれない」と心の準備をしていた。だが、その不安は杞憂に終わった。

 野球部の仲間とともに学校生活と練習の日々を送り、山村留学で入学した選手たちと老舗温泉旅館の須崎旅館で寝食をともにし、かけがえのない時間を過ごした。そのなかで身長が10センチも伸びると同時に、精神的にも大きく成長した。

 1年半前からはチームに貢献しようと、自ら率先して相手校の分析を担い、選手の特徴やタイムなどをベンチで細かく記録して選手たちに伝えた。石山氏も「チームに欠かせない存在」と目を細める。

 そして木村は、校内の学業成績も上位になり、指定校推薦での大学進学を視野に入れている。

 チームは3回戦で敗退し、木村はほかの選手とともに涙を流したが、最後はしっかりと背筋を伸ばし、率直な思いを語った。

「最初は知っている人が誰もいないからこその不安がありましたが、みんなのおかげです。町の人も『いってらっしゃい』『おかえり』と声をかけてくれて、町全体が家族のような存在でした。苦しいこともあったけど、乗り越えることができたのは、今後につながる大きな財産になりました」

■チームのために裏方に徹した、最強記録員の夏

 一昨年に夏初勝利を挙げ、昨年は東東京大会で16強入りした日本ウェルネスが、今年も16強入りを果たした。通信制の同校では、様々な背景を持つ選手を受け入れたなかで強化を進めている。

 他の私学と同じようにスポーツ推薦制度で入学した選手がいる一方で、勉強についていくことが困難だった選手や、不登校や転校を経て入学してきた選手もいる。

 就任4年目の美齊津忠也(みさいつ・ただなり)監督は常々「野球がうまいかヘタが最も大切ではない。それで人生が変わるわけではないので、強い子を育てていきたい」と口にしてきた。今年でいえば、その象徴的存在が記録員を務めた磯田大樹だ。

1/3ページ

記事提供社からのご案内(外部サイト)

Sportiva

集英社

Sportivaムック
10月5日(木)発売

定価 本体1,593円+税

フィギュア特集
『羽生結弦 いざ決戦のシーズン』
■オータムクラシック2017
■宇野昌磨、本田真凜ほか