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元神父は刑務所で何を考えたのか --- 長谷川 良

8/4(金) 15:37配信

アゴラ

未成年者への性的虐待で12年の刑期を言い渡され米マサチューセッツ州の刑務所に拘留されていた米国のポール・シャンレィ神父(Paul Shanley)が7月末、刑期を終えて出所した。

同元神父は路上神父として有名で、問題児の青少年をケアしていた。米ボストングローブ紙が同神父の未成年者への性的虐待を摘発し、米カトリック教会の聖職者の性犯罪問題を暴露、2002年のピューリッツァー賞を受賞している。同内容は2015年「スポットライト」(トム・マッカーシー監督)という映画となり、第88回アカデミー賞作品賞、脚本賞を受賞している。
同元神父(86)は2004年、バチカンから聖職をはく奪された。ボストン大司教区は元神父の釈放について「未成年者への性的虐待は絶対に許されない」という内容の声明を発表した。

同元神父は過去12年間、刑務所で自身の罪に対してどのように向き合い、神と対峙してきたのだろうか。バチカン放送(独語電子版)は刑務所から釈放されたばかりの元神父の写真を掲載した。杖を持ちながら歩く元神父は既に老人だった。

米国では、未成年者への性的虐待で牢獄入りした場合、他の受刑者からも軽蔑され、罵倒されるケースが多いと言われている。ましてや、聖職者の場合、どんな暴行を受けるかは分からない。元神父はそれらのことを全て体験したのだろうか。

ローマ法王フランシスコは聖職者の性犯罪に対しては“ゼロ寛容”の政策を実行してきたが、聖職者の性犯罪は依然、起きている。最近では、バチカン(ローマ教皇庁)の最高幹部の一人、ジョージ・ペル枢機卿(76)が児童らを性的に虐待したとされる事件の初公判が7月26日、豪メルボルンの裁判所で開かれたばかりだ。同枢機卿は「全面的に無罪を主張する」と容疑を否定している(次回公判は10月6日予定)。

性犯罪で有罪判決を受け、刑務所に送られた聖職者は少なくない。イタリア北東部のトリエステのローマ・カトリック教会の神父は自殺した。神父の所属する司教区の話によると、48歳の神父は2014年10月25日、13歳の少女に性的虐待を行ったことを司教に告白していたという。神父は司教に聖職停止を自ら求めると共に犠牲者への謝罪を表明していた。司教が神父に教会の裁判が行われる旨を伝えようとしたところ、部屋で首をつって死んでいる神父が発見された。未成年者への性的虐待という罪の重さに耐えられず、自ら命を絶ったのだろうか。

聖職者から性的虐待を受けた犠牲者の一人、スイス人のダニエル・ピッテー氏(57)は現在、結婚し、6人の子持ちだ。図書館司書として働いている。同氏は8歳の時、一人の神父(カプチン会所属)に性的虐待を受けた(同氏は当時、ミサの侍者を務めていた)。それが4年余り続いたという。その内容をこのほど一冊の本として出版した。タイトルは「神父さん、私はあなたを許します」だ。

フランシスコ法王は2015年、バチカンで同氏と知り合いになり、同氏の本の序文を寄稿した。
フランシスコ法王は、「彼の証言を聞く者は聖職者の心にどのように悪魔が侵入するかを学ぶだろう。キリストに仕え、教会に奉仕する神父が悪魔のような行為をどのように行うことができるのか。人々を神のもとに導くべき者が犠牲者の生命、そして教会の命を破壊できるのか。犠牲者の中には自殺した者もいる。これは私の心、良心、そして全ての教会が背負っていかざるを得ない重荷だ。謙虚に頭を下げ、許しを求めざるを得ない」と記述している。

性犯罪を犯した聖職者の中には、刑期を終えたばかりの米元神父、その罪の重さに耐えられずに自ら命を絶った神父、そしてバチカン最高位の枢機卿は未成年者の性的虐待容疑で公判に臨み、自らの潔白を証明するために戦っている。様々なケースがある。それぞれが自らの「罪と罰」に直面していることだけは間違いないだろう。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年8月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』(http://blog.livedoor.jp/wien2006/)をご覧ください。

長谷川 良

最終更新:8/4(金) 15:37
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