ここから本文です

派閥均衡の内閣改造は安倍首相の「敗北宣言」

8/4(金) 6:10配信

JBpress

 安倍内閣の改造が発表された。首相は記者会見で「国民から大きな不信を招く結果となった。改めて深く反省し、国民の皆さまにおわび申し上げたい」と低姿勢を強調した。その背景には、ここ数カ月の騒動による内閣の求心力低下がある。

 改造内閣は防衛相に小野寺五典氏、文部科学相に林芳正氏など岸田派が4人、外相に河野太郎氏など麻生派が3人も入閣する派閥均衡になった。これは「お友だち」色を薄めたのだろうが、自民党内からそういう催促があったわけだ。第3次安倍内閣の「官邸主導」はこれで終わり、自民党も官僚機構も昔に戻るだろう。

■ 派閥均衡の「低姿勢内閣」

 「内閣改造」という言葉は、戦前にはなかった。閣僚を任免するのは天皇の権限だったので「一内閣一閣僚」が当然であり、人事ができないときは内閣総辞職するのが憲政の常道だった。改造を政権の求心力維持に利用するようになったのは、戦後の吉田茂内閣である。

 1年ぐらいで閣僚が交代したのでは政策を覚える時間もないが、官僚主導の政治システムの中ではそれでよかった。それより政治家が選挙区で「**大臣を拝命しました」と売り出せる肩書きが大事なので、派閥ごとに割り振りを決めて各派が推薦し、その中から首相と官房長官が年功序列の「派閥順送り」で決めた。こういう慣例は小泉内閣で廃止されたはずだが、今回の改造ではそれ以前の人事に戻ってしまった。

 今年に入ってからの森友学園や加計学園や防衛省の日報などの問題が内閣を揺るがした背景には、1つの共通点がある。それは「一強」といわれた首相官邸の力を弱め、自民党と官僚の主導権を取り戻すことだ。この結果、内閣支持率が30%を切る事態に発展したが、この奇妙なスキャンダルの原因は何だろうか。

■ 政治主導で各官庁に「ヒラメ」が増殖した

 1つの原因は、朝日新聞の異常なキャンペーンだ。その中身はスキャンダルとさえいえない些細な問題で、本来は国会で1回答弁したら終わる程度の話だった。しかし安倍首相が5月3日に憲法改正案を発表してから攻撃が強まった。「第9条の改正反対」を打ち出した朝日は、安倍内閣を倒すまでやる方針を決めたのではないか。

 もう1つの原因は、霞が関の中から「内部告発」が増えたことだ。加計学園も最初は文部科学省から非公式のメモが出てきただけだったが、前川喜平前事務次官が「これは本物だ」と記者会見して大問題に発展した。彼の話は「内閣は文科省の決定に従え」という本末転倒だが、マスコミは連日、彼の言い分を一方的に紹介した。

 この背景には、内閣と官僚機構の葛藤がある。民主党政権は「政治主導」を唱えたが、官僚がそっぽを向いて何もできなかった。それに対して衆参両院の圧倒的多数を押さえた安倍内閣は、内閣人事局で幹部級の官僚の人事を動かすようになった。

 国家公務員の人事権は内閣にあるので、これは当たり前だが、今まで内部昇進で年功序列を守ってきた官僚にとっては、政治家が人事を決めるのはショックだった。特に消費税の増税延期をめぐって首相官邸と財務省が対立した2014年末ごろから、菅義偉官房長官が強く人事に介入するようになった。

 そのころまで「菅さんは人の話をよく聞く」といっていた官僚が、「内閣の意向を振り回す」とか「安倍政権にゴマをするヒラメが出世する」というようになった。これは「上ばかり見ている」サラリーマンのことだが、大企業にもたくさんいる。

 官僚の人事を官僚がやっているときは、政治家が介入しても筋を通した官僚は評価される。閣僚は1~2年しかいないので、その言うことを聞くより、天下り先まで末永く面倒を見てくれる役所に忠実に行動するが、安倍内閣が長期政権になると、いったん外されて「傍流」になったら戻ってこられない。

 官僚は役所にしがみつくしかないので、不満が鬱積して反乱を起こす。これが文科省のような弱小官庁なら大した問題ではないが、防衛省のように制服組が情報漏洩して大臣を追放しようと画策すると、一種のクーデタになって危険だ。

1/2ページ

最終更新:8/4(金) 6:10
JBpress

記事提供社からのご案内(外部サイト)

JBpress PremiumはJBp
ressが提供する有料会員サービスです。
新たな機能や特典を次々ご提供する“進化
するコンテンツ・サービス”を目指します。