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中国で日本の介護会社が苦戦、「日式」の強みを生かせない理由

8/4(金) 6:00配信

ダイヤモンド・オンライン

 一人っ子政策が長く続いた中国は、将来的に高齢者率が高まり、介護市場の急増が予測されている。一方、日本では高齢者率は高まるものの、人手不足や保険財政の制約などから介護事業者にとっては厳しい経営環境が続いている。このため、中国の介護市場に進出する日本の介護事業者が増えつつあるが、苦戦する企業が少なくないという。その実情や理由などを日中の介護事情に詳しい日中福祉プランニングの王青代表に聞いた。(ダイヤモンド・オンライン編集部 山本猛嗣)

● 「日式介護」の強みは まったく発揮できていない

 ――最大手のニチイ学館をはじめ、日本の介護事業者は介護市場の需要増が見込まれる中国に相次いで参入していますが、現状は厳しいと聞いています。実態はどうなのでしょうか。

 正直なところ、現在の状況は、非常に厳しいと言わざるをえません。中国で展開する多くの日系企業が赤字で、苦戦しています。4年ほど前にオープンしたある日系企業が運営する老人ホームもやっと入居率が80%に上がってきたところです。通常ならば、2年程度で90%を超えなければ、収益面で厳しいところですが、ずっと50%程度の状況が続いていたようです。

 ――とはいえ、他国に先んじて高齢化社会を迎えている日本の介護のレベルは高く、中国をはじめアジア各国からは日本の介護施設などの見学は絶えません。いわゆる「日式介護」は注目されていると聞きます。

 残念ながら、現在の中国では、日式介護の強みはまったく発揮できていません。ある日系企業の老人ホームがオープンした際、多くの中国人の介護関係者も見学しましたが、「この程度なのか」と驚いていたのが印象的でした。

 確かに、日本国内で日本の介護施設を見学した中国人は、「日式介護は素晴らしい」と絶賛します。私も素晴らしいと思います。ところが、現在の中国国内での状況を見ると、まったく差別化できていません。例えば、建物や間取り、内装などのハード面は、日本と同じなのですが、肝心のスタッフやサービスの質というソフト面では、イマイチな状態なのです。

 介護職員の資格は、大きく分けて初級、中級、高級と3段階に別れていますが、この日系企業が運営するホームの介護職員の資格を見ても、中級、高級レベルの高いレベルの資格を持つ職員は少なく、人気も乏しいのが現状です。

● マーケティング不足に加え 制度や習慣・文化の違いで苦労

 ――日本の介護事業者が「日式介護」の強みを発揮できず、中国で苦労している理由は何なのでしょうか。

 まず、明らかなマーケティング不足という点が見られます。冒頭で述べた老人ホームもそうですが、場所が都市部からクルマで1時間以上離れているなど立地が極端に悪いケースが見られます。なので、入居者はもとより、介護のスタッフも集まりにくい。

 現地での合弁先企業を見ても、不動産会社やホテル、IT企業などの異業種の企業が目立ちます。介護の実態を知らないパートナー企業の意見を聞けば、上手くいくはずもありません。

 次に、日本と中国の制度面の違いがあります。日本にはきちんとした社会保障制度と介護保険があり、それを前提とした事業を展開しています。しかし、中国には十分な社会保障制度がありません。

 例えば、日本の介護施設などには人員配置基準というものがあり、最低限の人員を配置しなければ、事業を継続できませんが、中国にはなく、1人の介護職員で日本の2~3倍の入居者をみているのが実情です。

 では、日系企業が中国で日本と同じ人員配置基準で運営できるかといえば、コストや採算性などを考えるとなかなかできません。

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