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世界第三位の観光地、バルセロナで「観光者排斥」運動が起きている

8/4(金) 8:50配信

HARBOR BUSINESS Online

 観光産業の規模としてスペインは世界で3番目に位置している。昨年のスペインを訪れた外国人は7500万人。今年も上半期で既に3600万人以上の外国人がスペインを訪問した。それは昨年の上半期と比べ11.6%の伸びだという。中でも、バルセロナへの訪問客が一番多く、今年上半期で既に860万人が訪問している。<参照:「Libre Mercado」>

 ところが、そのバルセロナで外人観光者を嫌悪してヴァンダリズムが最近目立つようになっている。

◆ヴァンダリズム集団「Arran」とは?

 その行動を起こしているのは「アラン(Arran)」という若者の組織だ。この組織は現在カタルーニャの独立を推進している3つの政党の一つである極左派でアンチ・キャピタリズムの「民主統一党(CUP)」に属する若者によって構成されている組織だとされている。勿論、CUPはそれを否定している。アランはカタルーニャ州をベースに、バレンシア州とバラレス諸島州にも分散しているという。その構成員はおよそ500人と推定されている。

 最近、彼らの存在がよりクローズアップされるようになったのは7月30日に覆面をした4人がバルセロナ市内で外人を対象にした市内観光バスを止めて、タイヤを刃物で刺してパンクさせ、バスのフロントガラスにグラフィティのごとくスプレーを使ってカタラン語で「観光は地区をダメにする」と書いた事件がきっかけだった。事件はそれ以上の進展はなかった。しかし、この出来事を、特に英国の主要紙「The Guardian」「Daily Mirror」「The Times」や、その他の報道メディアが取り上げたのである。<参照:「Guardian」>

 主要紙はどれも、重大なヴァンダリズムだとし、一部乗客の中にはテロ攻撃に直面したと感じて、車内にナイフかピストルを持って入って来るのではないかと恐れを感じた者もいたと言ったことを伝えた。<参照:「La Vanguardia」>

 さらに、アランは、市内で観光者相手に駐輪しているレンタル自転車のタイヤを片っ端からパンクさせるなんてこともしている。理由は、レンタル自転車をビジネスにしている企業が公共の場を占有して駐輪しているからだと主張しているそうだ。しかし、企業は公共の場を利用しているということで、その為の場所代を市役所に払っている。アランはそのようなことは無視して、パンクさせたことをツイッターにて伝え、ネット上でそのパンクさせている映像場面を載せて、それに参加するように煽っているのである。

 また、新しくホテルが建設されているポブレ・ナウ地区で観光者がホテルから出て来たところで彼らを罵ったり、市内でキーポイントになっている場所で目立つ壁をつくり、そこにグラフィティーで「Tourist go home」と落書きをするなどしている。問題はそれが一度だけの出来事では終わっていないということである。<参照:「Libertad digital」>

◆「観光地化の是非」を巡り割れる地元世論

 アラン組織の親とでも判断されているCUPは、大規模に発展させる観光業には極力反対している極左寄りの政党だ。彼らは観光業を市営化することを提案している。そこで上げる利益を共有させるという考えを持っている。その為に、ホテルと民宿先をコントールすべきだという考えなのである。<参照:「Libre Mercado」>

 アラン組織によるヴァンダリズムに憤りを感じているカタルーニャの経営者はポピュリズム政党から2015年にバルセロナの市長になったアダ・コラウにアランが犯している犯罪に断固たる態度で彼らを非難することを要望している。これまで築き上げた観光事業の成長を失う可能性があるからである。

 しかし、彼女自身は市長になる時に、現在のバルセロナが無秩序に観光都市化されたと批判して、今後は統制化されたプランを基に発展させる必要があるという考えを表明していたのだ。その具体化として、バルセロナの主要地区でのホテルの建設を禁止し、旧市街の歴史的遺産が残された地区では観光客へのサービスに繋がる営業店の開設も禁止したという前例を持つ市長である。その市長が観光事業に関係している企業経営者の要望をどこまで受け入れるか関心がもたれている。

 ヴァンダリズムが拡大してバルセロナの観光業の発展を脅かすのと併行して、カタルーニャの発展を阻む独立問題が現在注目されている。

 カタルーニャから撤退或いは本社をカタルーニャ以外の地方に移転させている企業が次第に増加しているが、8月1日には自然食品をメインに販売している企業Naturhouseが本社をバルセロナからマドリードに移すことを決定した。同社は1900店のフランチャイズを持ち、フランスやドイツにも進出しているスペインの上場企業である。

 移転の主な理由は、カタルーニャ政府の独立気運に不安を感じ、また仮に独立すればEUからの補助金も受けられなくなることで、それはカタルーニャの発展を阻むものになるからであるとしている。そして創業者は、カタルーニャもスペインの一部であるということを否定できない考えの持ち主である。<参照:「El Confidencial」>

<文/白石和幸>

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。

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