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大衆薬のロート製薬が「再生医療」に挑むワケ

8/4(金) 6:00配信

東洋経済オンライン

 「セルフメディケーションだけでなく、医療分野でも社会に貢献できる会社にしていく」とロート製薬の山田邦雄会長兼CEOの言葉に力がこもる。ロート製薬は7月27日、再生医療で臨床試験を開始すると発表した。

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 ロート製薬は、一般用目薬で世界首位。外皮薬「メンソレータム」や内服薬「パンシロン」なども有名だ。最近ではスキンケア化粧品「肌ラボ」が事業の柱に成長している。

 そんな同社が医療用医薬品に取り組むのはこれが初めて。しかも一気に再生医療分野に挑戦する。その狙いは何なのか。

■患者のQOLが低い肝硬変に照準

 今回治験を開始するのは、肝硬変治療用の再生医療製品だ。肝臓はもともと再生能力の高い臓器だが、肝硬変になると細胞が硬くなって機能を果たさなくなる(これを線維化という)だけでなく、健康な細胞を締め付けて働きを阻害し再生能力も低下していく。

 炎症が起きて一度硬くなった細胞は、そのままでは元に戻らない。慢性肝炎から肝硬変に徐々に進んでいくのを止める手だてはなかった。肝臓の機能が落ちるので腹水がたまったり、代謝されないアンモニアが体を回り、脳に達して意識障害を起こしたりするなど、患者のQOL(生活の質)が非常に低く、いずれ死に至るケースがある。

 国内の肝硬変患者は約40万人、うち末期肝硬変患者は約4万人。しかし唯一の治療である肝移植はたいへんに高額でドナー数にも限りがあるため、受けられる患者はたった1%にすぎない。ロート製薬が治験を始める新薬は、残りの99%の患者に対して、新たな治療法を提示することになる。

 治験を始める新薬は、他人の脂肪から取り出した脂肪由来の幹細胞を培養、精製して作り出す。これを患者の静脈に点滴すると、硬くなった細胞を溶かして肝臓が自ら再生しようとする能力を高める。

■美容整形で廃棄される余剰細胞を活用

 この脂肪由来の幹細胞は、さまざまな再生医療への応用が期待される間葉系幹細胞という細胞に属する。これまで間葉系幹細胞は、主として骨髄系が使われており、原料を海外からの輸入に頼っていた。しかし脂肪由来の幹細胞ならば、国内での調達が容易だ。脂肪由来の幹細胞は、美容整形などで廃棄される余剰細胞から採ることができるからだ。

 これならば、日本人の間葉系幹細胞を使った製剤として初めて製品化を目指すことができる。国内で原料を調達できる分だけ早期の治療が可能になる。また、他人の細胞を使うので免疫拒絶が心配されるが、脂肪由来の幹細胞では免疫拒絶が抑制されることもわかっており、免疫抑制剤を使わずに済むメリットもある。

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