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漢方薬にも、抗がん剤にも…薬用成分は植物の「生存戦略」だった!

8/4(金) 6:30配信

ダ・ヴィンチニュース

 持病の都合で、医者から漢方薬を処方されています。セリやアカネの仲間なんかを煎じた粉薬なんですが…これがもう、マズいのなんの。罰ゲームかと思うような匂いと味に、日々苦戦しています。でもこの薬、私にはそれなりに合うらしく、つらい症状が嘘のように収まってくれるんですよ。感謝の念を抱きながらも、最近は、「生の姿を見たこともない植物が、自分にとってどうしてこんなに有益なのか」という疑問も持つようにもなりました。皆さんも、そんなことを考えた経験はありませんか?

 『植物はなぜ薬を作るのか (文春新書) 』(斉藤和季/文藝春秋)は、その名の通り、植物はなぜ、そしてどのようにして、人間にとって有用な成分を作り出すようになったのかという疑問を、深く掘り下げた書籍です。著者である斉藤和季氏は、薬学のなかでも、生薬や植物から得られる薬の成分について、長年研究を重ねてきた専門科。学生時代、植物などが酵素を使っておこなっている反応をフラスコの中で人工的に再現しようとしても、なかなかうまくいかなかったという経験から、「生物はいかに上手に複雑な化合物を作るのか? なぜ、生物はこのように多様な構造の化合物を作るのか?」という、根源的な問題に取り憑かれてしまったのだそうです。

 私たちの生活を支える医薬品や日用品には、植物由来の成分が数多く含まれています。例えば、紫外線や乾燥を防ぐ力があるとして化粧品に含まれているのは、植物色素のフラボノイド。抗がん剤のビンカアルカロイドは、色鮮やかな花を咲かせるニチニチソウから。解熱鎮痛薬として有名なアスピリンも、その元となったのはヤナギの木の皮に含まれる成分だといわれています。ヤナギの木が鎮痛成分を含んでいることは日本でも古くから知られていたようで、「頭痛封じの寺」とされる京都の三十三間堂は、頭痛に悩まされた後白河法皇が、棟木にヤナギを用いて建てさせたそうですよ。

 植物成分には、すべての植物に(あるいは動物にも)共通して存在する「一次代謝産物」と、特定の植物種にしか存在しない「二次(特異的)代謝産物」があるそうですが、薬などに用いられている植物成分の多くは、後者にあたります。こうした物質は、生存戦略として「動かない」ことを選択した植物が、自らを襲うストレスから身を守るために発達させてきた独自の防御策でした。病原となる生物を遠ざけるため。自らの成長を阻害する、他の植物を弱らせるため。そして、捕食者に襲われないため。自分の体の一部をかじられた時、捕食動物に苦みや辛みといった刺激を与えることで、それ以上の食害を被らないようにしながら生き残ってきた植物は少なくありません。

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