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「ウイスキーはストレートで飲む」は正しい? ビジネスマンのための一目おかれる酒知識

8/4(金) 15:50配信

週刊SPA!

~ビジネスマンのための一目おかれる酒知識 第7回ウイスキー編その1~

 ビジネスマンであれば、酒好きでなくても接待や会食で酒に親しむ機会は多いです。そして多くの人は「それなりに酒に詳しい」と思っているはず。しかし、生半可な知識、思い込みや勘違いは危険。飲み会の席で得意げに披露した知識が間違っていたら、評価はガタ落ちです。酒をビジネスマンのたしなみとして正しく楽しむために「なんとなく知っているけどモヤモヤしていた」疑問を、世界中の酒を飲み歩いた「酔っぱライター」江口まゆみがわかりやすく解説します。

◆ウイスキーはストレートで飲むべきか?

 ススキノにこんなバーがあると聞きました。

 そこには店主が世界中から集めてきた、珍しいヴィンテージものやボトラーズもののウイスキーがコレクションしてあり、チューリップ型のテイスティンググラスにうっすらと注がれたストレートのウイスキーを、舐めるように味わうのだそうです。

 舐めるくらいの量でも1杯平均5000円くらいしますが、ここがぼったくりバーでない証拠に、医師や弁護士や社長といったセレブな紳士で、いつも満員状態だそうです。そして「やはりラフロイグの赤ラベルはいいね」などという会話があちこちで交わされているというのです(赤ラベルとは、1970年代に製造され、ラベルに赤く「15」と書かれているあのボトルです)。

 この店のように、舐めるようにストレートを飲むのが、本物のウイスキー通なのでしょうか?

 実際、スコットランドで何も言わずにウイスキーを注文すると、ストレートで出てくるそうです。そして水も出てくるのですが、それはウイスキーを加水するための水で、チェイサーではないそうです。イギリス人にはチェイサーという言葉はなく、これはアメリカから入ってきた言葉、用途ではないかといわれています。

 ウイスキーマニアの主催するテイスティング会へ行ったことがありますが、ここでも飲み方はストレート。チェイサーの水はあるのですが、40度以上のアルコール度数に喉が焼けてきて、だんだん飲み疲れてきます。これはウイスキーの試飲会でもよくあることで、「なんでオンザロックか水割りで飲ませないんだ~!」と発狂しそうになります。

 こんなとき私がよくやるのは、チェイサーの水とウイスキーを1対1で割ること。これをトワイスアップといい、由緒正しいウイスキーの飲み方です。ウイスキーの仕込み水や産地の水で割ると、より美味しいといわれています。

 一日に数百種類のテイスティングをこなすウイスキーのブレンダーは、トワイスアップにして原酒のテイスティングをするそうです。そのほうが、ウイスキーの香りや味の細部まで確認できるからです。

 試しに同じウイスキーを、ストレートとトワイスアップで飲み比べてみてください。ストレートではわからなかったそのウイスキーの個性が、トワイスアップにすると花開くように感じられることでしょう。

 では、オンザロックはどうでしょうか。私は氷がだんだん溶けて、ウイスキーの味が変化していく過程が楽しいので、オンザロックもよく飲みます。たいていの場合、時間の経過とともにウイスキーの角が取れ、甘くなっていくような感じがします。そして飲み頃の濃さになったら、薄まる前に飲んでしまいます。そんなふうに、ウイスキーとの対話を楽しめるのがオンザロックだと思っています。

 日本バーテンダー協会の会長になられた岸久さんは、著書の中でページをさいて氷の重要さについて語っています。

 バーではオンザロックに入っている丸い氷や、ジンフィズなどに入れる四角い氷などのほかに、シェーカーに入れる氷、ステアに使う氷、チェイサーに入れる氷など、大小様々な氷が必要で、氷屋さんから運び込まれた氷の塊からそれらを切り出すのに、4~5時間もかけるというのです。

 仕入れる氷にも目を光らせていて、スが入ったりスジが見える部分ではなく、ピシッときれいにクリスタル状に固まった、氷の芯の部分を使うようにしているそうです。ここを岸さんは、寿司ネタのように「氷のトロ」と呼んでいます。

 オンザロックに使う氷は、多面体に切り出した「ブリリアント氷」に加えて、丸い氷や、ザックリ切り出した四角い氷などを、グラスや飲み物の種類に合わせて使い分けているといいます。バーへ行ったら、ぜひオンザロックの氷にも注目していただきたいですね。

 最近はやりのハイボールについては、さかのぼると1950年代にトリスバーなどで飲まれた「トリハイ」によって広まったようです。ハイボールは外国にもあり、諸説ありますが、開拓時代のアメリカで生まれた飲み方だという説が有力です。いずれにせよ、現在のハイボールブームは、第2次ブームといってもいいでしょう。

 最近はどこの酒場へ行ってもハイボールがあるので、ビールが飲めないときにとても便利です。ビールというのは不思議な飲み物で、体調が悪いときはまったく飲めませんし、美味しくありません。かえってウイスキーやスピリッツなどの強い酒のほうが飲めます。そういう意味では、ビールは体調のバロメーターといえるかもしれません。

 最後に水割りについてお話しましょう。今は海外でもスコッチ&ウオーターとか、ウイスキー&ウオーターといって飲む人もいますが、もともとは日本独自の文化だと思います。日本酒のアルコール度数が16度前後だったことから、日本人の味覚には水で薄めたウイスキーが合っていたのです。

 水割り文化がさらに広まったのは、サントリーが1970年代に行った「二本箸作戦」の効果です。これは寿司屋や割烹、居酒屋から蕎麦屋にいたるまで、二本の箸で食事をする和食店にもウイスキーを置いてもらおうという、一大キャンペーンでした。

 このとき「ウイスキーの水割りは和食に合いますよ」とさかんに営業したことが功を奏して、「ウイスキーは和食には合わない」という既成観念はなくなりました。ビーフジャーキーかナッツくらいしかウイスキーのつまみにしない外国人は、目を丸くして驚くでしょう。

 ちなみに私はサントリーのウイスキーは、ストレートで飲んでも、薄い水割りにしても、味が崩れないよう設計されているとにらんでいます。これはストレートだけに照準を合わせるより難しい技術で、日本の誇れる職人芸ではないでしょうか。

【江口まゆみ】

神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学卒業。酒紀行家。1995年より「酔っぱライター」として世界中の知られざる地酒を飲み歩き、日本国内でも日本酒・焼酎・ビール・ワイン・ウイスキーの現場を100軒以上訪ねる。酒に関する著書多数。SSI認定利き酒師、JCBA認定ビアテイスター

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最終更新:8/4(金) 15:50
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