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ポドルスキはドイツのアイデンティティだった

8/5(土) 11:30配信

footballista

 Jリーグデビューを飾った先週末の大宮戦でいきなり2ゴール。強烈なインパクトを残し期待が膨らむばかりのルーカス・ポドルスキだが、母国ドイツでの彼は日本人が思っている以上に人気を集め、リスペクトされる存在であることをご存知だろうか。


文 ベンヤミン・クールホフ(『エルフ・フロインデ』誌)
翻訳 鈴木達朗


 ドルトムントを舞台に行われた自身の代表引退試合の69分。ルーカス・ポドルスキが左足にボールを置いた瞬間、ドイツ中のサッカーファンが息を呑んだ。13年間でドイツ代表史上3位となる48の得点を積み上げてきた男は、この最後の一戦でも観衆の夢を叶えてみせた。代表通算49ゴール目は、彼らしい強烈な一撃。脚本次第で安っぽいドラマにも、あるいはハリウッド映画にもなりそうな、何ともでき過ぎなフィナーレだった。

 ポドルスキの代表引退は、主力選手の一人が代表から身を引くというだけでなく、サッカー狂ばかりのドイツ人にとって心の拠りどころ、象徴がいなくなることを意味している。国中が熱狂し、大騒ぎした2006年のドイツワールドカップでプレーした最後の現役代表選手でもあったポドルスキの飾り気がなく、馬鹿正直で、不器用ながらも一本気がある人柄は、ドイツのサッカーファンが愛するキャラクターにぴったりとハマっているのだ。


最先端のスタイルには馴染まなかったけれど


 ピッチ上での彼について率直に評価すれば、ポドルスキは進化し続け最先端を行くドイツ代表のサッカースタイルに馴染むことはなかった。ただそれは、彼が決して自分の信念を曲げず、プレーを変えなかったからだ。さらに、いまだケルンのアイドルであり続けているように、多くのタイトルを勝ち獲り、新記録を打ち立て、億万長者になろうとも、彼は決して自分が育った場所を忘れなかった。これらもまた、彼がファンを惹きつける理由である。

 移民の子として2歳でドイツにやって来て、両親が住んでいたワンルームのアパートのリビングでボールを蹴り始めた少年がワールドカップ優勝を果たす――ポドルスキの歩みは、移民が多いこの国でサッカー好きなら誰もが見る夢そのもの。だからこそ、多くのファンがポドルスキの姿に自分の人生を重ね合わせてきた。彼のいたこの13年間のドイツ代表には挫折と成功、そして熱狂のすべてが詰まっていた。

 だが、それも過去のものとなる。彼の引退はドイツ代表にとっても、ドイツのすべてのサッカーファンにとっても大きな一つの区切りとなった。

 日本のサッカーファンには、ポドルスキの到来を楽しみに待っていてほしい。これまでのキャリアが物語るように、ポドルスキは100%心から望まない限り物事を実行に移さない男であり、また日本の文化を受け入れるには十分なほどに人間としても成熟している。実は、彼は子どもたちが通うドイツ人学校を探すために、移籍発表時点ですでに日本を訪れていた。

 ポドルスキは、ドイツ代表でそうしてきたように、日本でも自身の足跡を残すはずだ。彼は日本でのプレーを堪能するだろう。日本のサッカーファンとポドルスキとの間に最高の関係が結ばれることを祈ってやまないし、ドイツのアイドルが日本でどう受け入れられるのか、興味深く見守りたい。


■著者プロフィール
ベンヤミン・クールホフ

1981年生まれ。2009年からドイツ最大の月刊サッカー誌『エルフ・フロインデ―― サッカー文化のための雑誌』の編集部に所属し、現在はデジタル部門のマネージャーを務める。編集部では唯一のシャルカー(シャルケファン)である。

最終更新:8/5(土) 11:30
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