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【総体】流経大柏の名将、本田裕一郎がぽつりとつぶやいた「日本一はまだ6回。情けないですよ」

8/5(土) 16:07配信

SOCCER DIGEST Web

「2戦目が終わったところかな。もしかすると行けるかもしれないと」。

 予定の時間よりずいぶん早く着いてしまった。習志野高校の練習グランドでは、玉田圭司、吉野智行、そして藤島崇之らがボール回しをしている。週刊サッカーダイジェスト恒例の連載企画、「高校サッカークルージング」の訪問取材だ。

【総体決勝PHOTO】流経大柏が9年ぶり2度目の優勝! 2年生MF熊澤が決勝弾


 
 すると、どこからともなく、かすかにロックミュージックが聞こえてくる。ジャガー・クーペから颯爽と現われた人物は、さながら刑事ドラマに出てくる主人公のようだった。監督? かっこ良すぎる。
 
「ごめんごめん、待たせたかな。さあ、はじめようか」
 
 本田裕一郎監督だ。いまから19年前のことである。
 
 金曜日に幕を閉じた全国高校総体(インターハイ)。その準決勝で前橋育英を破り、流経大柏はファイナル進出を決めた。だが県内の宿敵、市立船橋が日大藤沢にPK戦の末敗れ去ったという報せが、本田監督の耳に届く。名将は報道陣にこう語りかけた。
 
「いつもは、うちが負けさえしなければ、決勝で千葉対決になっていた。なのに今年は……、ねえ。個人的には残念ですね。楽しみにしていたので、それは残念です」
 
 市原緑、習志野、そして流経大柏と千葉県内で強豪を率いてきた指揮官にとって、全国大会決勝での“千葉対決”にはやはり、格別な想いがあるのだろう。昨年決勝の千葉対決は惜しくも0-1で敗れたが、自身は体調不良のため帯同せず、病院のベッドでテレビ観戦していた。
 
 迎えたインターハイ決勝、日大藤沢戦。流経大柏は相手の堅守とタフネスに苦しみながらも、後半31分の土壇場で途中出場のMF熊澤和希が決勝点を挙げ、見事に勝利を飾った。9年ぶりの優勝だ。後半、矢継ぎ早に投入した攻撃のカードが奏功したわけだが、本田監督は驚いたことに「僕の采配ミスです」と切り出し、説明を加えた。
 
「失点ゼロで行けと、しつこく言いすぎた。生徒たちってみんなそうなんだけど、ひとつの言葉が大きく響くんだね。もう少し気楽に受け止めてほしかったんだけど、しっかりマークしないと次出れないんじゃないかと思ったのかもしれない。がちがちに行ってしまった。後半は使い方が難しい選手を送り込みましたよ。選手の中には、我慢させて出すほうがいいのがいれば、武器がないから最初から出してやらないといけないのもいて、いろいろです。今年の選手の使い方に、わたしが慣れてきたというのもありましたね」
 
 優勝を意識し出した、これなら行けると手応えを感じたのはどこからだったのか。
 
「2戦目(3回戦)が終わったところで、行けるかなというのがあった。もちろん生徒には言いませんけど、1試合ごとにどんどん良くなっていたわけです。しかも(失点が)ゼロ、ゼロと来た。これまで長くやってきた自分の感覚で、もしかすると行けるかもしれないと感じました」
 
 タイムアップの瞬間、両拳を突き上げてガッツポーズ。そしてユアテックスタジアムのバックスタンドで大応援団に感謝を示すと、選手たちに担ぎ上げられ、ゆっくりと4回、宙を舞った。

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最終更新:8/5(土) 18:26
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