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プロアマ協定がない分、より熾烈?大学野球部が狙う高校生の条件は。

8/5(土) 11:31配信

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 7月の高校野球は、言うまでもなく8月の甲子園大会の各都道府県予選だ。

 多い日には、全国で100試合以上の予選が行なわれ、試合の数と同じだけのチームが姿を消す。

 ネット裏には、熱心なファンに混じってプロ野球のスカウトたちが、その素質に惚れ込んでここまで1年、2年と追いかけてきた選手たちの成長ぷりの、最後の確認にやって来ている。

 グラウンドでの戦いも熱いが、熱戦を見守るスタンドにも、もう一つの“熱い闘い”が人知れず展開されているのだ。

予選をネット裏ではない場所で見つめる大学の監督。

 その予選の球場で、こんなことがあった。

 最初の試合が終わって、次の試合の“背番号8”がお目当ての選手だった。

 試合が始まると、外野手のスローイングを見られる機会が少ない。キャッチボールの初球をどのぐらい丁寧に投げ始めるのか。前の足にどれぐらい乗っかった遠投ができるのか。近くで見たくてスタンドを外野の方へ歩いていくと、スタンドの上の方から、声をかけられた。

 見上げると、サングラスに帽子、首にタオルを巻いて、こっちを見下ろしてニコニコ笑っている。

 人相はさだかではなくても“匂い”でわかる。ある大学の、監督である。

 なんでそんなところで……? と訊くと、「皆さんのおじゃまをしちゃいけないから」と、ネット裏を指差している。狙っている選手が、プロ野球スカウトたちと重なっているのだ。

「負けてほしい……大きな声じゃ言えませんけど」

 内野スタンドも、もうほとんど外野に近い場所だ。そんな所で見にくくないのですか……? と訊くと、こんな話をしてくださった。

 「ウチはもう『獲る! 』って決めてますから。実力も判断がついてます。試合も練習も見に行って、ウチのグラウンドにも来てもらって、練習参加もしてもらって、学生たちとの実力比較も済んでます。直接いろんな話もして性格もつかめてるつもりですよ。今日は、元気なのを確かめに来ただけ。私にとっては、今日の試合でできれば打ってほしくない。ほんとの本音をいえば、負けてほしい……大きな声じゃ言えませんけどね」

 すぐ横で保護者会の父兄たちが話していたので、最後のところは、明確に聞こえたわけではなかったが。

 「私たちの勝負は、試合が終わった後ですから……」

 そんなことを言い添えてもくれた。

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最終更新:8/5(土) 11:31
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