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【事件簿】史上最悪の詐欺師、270人を海の果てで見殺し、「嘘の国」を売り逃亡

8/6(日) 8:30配信

NIKKEI STYLE

 古地図の世界には、現代の私たちから見ると滑稽に思うような記述があふれている。「大西洋には、7つの都市を持つ長方形の大きな島がある」「カリフォルニアは海に囲まれた島であり、女性ばかりの楽園だ」「南米のパタゴニアには、3メートル近い巨人が住んでいる」――。神話や伝承として語り継がれていたものもあれば、探検家の間違いや誤解から生まれたものもある。さらには、名誉のため、あるいは金銭を集めるための完全な「でっち上げ」すらある。

 ナショナル ジオグラフィックの書籍『世界をまどわせた地図』は、古地図に描かれた「幻の世界」を集め、その由来や真実を解説した本だ。ここでは、悪意をもって意図的につくられた嘘の世界「ポヤイス国」の物語を紹介しよう。

世界一の大ぼらふき、グレガー・マグレガー

 世の中には厚顔無恥な嘘つきも、鉄面皮の詐欺師もいるが、グレガー・マグレガーほど壮大な大風呂敷を広げたものはいないにちがいない。

 1822年ごろのヨーロッパは不景気の中にあり、コロンビアやチリ、ペルーなどの南米の国々はチャンスを期待する投資家たちの人気を得つつあった。それらの国の国債は利回りがよく、見逃せないもうけ話だったのだ。そんな時代に、モスキート・コースト国のジョージ・フレデリック・アウグストゥス王から授けられたという、まばゆいばかりのメダルと勲章を下げた1人のカリスマがロンドンに姿を現した。彼は「ポヤイス国の領主」を名乗り、土地を譲渡するという王から与えられた書面をちらつかせ、手放しの歓迎を受けた。

 彼がえたいの知れない男であったなら、もっと警戒されていたかもしれない。しかし、グレガー・マグレガーは名の知れた人物だった。スコットランドで高名なマグレガー一族の出で、1811年のアルブエラの戦いで勇敢に戦った第57歩兵連隊に所属し、国外の激しい戦闘に派遣されて何度も死線をくぐり抜けてきたことで知られていたのだ。彼はいわば英雄だった。

 そんな人物が、魅力的なポヤイス国のジョゼファ王女を連れて冒険の旅からロンドンに戻り、できたばかりの自分の国に投資してくれる人間を探しているというのだ。しかも、彼の新たな母国には、天然資源が豊富な800万エーカーほどの美しくよく肥えた土地があり、作物を育てれば豊作まちがいなし、海では魚も食用になるカメも豊富にとれる。町から少し離れれば狩りの獲物もどっさりいる。また、川は「純金の粒」でいっぱいだというのだ。

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最終更新:8/6(日) 11:06
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